第139話 第三者side

「……え?」

 桜子が翔の言葉に反応したのは、言われてから数十秒後のことだった。その間に翔は、桃香の体をギュッと愛しそうに抱き締めた。

 すでに周りの女子生徒たちは全員その場を去っていて、いるのは翔と桜子、そして怪我をしている桃香だけ。その上ここは、人も滅多に来ない日の光り届かぬゴミ捨て場。新たな生徒が来るはずもなかった。



 ギリギリッ、と桜子は歯ぎしりした。しかし、翔のいるところへと近寄ってきた。

「翔様、このような者よりわたくしのほうがはるかにお似合いです。早くこの方を忘れて、私をお選びになって?」

 華のような、どこか魅惑的な毒をもった笑みを浮かべながら。

 彼女は翔のすぐ近くで足を止めると、その手を翔に向けて伸ばした。




 しかし、翔はそれを払いのけた。

 そして、拒絶されたことに気付いてない桜子に向かって、はっきり言ったのだった。

「………え?翔―――。」

「もう一度言う。お前に………一切関係ない。あと、俺がお前を選ぶこともないからな。」

 ・・・また、この場の温度が下がった。今度は恐ろしく急激に。

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