予見の覇王と覚醒者

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プロローグ

俺は、昔、戦争を引き起こした。

たった一人の少年が、だ。

そして今────



大陸が、真っ二つに割れた。

真一文字の斬撃を描いて。

大地が爆ぜ、海が大飛沫を上げる。

当然、その斬撃の軌道上にいた人間は全滅。

斬撃とはいっても、それがもたらした衝撃波は大陸のおよそ四分の一を吹き飛ばした。


俺は、その未来を“予見”した。


「ただごとじゃねぇな、これは……」


原因。

それは、目の前の巫女装束の女のようだった。


「──やめろ。その剣を振り下ろすな」


すると、巫女装束の女はきょとんと首をかしげて、言った。


「どうして?」


言っておくと、巫女装束の女の近くには誰も敵はいない。俺が敵とみなされているかは別として、女の持っている剣を振り下ろす理由はないはずだ。


「──人が死ぬ」


「人は死んだって、⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎じゃない」


……は?

人を、生み出せる?

俺は、この女の意図がわからなかった。


「そういう問題じゃないだろう」


すると女は俺に気分を害されたのだろう、あろうことかその剣先を俺に向けてきた。


「なら、私を止めてみる?力ずくで」


「ッ……」


俺は、この女の凄まじさを知っている。

たとえ俺が『覚醒者』だとしても、この女に敵うかどうかは分からない。

いや、十中八九俺が負けるだろう。

女は俺の無言が答えだと思ったのか、こう続けた。


「何の能力ちからをもってして未来を視たのかわかんないけど、邪魔だけはしないで」


──なんということだ。

俺は、自らの非力さを呪った。


直後、女の剣が振り下ろされる。


──いや、女なんかじゃない。

こいつは──────








黄泉津大神、イザナミ。

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