第13話 ドラゴンスレイヤー
昨日の夜は大変だった。股間が大爆発だ。
「ミリアーナ、朝だよ起きて」
「んん~。カズヤ君もう一回戦。ムニャムニャ。」
カァ~。俺の頬が熱くなって行くのが分かる。
「もう朝だよ」
「ふわぁ~。もう朝ですか~」
俺はミリアーナに毛布を羽織らせ(裸だったので)、ミリアーナ戦闘服に着替え、俺はもうひと眠り。
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俺は二度寝から起きて、中庭に向かった。中庭ではミリアーナが一人、剣を振っている。
「ミリアーナ、そろそろ朝飯にしよう」
「は~い」
俺たちはこのまま食堂に向かった。
「カ・ズ・ヤさん!昨日はおめでとうございます。すごかったですね!」
「ありがとうございます」
俺たちが食堂に着くとサキさんがまた席を取って待っていてくれた。今日も食堂は大混雑だったから助かった。
「カズヤ君、朝ごはんは何にしますか?」
「肉入りのスープに白パン。あと、サラダ」
「わかりました。注文してきますね」
ミリアーナは席を離れてカウンターに注文しに行った。
「あ、あの。なんでミリアーナさんの呼び方がご主人様呼びから変わってるんですか?」
「ああ、それはミリアーナが帰ってきてから話すよ」
ミリアーナは10分程して帰ってきた。
「はいカズヤ君。じゃあいただきます!」
「その前にちょっといい?」
俺はミリアーナを横に抱き寄せ、イッセーのっせで言い放った。
「「俺(私)たち付き合うことになりました!!」」
サキさんは「え?!」という顔をしている。それもそうか。もともと俺とミリアーナの関係は主人と奴隷の関係だったんだから。
「あの~、二人は主人と奴隷のご関係ですよね?」
「昨日まではね」
それからも俺たちは事の経緯を説明したり(もちろんステータスのことは言っていない)して食事を終えた。
「俺たちは依頼に行くんでまた夕飯で」
さっきの事の経緯を説明しているときに今日の夕飯を食べる約束もした。
「はい。じゃあ夕飯で」
そして俺たちは宿屋を後にして、隣にあるギルドに向かった。
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「今日は依頼を受けてくれてありがとう。ドラゴンの住処は深淵の森の奥に3つ離れた山の頂上にある。そこでドラゴンを退治してくれ」
「了解でーす」
「なんか心配になってきましたよ」
「大丈夫ですよ。カズヤ君なら簡単に解決しますよ」
「そうですか?ではお願いします」
ピオラさんはミリアーナのくん呼びにあまり違和感は感じないようだ。流石はギルドマスター。そういう線引きは得意らしい。
そうして俺たちはギルドを後にした。
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—深淵の森:麓—
「ミリアーナ。寄りたいところがあるんだけどいいか?」
「カズヤ君のお師匠様のお墓ですか?」
「あぁ、そうだ」
ドラゴンの住処に行くまでに元山小屋があった場所の近くを通ることになる。ミリアーナと付き合ったことをデルタさんに知らせておきたくて、ミリアーナに提案しようと思っていたが、俺が何を言いたいかは分かっていたらしい。
「カズヤ君の兄弟弟子のフェルナンデスさん?はどんな人だったんですか?」
「ちょっとフェルさんの話はしたくないかな」
「ごめんなさい」
フェルさんのことは逃がしはしたが、許したつもりがない。次にあの顔を見たら多分口より先に手が出るだろう。
■
「そろそろデルタさんの墓に着くよ」
まだ元山小屋の近くの倒木はかたずけられていない。これは俺が荒れて倒してしまった木々だ。
墓の周りには草花がキレイに咲き揃っている。俺の残留魔力が墓近くの草花を育てているのだろう。
「綺麗なお墓ですね。ここにカズヤ君のお師匠様が眠っているんですね」
いや、何かがおかしい。デルタさんの魔力が感じられない。俺はデルタさんの遺体に腐敗防止の魔法をかけて埋葬した。しかしその魔力が一切感じられない。
「何かがおかしい」
俺は墓下を透視の魔法で見る—そこにはデルタさんの遺体は肉片一つも残って居らず、見慣れた魔力のみが残っていた。その魔力は—フェルナンデス・フェルナの物だった。
