第4話

第四章

 打ち上げ花火が上がっている。その日は志歩と二人で行った江戸崎の花火大会であった。

 江戸崎の夜祭の花火が上がっていた。

 まだ宵の口なので、音を聞いて顔をあげると、もう光は消えていた。静かな夜の帳。花火は二寸、三寸、五寸、八寸、尺とある。まだそのうちの三寸前後の単純な菊花文ばかりであった。

 私は小野川の水門のところまで引き返して夜に入るまでしばらく眺めていた。

 私と志歩は水門のところまで引き返し、五寸玉の花火を見上げた。煙が去って星が消える。尺玉の打ち上げ時間である。尺花火は、石油タンクの爆発のような音を流し、別の国の星を見るような気がした。

 東の空がよく見える高台で志歩と私は花火を見て帰途につく。

 今では、マンションの三階で土浦の花火を見る。部屋で一人で一つの離れがたい自分自身の想いがあった。本当は外に在るものである。しかし、なんせ己の商売と家族の別離を迎えねばならなかったのかは、私の逃避癖が生み出したものだ。

 さて、私の庭に棲んでいる鮒というべきか金魚というべきかの生き物は、天水桶に水があったら生きているだろうか。私は猫や犬が嫌いである。

 他の家族達は好んだ動物を、私だけが嫌いであった。四人の家族は動物が好きだった。猫が六匹もいた年もあった。

 私は庭に埋めた石地蔵と遊んでいるのである。

 登っても、登っても青い山

 磯山川すぎ行くとも我は我の道を行く。


 裏を見せ 表を見せて散る落葉

 私の部屋には何もない。先週まで咲いていた赤いおしろい花は、今はなくなった。

 窓の外を見るとザクロを盗んで逃げ行く少年が一人駆け出していた。

 私は、いつも一人であった

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悲しく淋しいだけ @kounosu01111

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