第10話 ブラッドウルフ
岩陰から出てきたのは最低討伐ランクBのブラットウルフだった。
「ご主人様あいつは?!」
「鑑定してみ」
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ブラットウルフ Lv43
体力:9000/9000
攻撃:1300
魔力:300/300
防御:2300
魔防:100
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体力は平均よりちょっと高いか。攻撃は今のミリアーナが一撃食らったら死ぬな。
「ミリアーナ無理そうか?無理なら俺がやるけど」
「大丈夫です。やって見せます」
おお、その意気だ。でもレベル差36は無理だろうな。
新しく神器を渡して置くか。
「
ミリアーナこれを使え」
「え?!これは?」
俺はミリアーナに創ったレイピアを投げ渡した。本当にうまく取れるものなんだな。ナイスキャッチ。
ミリアーナは貰ったレイピアでブラットウルフに向かって駆けて行った。ブラットウルフは体長5メートル強の魔物だ。
最初に攻撃を繰り出したのはミリアーナだ。剣での連続三回突きだ。突きは二本は刺さったが最後の一本は避けられてしまった。
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ブラットウルフ
体力:8000/9000
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一撃で大体500程度の威力だ。
この調子なら楽にとは言わないが勝てるだろう。
また一撃、また一撃と次々とミリアーナの攻撃は当たっていく。ブラットウルフの攻撃は紙一重で避けている。
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ブラットウルフ
体力:1000/9000
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後二撃ほどで勝負が決まる。俺の出番はなかったな。
フラグというものは存在する。
最後の一撃をミリアーナが決めようとしたとき、ブラットウルフの体が赤く光った。
体が光ると、辺りに黒い靄が現れた。現れた靄は中心に集まっていき、一体のブラットウルフになっていく。そして現れた一体のブラットウルフがもう一体のブラットウルフを生み出し、またしても現れたブラットウルフがもう一体を生み出し、それが7回続いた。
「ミリアーナ下がれ。流石にこれは無理だ」
俺はミリアーナに叫ぶがすでに7体のブラットウルフに囲まれているミリアーナには届かない。
「チッ、面倒な」
俺はミリアーナを殺さずにブラットウルフだけを殺せる魔法を考える。残念ながら俺の膨大な魔力で発動する魔法にはそんなに繊細なことができる魔法は見つからなかった。
ミリアーナは肌に無数のかすり傷を作っている。あの数相手にかすり傷しかつかないのは俺の守護魔法のおかげか、それともミリアーナ自身の回避能力のおかげか。
俺は両手に剣を生み出し、トレースを使い、ブラットウルフたちに駆けていった。
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——ミリアーナ視点——
「ミリアーナ。今回はミリアーナの実力を見てみたい。最初一人でやってみて無理だと思ったら下がってくれ」
「わかりました!」
私はご主人様の呼びかけに力強く答えた。
私は戦闘はしたことはないけど、ご主人様の前で恥をかくわけにはいかない。この間みたいな粗相を、見せるわけにはいかないんだ。
灰色狼は私よりも確実に強い。それは鑑定してみたらすぐにわかった。
でも、ここでご主人様に「無理です」なんて言ったら捨てられるかもしれない。それだけは絶対に嫌だ。私はご主人さまの役に立つんだ。
何とか灰色狼は倒せた。途中灰色狼に噛まれたけど全然痛くなかった。私って頑丈だったのかな?とりあえずこれでご主人様の役には立ったはずだ。
「やりましたご主人様」
「ああ、だがまだ1匹残っているよ」
え?私はそう思って後ろを振り返ると、そこには大きな狼が居ました。
狼の名前はブラットウルフ。Bランク冒険者の獲物でした。とてもじゃないけど敵いません。
「ミリアーナ無理そうか?無理なら俺がやるけど」
「大丈夫です。やって見せます」
ご主人様はこんなところで死んではいけません。私がやるしかないのです。
私がブラットウルフに駆けだそうとすると、ご主人様が新しい剣をくれました。あんなの持っていなかったのにどこから出しだのでしょう?まぁ、今気にすることではありませんね。
ご主人様から渡されたこの剣はすごいです。一突きするごとに力がみなぎっていく気がします。流石はご主人様です。
あと少しでブラットウルフは倒せるはずです。この剣のおかげか、先ほどから素早さが増している気がします。一撃も攻撃が当たってきません。流石はご主人様が渡してくれた剣です。すごいです。
急にブラットウルフの体が光りだしました。体からは靄が出ていて不気味です。
急に靄が集まりだして一匹のでっかい狼になりました。鑑定してみると「ブラットウルフ」と出ました。なんでもう一体?!そう思いましたが、その驚きもすぐになくなってしまいました。
今目の前にはブラットウルフが7体もいるのです。こんなのに勝てるわけはありません。
すぐに私は囲まれてしまいました。すいませんご主人様。せっかく買っていただいたのに。
今ご主人様の声が聞こえた気がしました。気のせいでしょうか?
