第175話

 それがまた翔君に心配をかけてしまったみたいで。

「っ大丈夫か!?」

 翔君に手を貸してもらいながら、私は立ち上がった。


「ごめんなさい、また心配をかけて。」

 私は何度目かわからないほどの謝罪を、翔君に言った。

 まだ、顔の火照りが収まらない。さっきのキスを思い出しては、赤くなり。また思い出しては赤くなる。そればかりを繰り返してた。

「いや、大丈夫ならよかった。」

 そんな様子の私を見た翔君もまた、照れた様子で答える。

 カリカリとこめかみを掻く翔君。手も顔も、はたまた首でさえも赤くなっていて。

 その姿にまた、胸が音をたてた。

 また笑いそうになるのをこらえて、私は尋ねた。

「えと、翔君……は、キス………とか、初めてだったりしますか?」

「そっそりゃあ……初めて、だよ。さっきのもその………き、緊張した、し?」


 彼に質問をしながら、私はそっと唇に触れた。そこはどこよりも熱を持っていて、溶けていきそうなほどだった。



「………桃香?」

 ずいっと翔の顔が近付いた。いきなりだったのとあまりの近さに、私はまた顔を赤く染めて後ずさった。

「ひゃっ!?」

「びっ…………くりした。悪い、驚かせるつもりはなかった。」

 そう言って翔は離れた。

「い、いいいえ大丈夫です!」

 バクバクと動く胸を抑えながら、私は答える。

「?そっか、ならいいけど。」

 頭を捻りながらも、翔君は納得してくれた。

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