第15話 伯爵家 2
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
これは昨日の夜の出来事。
皆が寝静まった夜の伯爵家。
その、バルコニーに2つの人影。
人影は手に持っているナイフをもう片方の人影に突き刺す。
刺された人影は苦痛の声と表情を最後に息を絶った。
刺した人影はと言うと、闇に溶け込み消えていった。
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「カズヤさん!起きてください!」
「んー。あと30分。むにゃむにゃ」
「大変なんです!メイドのアリサが死んでるんです!」
俺はその言葉で目を覚ました。
アリサさんとは昨日夕食の時俺たちを呼びに来てくれた人だ。
俺たちは急いで食堂に向かった。
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「皆さんにここに集まってもらった
そうオレらに告げたのは、オレの入市を担当してくれたイワンのおっちゃんだ。
何でもこのおっちゃん、日本でいうところの第一課、殺人事件担当の兵士だったらしい。
今食堂にいるのは、俺達とレミアさん、執事さんにメイドさん。それに昨日の夜に来たという、レン・ヴァン・アイリス子爵だ。
「そんな!俺はこの後王都に手紙を届けなければならないのだ」
そう言ったのはアイリス子爵だ。この男、正確には子爵ではなく子爵の息子さんだ。
「そうは言われましても、貴族で起こった事件は犯人特定まで容疑者は一人も外に出さないというのが決まりですから…」
「そんな…」
それからもアイリス子爵は交渉を続けていたが、すべてが無駄に終わった。
俺たちは現場検証が終わるまで食堂で待たされる事になった。
おや?イワンのおっさんがこちらに向かって手招きしているぞ。
「久しぶりです。イワンのおっさん」
「おう、久しぶりだな。それよりなんで貴族の屋敷に小僧がいるんだ?」
「そこにいるレミア嬢に呼ばれて」
「ほぉ、レミア嬢にね。それより小僧の隣にいるかわいい子は誰だ?」
俺はアイコンタクトを出したら、おっさんは察してくれた。
「そうか。それより小僧も厄介なことに巻き込まれたな」
「ほんとですよ。全くなんて運の悪いことか」
そのあと、おっさんに俺たちの昨日の夜から朝までのアリバイを聞かれ、二人して眠っていたっと答えた。
「そうか、分かった。もしよかったら現場を見てみるか?」
この人本当に兵士をやっていていいのか?もし俺が犯人だったら現場に行ったら証拠を消すぞ。
でも、俺が魔法を使えば何か分かるかもしれないし、犯人が分かればすぐに帰れるかもしれないな。
「見てみたいですね」
「よし、分かった。付いてこい」
そうして俺たちはイワンのおっさんについて行った。
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現場は酷いものだった。この世界にはブルーシートがないらしく、遺体はそのままの状態で固定化の魔法と腐敗防止の魔法が掛けられただけだった。
「これは・・・ひどいですね」
「そうですね」
遺体の辺り一面は真っ赤な血に染まっている。少し離れた場所には切り離された腕が転がっている。切り口は見事なものだ。
死因は地球でなら心臓を背中からナイフで一突きだっただろう。しかし、遺体を鑑定してみると思わぬことが分かった。
「ミリアーナ、この遺体呪いに罹ってるんだが、分かるか?」
「はい、これは前にご主人様が掛けられていたやつと同じ類のやつでしょうか?」
「あぁ、多分そうだろう。俺は鑑定スキルを持ってないことになってるから、ミリアーナの口からおっさんに教えてやってくれ」
俺はミリアーナの耳元で小声で話した。掛かっている呪いは日本で言う『金縛り』だ。
多分メイドさんは金縛りで動けなくされて殺されたんだろう。一応俺は『時空魔法』の時間逆流を使って確認してみた。
これは・・・。
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俺たちはもう一度食堂に戻ってきた。
「現場を調べたところ次のことが分かりました。一つは被害者のアリサさんが呪いに罹っていました。二つ目は被害者の血には睡眠剤のようなものが検出されました。以上です」
報告をしたのはおっさんの部下のカリムさん。この世界の調査キットはかなりレベルが高いらしい、というのは分かった。
「質問があるんですけど…」
手を挙げたのはレミアさんだ。
「アリサはなんで殺されたんですか?」
「それはまだわかっていません」
「…そうですか」
「では、皆さんに昨日の夜から今朝までのアリバイを聞きたいんですが、1人ずつ奥の部屋で聞きたいと思うのでレミア様からよろしいですか?」
■
皆のアリバイ聞いて分かったことは、全員が夜は外出をしていない、ということ。
このままじゃ埒が明かない。こうなったら。
「レミアさんちょっといですか?」
「はい?」
俺はレミアさんを部屋の隅に呼び寄せた。
「ちょっと見せたいものが。空間分裂」
「え?!」
「これを見てほしいんだ」
俺はさっき現場で見ていた過去の映像を見した。
「…これは?!」
確かに驚くだろう。犯人があの人じゃあね・・・。
「私はどうすれば?」
おお、話が早くて助かる。
「レミアさんにはサクラをやってほしい。俺は—」
「わかりました!」
話がついた所で俺は空間分裂を解除した。
「じゃあ、お願いしますよミレイさん」
「はい、わかりました」
後は俺が準備をするだけだ。
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