第18話 勇者御一行が来る前に

 ヒヒィーン!


「この馬なんてどうですかね。かなり馬力もあって魔物もあまり怖がりません。それにこの子は人懐っこいのでお客様にもすぐに懐くと思いますよ」


俺達は今日、近いうちに街を出る準備として、足を手に入れに来ている。


ヒヒィーン!


「こっちの馬は足が速いんですけど、馬車などを引くのには適してないですね」


ヒヒィーン!


「こっちの馬は体力がありますけど食費がかなりかかります」


馬車を引くには二頭以上が必要らしいから、この中から二頭を選ばなきゃいけないわけだ。どうしたものか。


「ミリアーナ、どれがいいと思う?」

「私は一頭目と二頭目がいいかなーと」

「そうか、じゃあその二頭で」

「かしこまりました。御者は雇ったりしますか?もしご自身でやられるのでしたらこちら教えることもできますが。


うーん?どうするか?はっきり言って魔法があれば大丈夫なんだが。うーん。


「お願いします」

「では、明日お昼後をに西門前の草原に来てください。この二頭を連れて待っていますので」

「わかりました。よろしくお願いします」


そういって、この店を後にした。

今日はやることが多いからテキパキとこなしていかないと終わらない。



「こちらの箱馬車などはどうですか?お客様にピッタリだと思いますよ」


「ミリアーナどう思う?」

「旅をするなら幌馬車の方がいいと思いますよ」

「幌馬車をお願いしてもいいですか?」



「こちらなんてどうでしょうか。新品で車輪と台車の間にスプリングが挟まれていて揺れを抑えます」


最初に紹介されたのはかなり派手な幌馬車だ。別にスプリングとかの外部パーツは後で自分でつけるからいいんだけど、大切なのは外見だ。地味なのがいい。


「ではこちらはどうでしょう。車輪に魔物の革を使っているので悪路でも平気で走れますよ」


おー、次のは見た目は地味でスプリングはついていないがタイヤが丈夫なのか。これはいい。


「こちらは外見は普通ですが幌が魔物の革で出来ているため雨風には丈夫です」


これはダサいな。幌は確かに丈夫かもしれないが、斑模様っていうのが俺にあっていない。これで普通なのか?


「何かいいのはございましたか?」


うーん。やっぱり二番目に紹介されたやつかな。


「ミリアーナ、どれがいいと思う」

「二番がいいとおもいます」

「じゃあ、二番で」

「畏まりました。引かせる馬の方は既に決まっていますか?決まっていないのでしたらこちらで用意することもできますが」

「馬はもう決めてるから」


そういってこの店を後にした。

今日はまだ、旅の調理器具やら野営用のテント、食料などたくさんの物を揃えないといけない。

まだまだやることは多いな。


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今日だけで白金貨二枚も使いました。買ったものはこちら。


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<今日の戦利品>

馬二頭・・・金貨53枚

馬車・・・金貨37枚

調理器具・・・金貨3枚

テント・・・金貨1枚

食料(一年分)・・・金貨10枚

空き樽・・・金貨1枚

干し草・・・金貨10枚

燃料・・・金貨10枚

素材・・・金貨50枚

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こんなところだ。日本円にして約二千万円。ほんとに金銭感覚がどうかしてきてる。お店の人たちも即金で払うとは思わなかったみたいで目を丸くしていた。


買ったものたちは俺の次元倉庫に入れてある。あとで馬車や馬にも魔法を掛けるつもりだ。


「こんなに買って馬車に詰めますかね」

「大丈夫、何とかなる」


後は明日の操車の練習を終えるだけだ。そしたらあとはこの街を出るだけだ。


そろそろ日にちをまたぐ。そろそろ寝るかな。


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「あんちゃんコツをつかむのはやいなー。やっぱり若いからかね」


そういってきたのは俺に操車を教えてくれている、馬を売ってくれたおじさんだ。


「もう少しで教えることはないねぇ」

「そうですか?ありがとうございます」


素直に褒められると嬉しいものだな。デルタさんに褒められて以来だ。やっぱり褒められるのはいいな。


最初は操車は上手くいかなかったが、なんか途中から馬の気持ちになってみたら、素直に馬が言うことを聞いてくれるようになった。不思議なこともあったものだ。


「いやー、もう教えることがないねぇ。それにしても本当にはやいねぇ」


そんなに早いのだろうか。比べるものがないからわからない。


「そんなに早いんですか?」

「早いたら早いねぇ。普通は早くても2日はかかるもんだねぇ」


ほー、確かに規格外かもしれない。


「じゃあ、この馬たちはあんちゃんに任せるよ。もし良かったら名前とかも付けてやってくれ。それじゃあなぁ」


そう言うとおじさんは馬車から降りて門の方へと行ってしまった。

この世界のご老人は丈夫だなぁ。


そろそろミリアーナの所に戻るかな。

街を出るのは明日の午後からでいいだろう。午前中はギルドやレミアさんに挨拶回りしなきゃだろうし。


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「今日までお世話になりました」

「え?カズヤさんどこかに行ってしまうんですか?てっきりずっとこの街に居るのかと」


最初に挨拶に行ったのはギルマスのピオラさんのところだ。この人にはかなりお世話になった。最後に厄介事を持ってこられたが、それを抜いたら1番お世話になった人だ。


「またいつか、この街に戻ってきますよ」

「そうですか。では、その日を楽しみに待ってますよ」


最後に固い握手をしギルドを出た。



「え?!カズヤさんどこかに行ってしまわれるんですか?また来てくださいねって言ったじゃないですか!」

「いや、別に二度と帰ってこないってわけじゃないので。いつかこの街に帰ってきたら屋敷に寄らせてもらいますよ」

「そうですか?絶対ですよ?約束ですからね!」

「ええ、約束します」


そう言ってレミアさんは俺の頬に軽く口付けをしてくれた。

絶対戻ってくるぞ!

ミリアーナから殺気を感じるが今は気にしないでおこう。


次はおっさんのところだ。



「おう坊主。もう面倒事には巻き込まれるなよ」

「それなんですけど、俺たち今日この街を出ることにしました。入市の時から何かとお世話になりました」

「そうだったのか。達者でな」


おっさんはまだ仕事が残っていたらしく、それだけ言うと詰め所の中に戻って行った。


これでお世話になった人への挨拶回りはすべて終わった。

馬車を買ったお店の人が西門に俺たちの馬車に積荷をしてくれているはずだ。それもそろそろ終わるだろう。


さらばオイスター伯爵領!




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