声は気のせいではありませんでした。ご主人様がブラットウルフたちを切り倒して私の傍まで駆けつけて来てくれました。ご主人様が持っている、赤色と青色に光る双剣はなんでしょう?とても強くてかっこいいです。
私があんなに苦労していたブラットウルフたちをご主人様様は剣の一閃で切り倒してしまいました。流石はご主人様です。かっこいいです。
ああ、私は死なずに済んだのですね。私は今ご主人様の膝枕に横になっています。ご主人様は私がまだ目を覚ましていないと思っているようなので、もう少しこの現状を楽しんでもいいですよね。
好きです。ご主人様。
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俺は何とかミリアーナを間一髪で助け、ブラットウルフたちを倒した。
ミリアーナは今気を失っていて、俺の膝の上だ。ミリアーナの髪がくすぐったい。
少しするとミリアーナの瞼がかすかに動き出し、目を覚ました。
「大丈夫か?」
「はい///助けていただいてありがとうございます」
なぜか照れくさそうに顔を赤くしている。何か俺はしただろうか?とりあえずミリアーナを近くの岩に腰かけさせ、怪我をしているところはないか、念入りに確認する。こんなに綺麗な肌に傷があっては大変だからな。
傷らしい傷は見当たらなかった。戦闘服に掛けた守護魔法がしっかりとミリアーナを護っていてくれたらしい。流石は俺の魔法だ。もう、大事な人を失いたくないからな。
「ミリアーナ。とりあえず灰色狼の討伐証明部位を取ったら、一度街に帰ろう」
「はい///」
やはりミリアーナは赤面したままだ。
俺たちは倒した灰色狼の討伐証明部位を取って、死体は次元倉庫にしまい、街に向かって歩き出した。
灰色狼の討伐証明部位は奥歯の黒い歯だった。
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「大丈夫でしたか?!帰ってくるのが遅かったので心配しましたよ!」
俺たちがギルドに着くや否や、受付から担当している客をすっぽかして一直線に俺たちの前に来た受付のお姉さん(ミレイさん)のs最初の言葉はそれだった。
「すいません、心配かけて」
「ほんとですよ!何をしていたらこんなに時間がかかるんですか?!」
「途中トラブルがありまして」
「あぁ、そうですか!ミリアーナさんと何かしているのかと思いましたよ!」
あれま、そんなことを思われていたのか。
とりあえず俺たちは買取窓口の所に行って、依頼の討伐証明部位以外の素材を売り渡した。灰色狼の牙が二体分と、ブラットウルフの牙七体分だ。ブラットウルフの牙はかなりの強度を持っており、簡単な短剣や矢じりに使われたりする。
「に、兄ちゃん。このブラットウルフの牙はどこで手に入れたんだ?」
買取窓口担当のおっさんのギルド員は俺に冷や汗を流して聞いてきた。
「それは今日の依頼の灰色狼を討伐した岩場に突然現れて、それを倒して手に入れたんですよ」
「七体もかい?!」
「ええ、そうですよ」
「ギルドカードを見してくれるかい?」
俺はギルドカードを差し出した。おっさんはギルドカードを見ると裏にしてひっくり返してみたり、自分の頬をパンパンと叩いたりした後に俺に返してくれた。
「ちょっと待っててくれ」
そういうとおっさんは中央の階段を昇って三階まで行ってしまった。
しばらくすると、おっさんが若い赤いドレス?のようなものをきたお姉さんを連れてやってきた。
「君がエトーカズヤくんかな?」
お姉さんは俺の前まで来ると、一瞬驚いた顔をして聞いてきた。
「はい。俺が江藤 和也です」
「少し、ギルドマスターの部屋に来てもらえるかな?」
なんとこのお姉さん、このギルドの所長さんだったらしい。
遠目からミレイさんが俺たちのことを心配そうに見ている。周りの冒険者たちはざわざわと騒ぎ出した。
「わかりました」
俺とミリアーナはお姉さんに連れられて三階の一番奥の部屋、ギルドマスターの部屋へと案内された。
