第178話 第三者side

「………え?」

 ポカーンと口を半開きにする桃香。目をキョロキョロと動かし、頬を真っ赤に染めている。

 その様子があまりにも思うところがありすぎて。

(………可愛いすぎるっ………………!)

 翔はにやけそうな顔を必死に引き締めた。心のなかで、悶絶してはいたが。



 ―――会う度に、彼女と話をするのが楽しい。会って笑顔を見せてくれると、こっちまで嬉しくなる。そして、もっと笑顔になってほしいとさえ思う自分がいて。

(………まさかここまで好きになるなんて、思いもよらなかった)

 慌てる彼女を見ながら翔は思った。そして彼は、話を続けた。

「花っていうか……すごく芯のある人だなって思った。あ、可愛いくてっていうのはほんとな?」

「………それ、お世辞ですよね絶対。」

 睨む桃香に、彼は笑って言う。

「まさか。本心で言ってるって。」

「………いいですけどね、お世辞でも。」

 否定はしたものの、やはり桃香には効かなかったようで。

「お世辞じゃ………まぁそれはいいとして。相談のときに会って話をして、その時間がとても楽しかった。また会いたいと思ったのも事実。そのくらい、桃香と会って話をするのは楽しかった。」

 翔は諦めて話を続ける。

「けど、まさか彼女役やってくれるとは思わなかったよ。女子たちの嫉妬?とかなんとなくわかってたから、桃香にはできるだけ負担をかけたくなかった。まぁ………負担かけさせないどころか、もっと不安にさせたけどな。」

 寂しそうに笑う翔に、胸を締め付けられる桃香。彼のせいではないと言いたくて、でも言えなかった。

「………そんなこと、ないですよ。」

「ならいいんだけどさ。」

 そこで一度口を閉じると、翔はまた真剣な表情で桃香を見た。

 至近距離からのそれに、ほんの少しタジタジになる桃香。けれど、目を反らすことはなかった。

 そして、彼は「………でも」と話を続けた。

「ちゃんと桃香を守りたい。そう思えたのは事実だよ。まぁあれのおかげっていうのが、すげぇ癪に触るけども。」

 そう言って、今度は柔らかく微笑んだ。その笑みは、いつかの桜子のときのそれだった。

 その笑みに桃香は、不安が消えていくのを感じた。それから、じんわりと暖かくなるのも。


「だから……もう一回言わせてほしい。俺は紅 桃香が好きです。だから、俺と付き合ってください。俺の、彼女として。」

 日差しが二人に当たった。まるでライトアップされた舞台のように。

 そしてそこだけが、キラキラと輝いた。

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