「ミリアーナすぐにここを離れよう。嫌な予感がする」
ミリアーナも何かを感じたようですでに戦闘態勢に入っている。
「これはこれは、お久しぶりですね。江藤 和也くん」
「須藤 朱里!」
そこには須藤とフェルさんが二人、木の上から俺たちを見下ろしていた。
「今日は何か用ですか?俺たちはここにピクニックをしに来たんだけど」
「へー、ピクニックね。ピクニックにその装備は面白いね」
ピクニックか。自分で言っといて改めて変だと思う。こんな戦闘服を着てピクニックに来る人はいない。
「で、須藤たちは俺たちになんの用だ」
「仕留めそこなった君を殺しにきたんだよ」
須藤は辺りに殺気を放っている。隣にいるミリアーナは少し辛そうだ。
「まずはその殺気を抑えてくれないか。ミリアーナが辛そうだ」
「その子が君の新しい大事な人なのかな?そうだとしたらまた殺してあげないとね。違ったとしても殺すけど」
俺の中で何かが弾けた。
「そうか、殺すのか。じゃあ殺される前に殺さ《やら》ないと」
「グラウンド・ゼロ」
「「クッ」」
須藤たちが立っていた木が一瞬にして消滅した。
「へー、少しは強くなったみたいだね」
俺はまた倦怠感を感じ始めた。脱魔の呪いだ。
「また脱魔の呪いか。同じ手が二度食らうほど俺は怠けてなかったぞ」
「へー、の割にはレベルは下がっているようだけど」
大賢者の鑑定でも俺の表面上のステータス(韜晦スキルで創ったステータス)しか見れないらしい。
そこから俺と須藤の魔法での攻防が一時間ほど続いた。フェルさんはすでに気絶している。
あとからミリアーナに聞いたら生きた心地がしないくらいすごい戦いだったらしい。
すでに須藤は満身創痍だ。それに比べて俺は無傷だ。
「もう須藤。お前に勝機はない」
須藤の体力はもう俺の魔法、一撃を耐えることはできない。
「終わりだ」
俺は最後に特大のファイアーボールを打ち込んだ。
「これを待っていた」
空に雄たけびが響き渡る。―
「やっときたか」
空からやってきたドラゴンは須藤の傍に着地して、もう一度音の衝撃波、咆哮を放つ。最初の咆哮ですでにミリアーナは意識を手放している。
「これは俺たちが討伐を依頼されていたドラゴンか?」
「これは僕が竜の谷から連れてきた成竜だ」
成竜は普通、人間に討伐は不可能。撃退はできても討伐はSランク以上の冒険者じゃないとできない。中級竜も最後に討伐ができたのが5年前。下級竜なら兵士50人足らずで簡単に討伐できる。
「流石に君でも成竜5体を相手に無傷じゃいられないでしょう?」
空からもう4体、成竜が姿を現した。どれも黒い鱗をしていて、ステータスには『使役の呪い』がかかっている。
俺は「デストロイ・レイ」で空からやってきた、まだ地面に着地していないドラゴン4体に向かって破壊の光線を撃ち込んだ。
4体のドラゴンは跡形も無く消し飛んだ。残ったのは
「っな?!」
「須藤。残りはそこにいる1体だけだ」
俺は残りの一体に向かって縮地で距離を詰め、手にしている天花と月花で切り裂いた。双刀は魔力を刃に込めた『魔刃』を纏っている。
「これで、終わりだ!」
そして、俺は須藤に向かって刃を滑らせる。
須藤は紙一重で俺の刃を避けたが、流石に無傷とはいかなかった。命の代償として須藤は左腕を失った。
「ぐぅわぁぁああぁああッ」
先のドラゴンの咆哮並みの悲鳴を上げる。
ピクピクッ
「大賢者様!テレポート!!」
フェルさんは須藤に駆け寄り、テレポートの魔法でこの場から逃げて行ってしまった。
テレポート先は特定はできているが、今はまだ用はない。
「ミリアーナ大丈夫か?!」
俺はミリアーナのことを思い出し、近くに駆け寄って、すぐに気付けの魔法をかけた。
「大丈夫か?」
ピクピクッ
パチパチ
「はい。大丈夫です!」
よかった。一応ステータスも確認しておこう。
よし、以上なーし。
「あの、これは一体?」
「ドラゴン」
ミリアーナの指の指す方向には切り裂かれたドラゴンの死体がある。
「それはわかりますけど!なんで成竜が切り裂かれて倒れてるんですか?!」
「俺が倒したから」
「それはこれを見ればわかります!なんでこんなところに成竜がいるんですか?!」
もしかしてミリアーナは覚えてないのか?
