第174話
「~~~っ桃香!」
翔君がまた、私を抱き締めてきた。今度は壊れ物を扱うかのように優しく。けれど私の存在を確かめるかのように、強くギュッと。
私も、少しずつだけれどおずおずと彼の背中に手を回した。そして、ギュッと背中の服の裾を掴んだ。
「翔君……。」
「っなんでそんなに可愛いんだよ………っ。これ以上俺を照れさせんなっ。」
翔君が耳元で囁く。それがとてもくすぐったくて、そして言われたことがあまりにも唐突で。
「かっ可愛いっ!?」
ボン!と顔に熱が集まる。今、私はきっと真っ赤になってる気がする。
・・・でも、それ以上に翔君は赤くなっていた。ちらりと目を上に向けると、真っ赤に染まった耳が見えた。
それが可愛くて、少しだけ噴き出してしまった。けどすぐにそれを堪えた。
小さくだったから、聞こえてないと思ってたんだ―――けど・・・。
でも、翔君にもそれは聞こえていたみたいだ。
翔君が私の体から腕を離した。それが名残惜しくて、そしてとても寂しくて。私は柄にもなくシュンとしてしまった。
すると―――
・・・それは、一瞬のうちだった。
翔君の顔が近くなったと思ったら、唇に―――かすかに熱が伝わったんだ。
「………え?」
何が起きたのかわからず、目をパチッと瞬かせた私。
しかし、
「ったく、今度笑ったらまたやるからなっ!」
という捨て台詞にもにた翔君の一言で、さっき何があったのかわかった。
そして、私はへなへなと力が抜けて座り込んでしまった。顔をまた真っ赤に赤くしながら。
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