第4話

 僕はまるで、蛇に睨まれた蛙のようだった。

 どうしてあそこにいる警察は、僕の所に来てくれないんだ! 殺されるかも…?

 彼女はしばらく僕を見つめていたが、僕の耳元でこう囁いた。


「君がなにも言わなければ、わたしも何もしないよ」

「…」

「本当に怖がってるな~」


 それだけ言うと、彼女は立ち上がりまだ座り込んでいる僕をちらりと見た。

 そしてまた少しだけ笑うと、するりと家の中へ入って行った…。







 僕はしばらくそこから動けなかった。

 警察はまだ、すぐそこでうろうろしている。

 言った方がいいのか?




 でも彼女も辛かったのかな?

 家を見上げる、と。


「こら! 邪魔だよ、どいて!」


 さっきまで向こうの道路で、何かを探している風な警察の一人だった。僕は慌てて立ち上がる。

言ってしまおうか?この人なら僕の話を聞いてくれるかも?

 しかしふと見上げた二階の窓から、あの彼女の顔がちらりと見えた気がして、僕は声が出なかった。









 ……まあいいか。僕には関係ないしね。

 あの人が捕まっても、このまま迷宮入りになっても……ね。

 そしたら、これは彼女と僕だけの秘密になる。

 そう。僕が話さない限り。

 僕はもともと、とっても気まぐれなんだ。






 それはそれで、面白いかも。

 僕は自慢の長いしっぽをぴん、と立てる。


「さっきからうろうろしてるんだよな、あの野良猫」

「ずっと俺たちを見てたぜ? 事件の真相を知ってたりしてな」

「ばかいえ!」





 僕はそんな警察らに向かって一声上げた。












「ニャーオン」









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見えない目撃者 みすぎけい @misugi

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