「さっきの戦いでドラゴンが空から飛んできて—」
「そんなことがあったんですか」
やっぱりミリアーナはドラゴンが現れた時からの記憶がないらしい。
「まぁ、依頼のドラゴンは前に倒しちゃってるからこれを持って帰ってこの間倒したドラゴンの代わりにしよう」
「いやいや、いくら何でもそれは目立つでしょう!」
お、ミリアーナの敬語が無くなってきたぞ。いい感じだ。
「どうせピオラさんにしか見せないんだし大丈夫でしょ」
「持って帰るときはどうするんですか?!悪目立ちしますよ!」
「それは次元倉庫にいれて…?あ!まだ前に倒したドラゴンが入ってる」
「「かくかくしかじか」」
話は結局今日倒した成竜を依頼のドラゴンとしてピオラさんに見せることにした。
なぜかって?それはピオラさんとかに舐められないようにするためさ!
今から帰ると少し早すぎるので、少しこの開けた土地でミリアーナのレベル上げ兼修業をすることにする。
■
あれから深淵の森に入っていくつかの魔物を討伐してミリアーナのレベルはかなり上がった。
その後は開けた土地でミリアーナと剣を打ち合ったり、俺がトレースで習得した技をミリアーナに教えるなどして時間は経って行った。
そろそろギルドに戻ってもいい頃だろう。
そうして俺たちは行きとは違う道を通って帰っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「すいません。ギルマスって今いますか?」
「はい、今確認いたしますので少々お持ちください」
受付のお姉さんは近くに居た小間使いに確認に向かわせた。
少しすると確認しに行っていた小間使いが帰ってきて、受付のお姉さんに耳打ちしている。
「ギルドマスターは今地下競技場にいるそうです。あと数分で帰ってくるはずなのでそちらにかけてお待ちください」
「いや、直接競技場まで行くよ」
そういって俺達はお姉さんの静止を呼びかけを無視し、地下に続く階段を降りて行った。
地下競技場なら十分なスペースもあって成竜の死体を出すにも適しているだろう。
■
「これが今回討伐したドラゴンです(嘘)」
ドサッ
ピオラさんの目の前にはでっかい黒い塊が置かれた。ドラゴンだ。
パクパク
ピオラさんは口をコイのようにさせながら、ドラゴンの鱗などを手で触って確認している。
「これって成竜ですか?」
「はい、そうですよ」
「これ、どっから出したんですか?」
「俺の秘密の一部からです」
「そ、そうですか」
納得してなさそうな顔をしているがそこはギルドマスター。そういう線引きは得意だ。
「ギルドカードを見してもらえるか?」
ピオラさんは少し俺たちのことを疑っているらしい。そりゃ今までSランク冒険者数人がかりでようやく倒せた成竜をAランク冒険者が1人で倒して、それも無傷で帰ってきたのだ。信じろと言う方が無理である。
=======
<ギルドカード>
名前:エトウ カズヤ ランク:A
職業:剣士
称号:ドラゴンスレイヤー
=======
「確かにドラゴンを単独撃破したみたいだね。カズヤさんの事は驚きを通り越して呆れてくるよ」
その後も前に話していた「知恵と生命の樹」の話をしたりして終わった。
報酬は元々決まっていた白金貨10枚と、成竜の鱗や牙、肉などの部位を売却した値段。王金貨30枚が後日支払われるらしい。
もちろん成竜を俺が倒したことは秘密にしてもらっている。
これで依頼は完了したので俺たちは宿に戻ることにする。
■
宿に戻ると部屋に鍵をかけ、遮音結界を貼り、ヌッポリシッポリと3時間ほどミリアーナと共に楽しんだ。
後日談だが、次の日ものすごく腰が痛くて2人ともベットから起き上がることができなかった……。
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