第16話 伯爵家3
これで準備は整った。あとはレミアさんに頑張ってもらうだけだ。
俺が何をするかって?それは後のお楽しみ。
大したことはしないよ?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺たちは今現場に来ている。あの時食堂に居た人たちも一緒だ。
「これから皆さんのステータスチェックをしたいと思います。貴族様には不名誉なことかもしれませんが、この事件を一刻も早く解決できるよう、ご協力ください」
「ふざけるな!」
そう叫んだのは、アイリス子爵だった。
「そういわずに受けましょうよ、ね」
「黙れ!庶民が私に口出しをするな!」
あれま、怒られちゃった。それにしてもそんなに不名誉なことなのだろうか?よくわからないな。
「後で国王の許可を取りますのでどうかおねが—ッ?!」
「「「なんだ?!」」」
屋敷の明かりが一斉に消えた。
「明かりを持ってこい!」
そう叫んだのはおっさんだった。
俺は素早く、魔法陣の描かれた布を床に放り投げる。あとはレミアさんの仕事だ。
(あとは頼んだ)
(任せてください)
俺とレミアさんはアイコンタクトで最後の確認をする。
「「「なんだ?!」」」
また疑問の声が上がる。
空中に浮かびだした布はそこから幾多の模様を発し、空中に光の縁を作り出した。
映っているのは俺がレミアさんに見した犯行の映像だ。
「「「これは?!」」」
その映像には執事のセルシオさんがメイドのアリサさんをナイフで刺している場面が映し出されている。
皆の目線がセルシオさんに集まる。
「私はやっていない!そうだこれは誰かの陰謀だ!」
なんか刑事ドラマの世界に入ったみたいだ。まるでテンプレだな。
「いいえ、セルシオさん。犯人はあなたです!」
そういったのはもちろんレミアさん。それにしてももうちょっと理由をつけないと言い返されてしまうよ?
「私じゃない!信じてくれ!私はやってないんだ!」
そう叫んでいる間に屋敷の明かりが次第に戻っていく。
やがて明かりが元に戻ると、セルシオさんの周りをこの屋敷に来ていた兵士が囲んでいた。
兵士に連行されていくセルシオさんは屋敷を出るまで「私は違う!」などと叫んでいたが今更言い逃れはできないだろう。
「まさかセルシオさんだったなんて。なんでアリサを…」
そういったのはアリサさんと同じメイドのレイナさんだ。
レイナさん。周りからは親友だったアリサさんを悲しんでいるように見えるが、俺は見逃さなかった。さっきセルシオさんが連行させるときに口角を釣り上げていたことに。
「よかったです。これでセルシオも罪を償えますね」
レミアさんは俺に微笑みかけながら言ってくるが、罪を償う時間はないだろう。貴族の屋敷で犯罪を犯したんだ。死刑以外の何ものでもない。
それにまだこの事件は終わってないだろう。真犯人は多分―あの人だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺たちは今日も屋敷に泊めてもらうことにした。レミアさんが怖い顔をしてまた聞いてきたもんだから。
「カズヤ。レミアさんとなんかあった?」
「いや、何もないよ」
「そう」
お?これは嫉妬か?嫉妬なのか?
それにしても今日はミリアーナに構ってやれなかったな。彼氏失格かな?
