第9話 ギルド登録

今日の朝は女の人が腰の上に居ると言うこともなく普通の朝だ。

今日は宿屋の隣にあるギルドに行ってみたいと思う。異世界って言ったらギルドに入って最高ランカーになったりするもんじゃん!

とりあえず俺は布団で寝ているミリアーナを起こすことにする。ミリアーナって結構寝相悪いんだな。あと少しで服が捲し上げられて胸が見えてしまうよ?


「ミリアーナ、起きて朝だよ」

「むにゃむにゃ、おはようございますご主人様」

「あのさミリアーナ」

「はい。なんですかご主人様」

「そのご主人様っているのやめてくれないかな?やっぱりなれなくて」


実は昨日からかなり気になっていた。ご主人様呼びなんて地球じゃ同人誌とかでしか見たことがなかったからね。


「ご主人様はご主人様なのでそれはできません」

「じゃあ、せめて敬語はやめてくれない」

「それもできません」

「じゃあ、もうちょっと砕けた感じでいいよ」

「わかりました」


同い年くらいの人に敬語を使われるのはなんかしっくりこない。


俺たちは寝間着から俺は革の鎧、ミリアーナは戦闘服に着替えた。ギルドに行くのに普段着じゃ野球の観戦にサッカーの格好で行くようなものだ。郷に入っては郷に従えってね。


「ミリアーナ着替え終わったー?」

「はい、終わりました」


昨日のようなことがないように、ミリアーナには専用の簡易脱衣所を部屋の隅に設けた。木で支柱を作ってその上にレールを通してカーテンを掛けただけのものだが、ないよりはマシだ。


「じゃあ行こうか」


俺たちは朝飯にサンドウィッチをかじって宿屋を後にした。


ギルドの外見は三階建てでかなり敷地面積は広い。一回には依頼の受付や魔物の素材買取窓口、小さな売店なんかもある。二階は酒場になっていて、情報交換などが行われていそうだ。三階はギルド長などの私室などの、ギルド職員の休憩場などになっている。


俺たちはギルドの入り口前に居るが、まだ心の準備ができていないので入っていない。俺たちの横を冒険者が通るんだが、扉を開けた時に隙間からのぞいたギルド内部が想像以上に豪華すぎて気後れしてしまった。


よし、入ろう!


入り口の扉を開くと扉についている鈴が鳴る。その音を聞いてギルドの中にいる人たちの視線が一時的に俺たちに集まるが、すぐに興味を無くして元の作業に戻っていく。


ギルド内部は中央の柱にいろいろな紙が張り付けてある。あれが依頼書だろう。


ギルドの受付には4人ほど並んでいる。俺たちはその後ろに並んだ。

ギルドの受付は合計で4つあって、どこも綺麗なお姉さんが受付嬢をしていた。


やっと俺たちの番が来た。前の人が受付嬢を口説いていたので他の3つの受付より遅くなってしまった。


「いらっしゃいませ。ギルド・オイスター伯爵領支店へ。今日はどういった内容で」

「ギルドに登録したいんですけど」

「登録ですね、かしこまりました。こちらの水晶に手をかざしていただいてもよろしいでしょうか」


俺は水晶の上に手を置いた。これって韜晦しているステータスを読み取ってくれるよね?少し心配になってきた。

水晶に手を置くと、水晶は黄色くしばらく発行しすると水晶の中から銀色のプレートが出てきた。


「完成いたしました。こちらがカズヤ様のギルドカードとなります。もしこのカードを紛失されましたら近くのギルドによって再発行を行うことができます。再発行には金貨1枚かかりますのでなるべく無くさないようにお気を付けください=」


その後もギルドカードの説明や、ギルドのルール、冒険者のルールなどを教えてもらった。


=======

<ギルドカード>

名前:エトウ カズヤ ランク:E

職業:剣士

称号:

=======


俺のギルドカードはこれだ。韜晦スキルはしっかり働いてくれていたようだ。

このランクというのは冒険者を9つに分けた時になる階級みたいなものだ。ランクは実質7個までしかない。一番下のFランクは15歳未満の成人していない子がなるやつ。Eランクは駆け出しの冒険者、俺みたいなやつだ。Dランクは周りに一応は認められた冒険者。Cランクは三流冒険者。Bランクは二流冒険者。Aランクは一流冒険者。Sランクが超一流冒険者。本当はSSランクとSSSランクもあるのだが、今はSSランクが5人、SSSランクが1人しかいない状態だ。


「これでギルドの説明を終わります。そちらの方も一緒に登録いたしますか?」


受付嬢はミリアーナの方を向いて聞いた。


「私は「受けとけよ、ミリアーナ」」


「登録します」

「了解いたしました。ではこちらの水晶に(以下略」


水晶が発行して銀色のプレートが出てきた。


=======

<ギルドカード>

名前:ミリアーナ ランク:E

職業:剣士

称号:

=======


ミリアーナも俺と同じEランクだ。それもそうか。

このギルドカード、ステータスと連想しているらしくて職業が変わったりすると自動で変わるらしい。ドラゴンを倒したりすると勝手に称号も増えるらしい。


「これで登録は終わりです。したい依頼がありましたらあそこのボードから依頼書を千切ってこの受付に持ってきてください。常時依頼でしたら受付の横の柱に書いてありますので。では行ってらっしゃいませ」


俺たちは受付を離れて、ボード(依頼書が張ってある壁)の前まで来た。ボードにはいろいろな依頼が張り出されているが、俺たちが受けられるのはこの中の十分の一ほどしかない。

Eランクは依頼ではレベル10までの魔物しか相手にしてはいけないので、討伐系の依頼はほとんどが受けられない。早くCランクに上がって制限なしになりたいものだ。


ビリッ


俺たちがはがした依頼は西の森からの薬草摘みの依頼だ。西の森はもともといた場所だから依頼もすぐに終わるだろう。俺たちは依頼書を受付までもっていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


薬草はすぐに集まったが、ミリアーナの実力が知りたく森の奥まで進んでいたのだが…


グルアァァァァァァァァァ!!!


なぜか俺らの前にはドラゴンが仁王立ちしている。


=======


俺たちはミリアーナの実力を見るためにもともとデルタさんの家のあった草原まで来ていた。そこで細剣レイピアに追加で『バーニングフレア』の魔法を付与エンチャントしたのだが、そのレイピア、エンチャントをミスって剣を振る度に『バーニングフレア』が発動するようになってしまったのだ。

その『バーニングフレア』が山の頂上にあった竜の巣を攻撃し、竜がキレて出てきたのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ミリアーナ、これどうしよう?」

「・・・」


ミリアーナからの返事がないので横を見やると、股間から液体を垂れ流しへたり込んでいた。

とりあえずこいつを倒したいんだけど、何で攻撃すれば被害が少なくなるかな?

そう、俺が最初に考えたのはどうやって逃げるか?でも、どうやって勝とうか?でもなく、どうやったら周りへの被害が最小限になるか?だった。

ミリアーナがいるし、今回は剣技だけで倒すか。この魔法も試しおきたいし。

え?俺が剣技を使えるのかって?それは大丈夫、こうするのさ。


「トレース:剣技」


『トレース』とは見たことある技をそっくりそのままに模倣し再現する付与魔法の一つだ。

日本はアニメ大国だった。サブカルチャーがアニメになるくらいだったからな。そんなアニメ大国だった日本のアニメには戦闘物のアニメも数多い。その中には神業としか言いようがない剣技などもあったわけだ。そしてこの『トレース』はそんなアニメの中の技すら模倣し再現できるのだ。

俺の獲物は創造魔法で生み出した刀の二刀流。ピ〇トが使っている、長弓が半分に分かれて双剣になるやつである。

では行ってみよう。


俺はドラゴンに向かって縮地で駆け寄り、手始めにドラゴンスラッシュ。


グロゥゥゥゥゥゥ!


ドラゴンは後ろに一歩退いた。これを機に一気に攻め込む。ギガブレ〇ク、はや〇さ切り、紫電一閃など、様々な技を決めていく。ドラゴンは外皮を剥がされていき、牙は半分に折れ、翼は根元から切り裂かれている。満身創痍である。

俺は右手に持った天羽場斬でドラゴンの胸へと一突き、刀を突き刺した。

辺りに響いていたドラゴンの悲鳴はあっけなく途絶えた。


俺は端でへたり込んでいるミリアーナの所に駆け寄った。


「大丈夫かミリアーナ?」


「ご、ごしゅじんさま?」

「ああそうだよ」

「私たち無事、何ですか?」

「ああ、無事だとも」


俺はへたり込んでいるミリアーナに手を差し伸べると、そのままおんぶをして街まで降りて行った。もちろんドラゴンの回収も忘れない、ちゃんと次元倉庫にしまっておいた。


——帰り道——


「あの、ご主人様?」

「ん?なんだ?」


後ろから急に話しかけられたせいでそっけない返事になってしまった。


「さっきのでっかいドラゴンを倒せたのもご主人さまの秘密の一つですか?」

「ああ、いつかミリアーナには話すよ」

「ありがとうございます。うれしいです」

「俺はあまり街とかでは目立ちたくないんだ。だから今日のことは他言無用でな」

「はい、わかっています。誰にも言いません」


それから俺たちは無言で森を抜けていった。

ミリアーナの股間にはおんぶをする前に乾燥ドライの魔法で乾かしてましたよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「次の方どうぞ~。あ、帰ってくるの遅かったですね」

