第182話
その日の放課後に、私たちは奏人さんと話をした。付き合うこともしっかり話した。
奏人さんは最初、かなり心配していたけれど、翔君と内緒話をして、やっと承諾してくれた。ただし、それはどんな話か絶対に教えてはくれなかったけどね。
椿姉は最初から賛成してくれた。もっと青春を楽しめ!とも言われたっけ。椿姉に言われるまでもなく、楽しもうと思う。
―――帰り際。
私は近くの公園まで翔君を送ろうと思った。けど、それを彼は許してくれなかった。相変わらず心配性は健在だ。そこまでしなくても襲われたりしないのにな、なんて思う。
でも、それで迷惑をかけるくらいなら最初からしない方がいいかもと思い、せめて玄関まで送ることにした。それなら・・・と翔君からのオッケーも出た。
外に出ると、すでにもう暖かくなっていた。ときたまに冷たい風が通るけれど、それすらも少し気持ちよかった。
「………今日はありがとな、時間をつくってくれてさ。」
翔君が上を向きながら言った。
「ううん、こちらこそですよ。じゃなくって………えと、こっちこそありがとう。」
私もそれに答える。
「敬語のクセ、まだ抜けないか。」
翔君が笑うので、少しだけ気持ちが下降する。
「すみませんね、なかなかなおらなくて。」
「ごめんごめん。でもそれも可愛いよ、まじで。」
「かっ可愛いっ!?」
ボン!と顔が真っ赤になった。うぅ、まだ翔君のストレートな愛情表現にはなれそうにない。
恥ずかしくて下を向いてしまう。すると、
「じゃあまた明日。時間が合えば、一緒に帰ろうな。」
とこっちがキュンとくるような笑顔で言った。そして、彼は帰っていった。
彼が見えなくなると、私はへなへなと座り込んでしまった。
「……どんだけ私を好きにさせれば、気がすむのよぉ………っ。」
そんな私の呟きは、誰にも聞こえず空へと消えていった。
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