第3話魔物と異世界人との遭遇

「俺・・・・・、異世界に来ちゃったよ・・・」



思わず呟かずにはいられなかった

しかし無理もない

急に別の世界に連れてこられて



「ラッキー☆お礼世界に来ちゃった☆」




なんて言う楽観者は殆どいないだろう

どんな人間でも想像もできない事態に陥ると

焦りパニックになるのは普通だ

いやそれが人間として当たり前の事だろう

しかし少年は直ぐに冷静さを取り戻す

暗殺者にとって冷静さはある種、

技術と同等に重要なものだ

冷静さを失ったり、頭に血がのぼるような

短絡的な同業者が依頼に失敗して

逆に殺されたり、死ななくてもこの業界として

生きてけなくなった例はいくらでも耳にする

しかし少年は初めて人を殺した時から

冷静さを保つという面ではかなり優れているだろう

それが少年を一流暗殺者としてたらしめている

大きな理由であったのかもしれない



「フゥ〜〜〜〜〜〜〜」



息を吸い込んだ後、大きく吐き出した

何とか落ち着いたようだ

まだ完全には状況が理解できてないが

大方今自分が置かれている状態は把握した

まず頭の中で一つずつ整理して観た





・これは夢ではなく現実の出来事である

おそらくあの遺跡から自分は転移してきて

しまったのだろう


・台座が壊れているところを見ると

こっちの世界から元いた世界へは戻れない

他に可能性はあるかもしれないが


・元いた世界での身体能力や道具などもそのまま

引き継いできたようだ





こんなところか

まぁ訳もわからず別世界へ転移してしまったが

想定外な事態ではあるが全く対処のしようがないわけではない

まず今後のこの世界での計画を立てるために

寝る場所や食事などを確保する必要がある為

先ずは少し遠いが正面に小さく見える

街へ向かおうと方角に足を向けた時、



「!!!!!!!!!!!!!!」




何か凄まじい音がした

一瞬、敵かと思い武器に手を伸ばそうとするが

こちらに敵意はない・・・・が何かが衝突・爆発する音がした

普通ではこんな音は出ない

何かが近くで起こっているのかもしれない

そんな予感を抱きつつ爆発音の方へ

森の中を駆けていった













★ ★ ★ ★ ★ ★ ★




「くそっ!何でこんな時にブラックウルフと

ジャイアントゴーレムが!!!!」


「無駄口叩くな!!

死にたくなかったら、口より手を動かせ!」


「不味いです!

また前方からブラックウルフ二体とオーク

三体きます!」


「クソッ!不味いなそろそろ魔力も尽きてくる

頃合いだ

お嬢様!俺たちのことはいいから

一人で逃げて下さい!」


「バカなことを言わないでください!!!!

従者を見捨てて、何が誇り高き貴族でしょう!

私も最後までお付き合いします!」


「馬鹿言ってんじゃねぇ!

お嬢様を守る為に俺たち従者がいるんだろうが!

あんたが死んだら俺達がいる意味はねぇ!

さっさと行け!」


「そうですよお嬢様

俺たちはアグレスト家に忠誠を誓った身

どんな結末であろうとそれを受け入れます」


彼ら三人はこの山の鉱山の調査及び、

アグレスト家の次女レイナの修行がてら

この山奥にに来たのだった

しかしブラックウルフの集団、

ジャイアントゴーレムに苦戦を強いられてるところ

爆発音や焦げた匂いによって

他のモンスターにも囲まれてしまっていたのだ



「クソッ、本格的にマズイぞ

逃げ道も無くなっちまったなぁ」



護衛隊のリーダー、マットが苦々しげに吐く



「ハハッ、僕たちもここまでかぁ

まさか気軽な気持ちで来た鉱山調査で

命を落とすことになるかもしれないなんてね〜

まぁ僕らしいって言ったら僕らしいね」



「バカなことを言わないで下さい

まだ死んだわけではありません

ここからでも必ず助かる道はあります

絶対に諦めないでください」



と、軽口を叩く護衛にレイナが一喝する

しかし状況が絶体絶命なのはまぎれもない事実だ

敵には囲まれ、ほとんど魔力も残ってない



「とにかく雑魚のブラックウルフから

片付けましょう

オークはまだしも最悪ゴーレム系統は

足が速くねぇ

うまくいけば逃げられるはずだ」



「「了解」」



マットの指示に二人は同意した

その矢先に、



「炎の刃よ、汝に力を貸したまえ・・・・

炎と刃で蹂躙せよ・・・・・

ファイヤーアロー!!!!!

あれ?

何故?魔法が発動しない!?」



「不味い!レイナお嬢様の魔力が切れた!

お嬢様!敵の攻撃が来ます!

回避してくださいっ!!!!!!!!」



「っつ!?」



本来ならばこの少女の命はここで尽きるはずだった

が・・・・・・・・・



ガキィン!!!!!!