「ミリアーナ、犯人は本当にセルシオさんだと思う?」
「そうしてそんなことを?カズヤがみんなに見したあれにはセルシオさんがアリサさんのことを刺してたじゃん」
「いや、まあそうなんだけどさ。なんか嫌な予感がして」
「それって最近カズヤが言ってるふらぐってやつじゃないの?」
「確かに…」
ミリアーナの言う通りこれはフラグかもな。最近フラグの回収率が高すぎるから注意しないと。
「ミリアーナ、ちょっとレミアさんの所に行ってくるよ」
「あっそ。5分で戻ってきてね」
なんかミリアーナ塩対応になってきてない?まあ、分かった。五分で戻ってくる。
「じゃあ行ってくるよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コンコンッ
「どうぞ」
「あら、カズヤさんでしたか。もしかして夜這いですか?」
「いいや、違うよ。魔法を掛けに来たんだよ」
「あら、残念」
彼女持ちの男の子にそういうことは言わないで欲しいな。それにしても何の魔法を掛けるかな。
「とりあえず、マジックセンサーとマジックシールド」
「え?」
「じゃ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ちゃんと5分で帰ってきたよー、ってあれ?ミリアーナは?」
俺が部屋に帰るとミリアーナの姿はなかった。最初はかくれんぼかな?とも思ったが、机の上にある置手紙を見てそれは違うと確信した。
「チッ!!」
ミリアーナはどっかの誰かに連れ去られたみたいだ。それもここにはメイドのレイナさんの魔力が残っている。
俺は急いで探索用の魔法を使うが、反応はなし。
俺はミリアーナの魔力をたどって屋敷を出ていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ミリアーナの魔力を追っていくと、一つの空き倉庫の前まで来た。
「ここか?」
倉庫の中には三つの魔力反応がある。一つはレイナさん。もう一つはミリアーナ。最後の一つは—フェルさんのだ。まさかまた会うことになるとは。
扉にはあたりまえだが鍵がかかっている。魔法の鍵か。
「
ガチャッ
扉の鍵が開くと扉は自然に奥に開いていく。中はすぐに階段になっていて、地下続いているようだ。
俺は階段を降りて行った。
■
地下は三つの部屋に分かれている。一つの部屋から三人の魔力を感じる。
中心にミリアーナ。サイドに二人が居るようだ。
ガチャッ
「誰だ?!」
フェルさんの声だ。いつにも増して深刻そうな声色をしている。
「久しぶりですね、フェルさん」
「カズヤ君?!」
「そうですよ、ミリアーナを返してください」
「やっぱりあの女性は君のだったか。面倒なものを拾ってきた」
俺がフェルさんと話していると、隣にいたレイナさんの戦闘準備が整ったようだ。
俺の横を炎弾が通る。髪がチリチリする。フェルさんも俺に向かって剣を振ってくる。剣には赤い模様が浮き出ている。魔刃だ。
その後も二対一の対決が続いたが、ようやく決着が付きそうだ。
「どうしたんですか?フェルさん。魔力がないんですか?」
俺は周囲の魔力を『アブソリュート』で吸っていた。今ではフェルさんもレイナさんの魔力も枯渇寸前だ。あとは気絶させればいいだろう。
俺はフェルさんとレイナさんの首筋を小指で叩いた。
「「ぐっ」」
2人は膝から崩れ落ちた。今回は首を折ることはなかった。
さてと、面倒事も片づけたしミリアーナを迎えに行くか。ミリアーナはこの真下、地下2階にいるらしい。
■
地下二階は部屋は大部屋一つだけだった。部屋は大きな魔法陣になっていた。その魔法陣の中央の台にミリアーナは寝かされていた。
魔方陣には既に魔力が注がれていて、赤い光を放っている。
描かれている魔方陣は魂還元の陣。生命力を魔力に変える禁忌の1つだ。
「チッ!めんどくせーな」
魔法陣が既に発動していると、文字1つずつを
「
はっきり言って疲れた。魔力や体力は大して減ってないが、精神的に疲れた。
「ガズヤ?」
「あぁ」
とりあえずミリアーナにことの経緯を聞いてみる。
「カズヤが部屋を出てすぐに誰かが入ってきて、気を失ったの。起きたらカズヤが居た」
多分ミリアーナを気絶させたのはレイナさんだろう。レミアさんに魔法を掛ける前にミリアーナにもしっかり掛けておくんだったな。
「とりあえず屋敷に戻ろう。この事もレミアさんに、ッ?!」
「どうしたのカズヤ?」
レミアさんに掛けた魔法が発動した。こりゃ面倒なことになりそうだ。
「ミリアーナ!急いで屋敷に戻ろう!」
俺はミリアーナを抱えて空歩と瞬光を使って屋敷を目指した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