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「一旦君たちのステータスを見してもらっていいかな?」
ステータスか。ブラットウルフを7匹も倒していてレベル10はおかしいよな。
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名前;江藤 和也 男 Lv30
職業;剣士
体力;1680
筋力;900
俊敏;700
抵抗;900
魔力;300
魔抗;300
固有能力:剣技 気配感知 算術 言語理解
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レベルは30程度でいいだろう。あとは技術がありましたとでも言っておこう。
ミリアーナは灰色狼を5体。ブラットウルフを1体倒しているのだ。かなりステータスもかなり上がっただろう。
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名前;ミリアーナ 女 Lv23
職業;剣士
所属:カズヤの奴隷
状態:実腐れの林檎
体力;1340
筋力;560
俊敏;500
抵抗;560
魔力;230
魔抗;230
固有能力:叡智 鑑定 剣技
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思ったよりもレベルが高かったな。それにしてもこのレベル代じゃブラットウルフを倒せたって言い張るのきついかな?
「これがあなた達のステータスですか?」
「ええ、まぁそうです」
「とてもブラットウルフに勝てるとは思わないんですが、ほかに仲間がいらっしゃるとかですか?」
「いえ、俺たちだけですよ」
「そうですか。とてもこのレベルで勝てるとは思わないんですが、上級冒険者の獲物を横取りしたわけじゃないですよね?」
「そんなことしてませんよ。技術があったので何とか倒せたんですよ」
これで何とかごまかせるかな?あとは相手の受け取り方次第だな。
「実は君たちに昇格試験を受けてほしいんだが、構わないか?」
この人は時々男口調になるな。でも昇格試験か。願ってもないことだが、俺は楽勝でクリアできるがミリアーナがわからない。
「ええ、別に構わないんですけど…」
「では決まりだな。試験は明日の昼だ。受付に私の名前を出してくれたら受けられるように手配しておくから必ず来るように。今日はもう帰っていいぞ」
さいですか。
俺たちはギルマス室を後にして隣の「猫の小屋」に帰っていった。今日の夕飯はブラットウルフの報酬があるから少し奮発しよう。
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夕飯は腹いっぱい食った。もちろんミリアーナもだ。この世界の常識で考えればありえないことだが、俺は奴隷だろうが何だろうがそんな差別はしないよ。
そう言えばミリアーナの病気を治さなきゃいけないんだった。
「ミリアーナ、ちょっとこっちに来て」
俺はベットの脇にミリアーナを引き寄せる。ミリアーナは風呂上り出でものすごく色っぽいがここは理性で制御しなければ。静まれ、俺の下半身!
「これからミリアーナの病気を治したいんだけどいいかな?」
「治せるんですか?!」
ミリアーナは俺に胸元の開いた服で詰め寄ってきた。驚くのもわかるけどあまりその格好でこっちによらないで。俺の下半身が爆発しちまう。
「すべてを癒す光 フルヒール」
ミリアーナの体を薄い黒色の魔力が覆う。少しすると体に黒色の魔力が溶け込んでいく。
「ミリアーナ、ステータスを見てみ」
「はい」
俺はもうステータスを鑑定しているので知っているが「状態:実腐れ林檎」は綺麗さっぱり消えている。
「すごいです。ご主人様!ありがとうございます!」
「いいよ。じゃあ、今日はもう寝ようか」
俺は部屋のろうそくを息で吹き消しベットに就いた。
ミリアーナの床はしっかりと組み立て式のベットを置いてもらっている。
では、おやすみ。
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