No.3「アイガー」

グレイの兄であるクロウは、グレイの本来の目的である国を作る役目を果たしているか確認に来たという。クロウ「お前の役目はエリアBの偵察ではない。侵略だ。獣と遊んでいる暇などないのだぞ。」グレイの拳に怒りが込み上げる。クロウ「小さな獣だなぁ。そっちは大物か。ラック国に持って行けば生活に困らなくてすむな。運べ!」グレイが腰にかけていた銃を兄、クロウに向ける。グレイ「なんてことをしたんです!獣はそんなに邪悪な生物ではない!一番醜いのは…」クロウ「一番醜いのは?」グレイ「我々人間だ!」クロウはその言葉にため息をつきながら口を開け話した。「まさかお前…。まだ獣と分かち合える夢を見ているんじゃないだろうな…。邪悪な夢を…。」グレイ「獣はこのエリアBを守っているんです。我々人間だってそうでしょう?守るべきものがあるんです。」クロウ「我々は獣とは分かち合うことなど出来ない。違う種族だからだ。それに、お前が一番守るべきものは獣じゃない。ラック国だ。現状を知らない訳ではないだろう?」グレイ「…?」グレイは、ラック国との通信を切っていたため、故郷のことは長い間知らずにいた。グレイ「…何があったんですか?」クロウ「貴様!ラック王が殺されたこと知らんのではないだろうな!?」声を荒らげるクロウ。「ラック王国は崩壊しつつある。だからお前にエリアBを侵略し、国を作れと王はお前に言ったはずだ!」構えていた銃を余りのショックで落とすグレイ。すると、撃たれて倒れていた小さな神獣が二本足で立ち、巨大化していき、吠え始めた。「グォォーッ!!」巨大化した神獣がグレイの兄、クロウに対し言葉を発する。「イジメルナ…!グレイ イジメルナ!」巨大な爪でクロウの身体は引き裂かれてしまう。グレイは逃げた。走って走って、遠くへ走り続けた。神獣は追いかけて来ながら、グレイに話をかける。「名前!名前が欲しい!グレイちょうだい!名前ちょうだい!」グレイは、恐怖の余り、持っていた爆弾を神獣へ投げつけた。神獣は倒れ、白い炎に身を包まれてしまう。炎の中、神獣はヒトの言葉で、「名前、名前…。欲しい…。」と苦しそうに言葉を発する。グレイは荒い息を整え重い口を開け、神獣に話しかけた。「お前の名前…。名前か…。愛がある獣だったから…、アイガーでどうだ…?」神獣は身体が燃えていくその炎なかで、最後に微笑みながら。「…、アイガー…。」と口に出した。神獣はやがて骨ごと灰になり、砂になっていった。その砂の前でグレイは号泣した。涙が枯れるまで…。

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