屋敷は半壊し、至る所から火の手が上がっていた。
気配察知を使うと、屋敷は数人の人間に囲まれていることがわかる。
恐らくだが、知恵と生命の樹の連中だろう。
その中には須藤の気配は感じられない。
「おやおや、屋敷にいないと思ったら、外出中でしたか」
「ッ?!誰だ!」
「私はNo3。お初にお目にかかるよ、和也殿」
空に浮かぶ、立っていたのは1人の長髪の男だった。身にまとっているのは黒いローブ。手にはククリナイフと呼ばれる獲物を装備している。
「俺になんか用か」
「ええ、須藤くんが君のことをたいそう気にっているようだから、どんな者か見に来たんだけれど、無駄骨だったみたいだね。こんな雑魚に負けるなんて、須藤くんもそろそろ終かな?」
男もまた、俺の韜晦ステータスを見たのだろう。
この男、レベルは105と須藤より高いようだが、ステータスは須藤の方が圧倒している。
「では、私達はそろそろ帰るとしようかね」
「素直に帰すとでも?」
流石にここまでやられて、素直に「はいそうですか」と帰すわけにはいかない。それに、知恵と生命の樹には聞きたいことが山ほどあるんだ。
「こんな雑魚に敗れるような私ではないよ」
「そうかよ」
俺は一瞬にしてNo3の背後を取り天華を首元に押し付ける。
「これでもまだ勝てると?」
No3の額には冷たい汗が伝っている。
それから数秒、冷たい空気が流れたが、ようやく降参してくれるらしい。
手に持っているククリナイフを腰の鞘に戻す。
「降参しよう」
とりあえず知恵と生命の樹の組織の大きさなどを知りたい。
「聞きたいことがある。
知恵と生命の樹の組織全体の大きさを知りたい。教えろ」
俺は未だにNo3の首元にナイフを押し付けながら質問している。
時にNo3は反撃の機会を狙っているようだが、ことごとく俺に邪魔されている。
「組織の情報は誰にも教えられない」
「そうか。じゃあ詰め所にでもお願いするかな」
「くっ!」
詰め所に送ったところで効果はないと思うけど、ここで逃がすよりはいいだろう。
俺がゲートでNo3を詰め所に送ろうとすると
「そうはさせないよ」
声の主は毎度おなじみ須藤だ。こいつらを迎えに来たらしい。
それにしても須藤の腕の治りが遅いな。組織には治癒魔術師も沢山いるはずなんだがな。
「今回は君と戦う気はないよ。失礼するよ」
そういって須藤はこの場からNo3達を連れて姿を消した。
「カズヤ、逃がしてよかったの?」
「別に今回はいいよ。それよりレミアさん達が心配だ」
■
レミアさん達は屋敷の地下に避難していた。幸い誰にもかすり傷1つ無いようだ。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。カズヤさん達こそ大丈夫でした—いえ、カズヤさんが居れば大丈夫ですね」
とりあえず、みんな無傷でよかった。服とかについている砂埃とかはすぐに落ちるだろう。
それにしても、あんなに激しく燃えたり壊れたりしてたのになぜ無傷なんだろうか。
まぁ、この世界には魔法があるし説明はなんとでも付くか。
「屋敷がこんな状態なので今日は他の場所に泊まってもらっていいですか?お金はこちらが出しますから」
「いえ、屋敷は俺が直しますよ。他の人を一旦屋敷から遠ざけてもらえますか」
「ええ、分かりました。けど。そんなことできるんですか?」
「まぁ、できますよ」
出来ないことはない。けど、目撃者がいるとめんどくさいから。
「わかりました」
とりあえず外見を直すか。
「
屋敷は見る見るうちに焼けている所や、壊れてる所が直っていく。
「おぉー。流石はカズヤ」
後は内部を直すだけだ。それにしてもアンティーク品は直すのには腕が折れる。
内部の物は
「マルチプル:
各アンティーク品の上に魔法陣を出現させ、まとめて直していく。
■
「おー。すごいですね。流石はカズヤです」
「なんかもう、言葉が出てきません」
屋敷の修復が終わったらレミアさんにみんなを呼んでもらった。
レミアさん以外の人には知恵と生命の樹が襲ってきたところから今までの記憶を無くしてもらった。
「それにしてももうカズヤさんは何でもありですね」
確かになんでもありになってるな。まるで俺TUEEEの主人公みたいだ。
「とりあえず今日はうちに泊まっていってください」
「はい。ありがとうございます」
「部屋は昨日と同じで」
「まだ直ってない場所があったら教えてください。直しに行きますから」
そういって、借りてる部屋に行った。今日は魔力を使いすぎたわ。つかれた。
その後も壊れてるアンティーク品の修理に駆り出した。
じゃあ、おやすみ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます