第120話

「…………ってことなんだけど。」

 恐る恐る聞くと。



 ポロリ、と雪ちゃんの口から食べかけのクッキーが落ちた。それに気付かず、彼女は―――



「おーめーでーと~~~~~~!」

 と叫びながら、抱きついてきた。




「え、えぇ!?」

 突然の抱擁に、勢いよく私は後ろへと転がった。頭が軽く、ベッドの角に当たった。

 その痛みに悶絶しながらも、

「ちょっどうしたの!?いきなり抱きついてくるなんて………っ!」

 と文句を言おうとした。

 ・・・でも、言えなかった。だって―――




 雪ちゃんが、泣いてたから。

 体を、震わせていたから。

 だから・・・言えなかったんだ。




「……もう。」

 私は苦笑すると、雪ちゃんをギュッと抱き締めた。小さく『ありがとう』って呟きながら、彼女の頭を撫でた。

 隣にいた椿姉も、優しく微笑みながら、

「よかったわね、桃。」

 って言いながら私の頭を撫でてくれた。

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