第4話 レイ②
「今度こそ倒してやるわ!『ゴッドブロー』!」
アクアは拳を振り上げて叫んだ。その拳には女神と呼ぶにふさわしい神聖を纏い、目の前の巨大なカエルに激突した。だが、拳の威力はその大きなカエルの腹に吸収され、カエルはアクアを飲み込もうとしていた。
「ぎゃあああああ!だずげでガズマざーん!」
アクアはカエルに背を向け、カズマに助けを求めていた。
「あのバカッ!学習してないのか!早く逃げろ!」
カズマはアクアの下へ走り出し、レイは詠唱を終え、魔法を発動した。
「『アクアロック』、『ライトニング』!」
カエルはアクアロックによって一時的に動きを落とされ、ライトニングによって討伐された。
カズマは予想以上のレイの活躍に、嬉しく思いつつも、あまりにもレイが活躍し過ぎて不安になっていた。
(これ、俺達要らなくね?)
むしろ足を引っ張っている気がする(特にアクア)。
そもそも、なぜこうなったか。それは数分前に遡る──────。
───────
カズマはレイを仲間に入れることに決め、アクア、めぐみん、ダクネスに顔合わせをしていた。だが、意外なことに全員がパーティーに入れることを拒否したのだ。
アクアは、「私の取り分が減るじゃない!もしどうしてもパーティーに入れたいんだったら、アンタの取り分を減らしなさいよ!」と言って拒否した。ふざけんじゃねえお前が一番役に立って無いだろ。
めぐみんは「新しい魔法使いがパーティーに入ったら、私要らない子じゃないですか!」と言っていた。そうでなくとも普段の戦闘で一発しか魔法が撃てなく、その後誰かがめぐみんをおぶらなくてはいけなくなるから、誰かもう一人が戦闘不能になる魔法使いなんて使う魔法が爆裂魔法でも普通要らないけどな。
ダクネスは「パーティーメンバーが増えればクエストが楽になってしまうだろう!私は冒険を楽しみたいのだ!」と言っていた。お前は冒険云々よりもうちょっとその性格をどうにかするべきだけどな。
これらにレイは直ぐに反応して、アクアには、「僕の取り分は要らないよ。僕の目的は魔王討伐だからね。それと、めぐみんの爆裂魔法の噂は聞いてるよ。僕は一度にあんなすさまじい火力は出せないから、正直羨ましいよ。火力が必要な時は頼んだよ。あと、このパーティーの
アクアは、「それならいいわ」と上から目線でOKを出し、めぐみんは「そこまで言うなら仕方ないですね。」と照れながら言い、ダクネスは「こ、攻撃を受け止めるのがクルセイダーのつとめ。それが例え背後からの味方の攻撃であっても、ど、同様だ!」と息をハァハァ荒げながら言っていた。いや、同様じゃねえよ。
こうしてレイはパーティーに入ることになった。
「いやー、悪いな、レイ。パーティーリーダーである俺が説得するべきなのに、代わりにやってもらっちゃって。分け前はきちんと渡すよ。」
「いや、いいよ。お金は蓄えがあるから。大体、説得しなきゃいけない状況になったのは俺のせいだし、気にしないで。僕の目的は魔王を倒す事だし。」
「そうか ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。じゃあレイが無事パーティーに入れたことだし、クエストでも受けるか。」
そう言って俺はジャイアントトードの討伐依頼を受けた。
街の外に出る前に、レイに聞くべきことがあったことを思い出した。。
「そういえば、レイは前衛だったか?」
「ん?あぁ。いや、魔法使い寄りの魔法戦士だから、前衛も後衛も出来るよ。」
「そうか ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。なら、基本的に自由に行動してくれ。俺はお前の能力を知らないから、指示のしようがないからな。」
「OK、わかったよ。」
俺達はそんなやり取りをしてから街の外へ向かった。
草原に着き、辺りを見回した。どうやらもうすでに他のパーティーが先に来ていたのか、モンスターが少ない。
「ちょうど良いな。まずは一匹引き付けて、連携がどれだけ出来るか確認しよう。」
俺が引き寄せ、ダクネスが注意を引き、アクアが補助、めぐみんはいつでも爆裂魔法が撃てるように待機、レイは臨機応変に自由行動だ。
まずは一匹引き付けて ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ あっ。
「すまん皆!二匹行った!ダクネス、デコイ頼む!」
「わかった!『デコイ』!」
ジャイアントトードが二匹ダクネスへ向かう。だが、ダクネスが一匹を引き付けるとして、もう一匹はどうする?アクアを囮にするか?よし、アクアを囮にしよう。
そんなことを考えていると、やっとレイが今の状況がまずいと理解したみたいで、魔法を詠唱した。
「雷よ、轟き、敵を貫け!『ライトニング』!」
その魔法に、ジャイアントトードの内一匹が倒れた。だがレイは、それでは終わらず、腰に下げていたナイフを走りながら抜き、ジャイアントトードに接近した。
ジャイアントトードまでもう少しといった所で、レイはまた詠唱をした。
「火よ、我が
レイの簡素なナイフはジャイアントトードを切り裂き、絶命させた。
「「「 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。」」」
カズマとアクアとめぐみんの三人は圧倒的なレイの殲滅速度に驚き、言葉も出なかった。
ちなみにダクネスはライトニングに当たり損ねて悔しがっていた。
「ん?どしたの皆。ああ、なんで初撃にライトニングを使ったのか不思議に思っているのか。僕は風魔法が得意なんだけど、範囲が広くて巻き込んでしまいそうだったから、ジャイアントトードの弱点属性である雷の魔法を使ったんだよ。あと接近戦に持ち込んだのは魔力消費を抑えるためで「いやいや、そうじゃなくて、レイの戦闘力に驚いてるんだろ。」
ていうかレイ話すの速いな。
「えっ、そう?いやー、照れるなぁ。それほどでもあるよー。よし、ばんばんカエル倒すよ!」
「おう、よろしく頼んだぞ。」