「っつ!?誰!?」



「やっぱり戦闘だったか

間に合ってよかった。」



前の世界で世界にその名を轟かせた最強暗殺者の

異世界初の戦闘が幕を開けようとしていた








★ ★ ★ ★ ★ ★ ★








音がなった直後、少年は音が鳴った方角へ

全力で歩を進めていた



「おそらくこれは戦闘・・・・・

おまけにかなり終盤ときてる

急がないと、人ならば死んでる可能性もあるな

まぁそうなったらそうなったでしょうがないが

折角の貴重な、別世界の人間だ

ここでコネクションを作っておいて

何の損もあるまい」



そんなことを考えているうちに

森の木々の間から人影が見える

そこから見える情報から察するにやはり

人が戦闘をしていたしかもかなりの数の

バケモノと



「うわっ数多いな。人間サイドは・・・・・

三人!?マズイな早めに着かないと

特にあの少女・・・・お嬢様っぽい子が

相当疲弊しているな

死ぬとしたらあの子からだろう

それにしても・・・・

いまつかってるのって魔法か?

前の世界では魔法もなかったからなぁ

まぁそこらへんも詳しく彼女たちに聞けばいい話だな」



そして少年は益々歩を加速させ

目的地へ向かう、が、



「不味い!!!!!」



少女がとうとう力尽きたみたいだ

ブラックウルフの鋭い歯がまだ15ほどの少女の

腕を食い破ろうとする

それを観た少年は足の回転をMaxにして

少女とブラックウルフの間に割り込もうとする

腰に掛けてあった短剣、いや中剣といえば良い

長さの微妙な剣を取り出し




「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」




ブラックウルフの歯と中剣がぶつかり合い

ブラックウルフを吹き飛ばした

少女は完全に死んだと思ったのだろう

目を瞑ったまま涙目になっていた


しかし少女は自分の身に何もないため

恐る恐る目を開けると、そこには見知らぬ

自分と同じ歳の少年がブラックウルフと相対

していた為だ

少女はいまの状況に安堵しながらも知らない

少年に質問をせずにはいられなかった



「だっ誰!?」



誰・・・・・か

もう少し感謝されると思ったが・・・・・

まぁこの状況だと当然か

彼女の返事の感想から直ぐに囲まれている

モンスターに意識を切り替える



「僕のことは後にしましょう

それよりもそこの護衛さん

さっきの作戦だとこの辺な黒いのから倒せば

良いんですよね?」



「あっ、ああ・・・・・・

(つーか何でこいつさっきの作戦知ってるんだ

まさかどこかの手の者?

いやそれは無いな。それならお嬢様を庇う

真似なんてしねーはずだ)」



護衛のマットも直ぐに魔物に意識を切り替えた

少年とブラックウルフが相対するが、

少年の前には五匹前後のブラックウルフがいる

ブラックウルフは自分たちが有利だと思ってるのだろう

しきりに喉をグルグル鳴らしてこちらを威圧してくる



(見た目は犬や狼とほとんど同じだがそれを

一段階二段階と凶悪にした感じか・・・・)



少年はブラックウルフをじっと観察する

そしてしばらくブラックウルフと対面していると

ブラックウルフの方がこの沈黙に耐えられなくなったのか恐ろしい剣幕で襲ってきた



少年はそれをヒラリヒラリと躱わしウルフの首の

頚動脈に刃を突き立てる



キャン!?



思わぬ形で急所をやられたブラックウルフは

足取りがフラフラし始めその場で倒れた

仲間が殺されたのが気に入らなかったのか

他のブラックウルフ達も大声をあげて

一斉に襲いかかってきた

しかしキレてるものほど直線的で単調な動きをする

少年にとっては絶好のカモだ

紙一重のところでウルフ達の攻撃をかわし

確実に急所に刃を突き立てる

恐らくほとんど魔法での攻撃で急所を刺されてることに慣れてなかったのだろう

ブラックウルフ達は大声で鳴きその場で血を流し

ピクピクしながら絶命した


魔法無しで魔物を葬る姿を彼らはほとんど見たことがなかったのだろう

現にそれを観た少女や護衛たちは感嘆の言葉を出さざる得なかった



「凄い・・・・・・!」


「あいつ信じられねぇ・・・・

魔法無しで殆どのブラックウルフ葬っちまった」



しかし油断はできない

ブラックウルフをほとんど討伐したとは言え

まだオークとジャイアントゴーレムが残っているのだ

だがオーク二匹だけならまだ使ってない奥の手で

すぐに解決するかもしれない

そう思考が浮かんだため

少年は他の三人に指示を出した



「皆さん!!!!あいつら二匹ならすぐに解決するかもしれません!!!!!!!

なので僕を信じてここから離脱しましょう!」



「オイオイ!

オークは見た目によらず足は速いんだよ!

しかもあんな巨体で突っ込まれてみろ!

肋骨どころの騒ぎじゃねえぞ?」



「大丈夫です!

とっておきの秘策があります!

僕を一番後ろにして逃げましょう

オーク?の相手を僕がします!!!!

案にのってくれませんか?」



「〜!!!!!!!分かったよ!!

今回はお前が居なかったら

俺たちは全滅だったしな!

ならお前の案を信じよう!

ワルス!レイナお嬢様!

ここから離脱しますよ!」



「「了解!!」」



こうしてこの場からの逃走作戦が始まった

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