「いろいろありまして」

「そうですか。依頼の薬草10本ちゃんと取れましたか?」

「はい、このとおり」


俺は肩にかけているバック経由で次元倉庫から薬草を10本取り出して受付に置いた。次元倉庫にはまだ100本ほどの薬草が眠っている。


「1,2,3・・・。はい、確かに確認しました。これで依頼は完了です、お疲れさまでした」


ドラゴンの件がなければもっと早く終わっていたのにな。


「あの、ご主人様。ドラゴンは換金しなくていいんですか?」


ミリアーナが耳元で聞いてきた。


「いったろ、目立つことはしたくないって。ここでドラゴンなんて売ったらめちゃくちゃ目立つだろ」

「そうでした。すいません」


まぁ、あの言い方だとわからないのも無理ないか。

それにしてもEランクは薬草採取ぐらいしか依頼がないから早くDランクに行かないとな。

さっそく俺は次の依頼を決めて受付に持って行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺たちは何とかDランクの冒険者になることができた。あれから俺たちは、迷子の捜索依頼やどぶ掃除、店の番に買い出しの手伝いなど雑用的な依頼をこなしていき、やっとDランクに昇格したのであった。

Dランクになるとやっとちゃんとした魔物の討伐依頼が受けられるようになる。護衛依頼はまだ受けられないが、それは受ける気がないのでいいだろう。


「どれがいいかな?」

「ご主人様、これなんかどうですか?」

「ん?どれどれ。灰色狼の討伐、報酬銀貨10枚。かこれにするか」


俺たちは依頼書を千切って毎度おなじみ受付のお姉さんの所までもっていった。


「やめといたほうがいいと思いますよ。最初はもうちょっとレベルの低い奴からやった方がいいかと」


受付のお姉さんにとめられてしまった。

魔物の討伐の依頼書には受けられる最低ランクと依頼のレベルが書いてある。こんな感じに。


=======

依頼:灰色狼5頭の討伐

ランク:Dランク以上

依頼レベル:7

報酬:銀貨10枚

違約金:銀貨5枚

備考:なし

=======


依頼レベルというのは1~10までに分かれていて、1~3が採取系の依頼、4~10までが討伐系依頼に分かれており、10に近い方が成功難易度は高くなる。

この依頼はレベル7。DランクでもCランク近くの人が受ける難易度だ。それをDランクになりたての俺たちが受けようとしたもんだから受付のお姉さんは止めたのだ。


「俺たち多少は剣の心得がありますので大丈夫ですよ。職業は剣士ですし」

「ですが、それでも昇格初依頼がレベル7は無茶すぎます」


俺たちはかなり弱いと思われているらしい。そりゃ、採取依頼にかなりの時間をかけて戻ってきているからそう思われるのも仕方ないけどさ。


「大丈夫ですよ。危なくなったら逃げますし、無茶はしませんって」

「そうですか?無理だと思ったら絶対に逃げてくださいね?」

「わかっていますよ」


お姉さんはしぶしぶと依頼書に受注のハンコを押してくれた。

さぁ、これから初討伐だ。(和也は初討伐ではありません)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここは灰色狼がよくあらわれると言われている岩場だ。辺りは岩、岩、岩だ。

今回の討伐依頼はミリアーナの実力を見るためでもある。


「ミリアーナ。今回はミリアーナの実力を見てみたい。最初一人でやってみて無理だと思ったら下がってくれ」

「わかりました!」


お、ミリアーナも気合十分だ。ミリアーナの戦闘服も昨日の夜のうちに守護魔法をかけておいたから狼程度の牙じゃ傷一つつかないだろうが。


岩陰から1匹狼が出てきた。灰色狼だ。1匹が出てくると続々と出てくる。その数7匹。予定よりも2匹多いのでこれは先に俺が狩っておこう。


「よし、ミリアーナやってくれ。きつそうだと思ったら俺が援護するから」


ミリアーナは呼吸を整えると、灰色狼の1匹に向かってかけていった。

最初に攻撃を仕掛けたのは灰色狼だった。牙でミリアーナの方を噛み切ろうと狙って跳躍する。しかし、それは当たることがなく、横を通りすぎた灰色狼に向かって細剣レイピアの一撃。灰色狼は心臓部分を刺され即死だ。

ミリアーナは次の灰色狼に向かって駆けだした。灰色狼もバカではないようで、次は3匹で同時に噛みついてきた。逃げ場はない。しかし、そこは俺のエンチャントした戦闘服だ。灰色狼たちの牙はたちまちひびが入る。俺はミリアーナに向かってピースサインを出しておく。

自慢の牙にひびが入り一瞬戸惑っている灰色狼たちにミリアーナは背後から一突きずつ、心臓をついて行った。

さあ、残るは1匹。周りが居なくなっていったのに動揺しているのか首をフリフリしている。

最後の1匹も難なく片が付いた。


「やりましたご主人様」

「ああ、だがまだ1匹残っているよ」


そう、さっきから俺の気配察知に反応している魔物が先の岩場に1匹隠れている。


グルルゥゥ


出てきたのは灰色狼の亜種。ブラットウルフである。こいつは先ほどまでの灰色狼とは一味違う。なんてったってこいつは最低討伐ランクBの魔物なんだから。

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