カズマはまるでレイが自分達のクエストをこなすのがさも当然の様に振る舞い、堂々とレイにクエストをなすり付けた。
「ちょっと、カズマはそれで良いんですか?期待のルーキーの登場に嫉妬心を抱くとか無いんですか?ちょっとは良いところを見せようとか思わないんですか?」
「ない。」
めぐみんの問いかけにカズマは淡々と答えた。
「そもそもこれはレイの実力を計るためにやってるんだ。俺達が一緒じゃ実力が計りにくいだろ?」
「違いますよ!最初はパーティーとの連携が目的だったはずです。私の知力を舐めないで下さい!」
くそっ、いつもは頭のおかしい爆裂狂のくせに。
「確かにそうだったな。でも、あいつ単体の能力を知ってないと、作戦に組み込む際に支障をきたすかもしれないだろ?当初の目的は確かに連携をとれるかの確認だったが、本人もやる気みたいだし、一人で充分モンスターと戦えるから問題無いだろ」
「むむむ、問題有るような気がするのですが ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。」
俺達がそんな話をしていると、レイが帰ってきた。帰るのが遅くなった理由は、カエル探しに時間がかかったのと、MPを使わない様にしてたかららしい。遅くないけどな。
「そういや、レイは怪我とかしてないか?してたらアクアに治してもらえ。」
「大丈夫、怪我はしてないよ。ジャイアントトードごときに遅れをとるわけないじゃないか。大体、僕、ヒールも使えるしね。」
「そうか、なら安心して大丈夫だな⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ん?ちょっとまて、今ヒール使えるって言ったか?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
「お前神官じゃないだろ?なんで使えるんだよ。」
「ああ、それは僕の師匠がつくった魔法なんだよ。魔法職でもヒールが使える優れものだよ。性能は劣るけどね。」
マジかよ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 前衛と後衛どっちも出来る上に回復まで出来るとか万能すぎるだろ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。ん?てことはアクア要らなくね?
アクアをちらっと見ると、アクアのくせにこちらの思惑を察知したのか、わなわなと震えていた。
「わ、私だって前衛くらい出来るわよ!」
そうすると、何を思ったのかアクアはジャイアントトードの方へ駆けて行った。
──────────
こうして冒頭へ繋がった。
ジャイアントトードの死体はレイがアイテムボックスに入れてくれたから、スムーズに事は運んだ。アクアのせいで余った1匹はレイのアイテムボックスに眠っている。レイが料理で使うらしい。
そうしてギルドに着き、割と余裕だったのでもう一度ジャイアントトードの依頼を受けようとすると、レイが話かけて来た。
「ねぇねぇカズマ、次はこの依頼にしようよ。」
「ん?どれどれ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 、えーっと、『近くの洞窟に住み着いた亜竜を倒せ』って出来るかこんなもん!」
「えー?出来ると思うけどなぁ。」
「いやいや、めぐみんの爆裂魔法は洞窟の中じゃ使えないし、ダクネスだってどれくらい亜竜の攻撃を耐えられるかわからないし、そもそも俺はワンパンで死ぬし、アクアは · · · ⋅ ⋅ · 。とにかく倒せるわけがない!」
「そっかぁ、良いと思ったんだけどなあ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。わかった、僕だけで行って来るね。」
「おいおい、亜竜なんて倒せるわけないだろ。」
「僕、倒したことあるよ。」
「 ⋅ ⋅ ⋅ マジで?」
「うん。」
「一体どうやったんだ?」
「『フライ』で空中を高速移動しながら魔法を叩き込めば倒せるよ。まあ、普通の魔法使いだったら、『フライ』で亜竜を上回る速度を出せないし、出してもすぐにMP切れちゃうけどね。」
「成る程、他の魔法使いには真似出来ない戦法だな。おっと悪い、レイは魔法戦士だったな。」
「まぁ、うん。そうだね ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。」
ん?何かレイの様子がおかしいな。まるで何か言いたくないことがあって口ごもっているような ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。
その時、俺は全身を貫くような衝撃を受けた。
俺のこれまでの様々な経験によって培われた危機感知能力が、全力で警報を発している。
もしかして ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 。
「な、なあレイ。ちょっと確認したいことがあるんだけど。」
声が震えて、所々声が裏返ってしまった。だがここで聞かなければ後々後悔するだろう。
「レイの就いてる
「 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ 、魔法使い寄りの魔法戦士だよ。」
レイも少し声が上ずっている
「それはクラス名じゃないだろ。ステータスカードに記入されているクラス名は何だ?」
レイは一瞬悩む様なそぶりを見せると、覚悟を決め、レイはこう言った。
「 · · · 『アークウィザード』。」
「 · · · · · · 。」
────────
( ゚□゚) 駄女神に爆裂娘、ドMクルセイダーという異色のメンバーに自称魔法戦士を加えたトンデモパーティー。果たしてカズマは生き残れるか!
次回、『激怒』。作者受験のため更新予定は未定だ!
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