第18話

「……え、えぇ?」

 泉川君が、ポカーンとした表情になった。あぁ、言い方考えればよかったかも。

「桃香、ちゃんと説明しないとさ~……こいつバカだから、理解できてないよこれ。」

 雪ちゃんがため息をつきながら呟く。

「だから!……あ~もう、何回も言わせんなよな~。」

 泉川君が反論しようとして、ため息をついた。

「はいはいごめん。」

「ごめんなさい、質問を先にしてしまって。」

「いや、いいんですけどね……なんでだろうと思って。」

 うん、その疑問はもっともだよね。この、結論から先に出しちゃう癖、直さないと。

「ええとですね、例えばの話なんですけど……。」



「なるほどねぇ……。」

 雪ちゃんが頷く。私の説明はこうだ。

 泉川君の好きな人に協力してもらって、『人気者の彼に、彼が大切にする彼女が出来た』と噂を流す。そうすれば、今まで付きまとっていた女の子達も、少しずつ減っていくはず。・・・とまぁこんな感じだ。

「桃香、質問。OKだよね?」

 雪乃ちゃんが手を挙げた。

「もちろん!」

「もしこいつにそんな彼女が出来たとして……その彼女は誰がするの?」

「そのための最初の質問だよ。泉川君に好きな人がいるなら、その子に頼めばいいと思う。そしたら泉川君もその子もハッピーになるだろうし。好きな人同士なんだから、一石二鳥だよ。」

 私はにっこり笑いながら言った。

「考えたね、桃香。」

「でしょ?なので聞いたんです。いたらいたで、その子に頼みたいなぁと思っているので。」

 嬉しくて、頬がユルユルに緩む。

「好きな人、ですか……。」

「あ、それは私も気になる!あんたとそういう話はしたことなかったもんね。」

 泉川君の顔がまた、赤くなった。

「普通は男子としねぇよ。てか、んなこと言うの恥ずかしいし……っ。」

「真っ赤になってるし。照れてんのね~。」

「……うっせぇよ。」

「雪ちゃん、話をそらさないの。」

「えへへ、ごめんね?桃香。」

「……好きな人、ですよね。今はまだ、いないです。」

「そう、ですか~……。」

 いないのか。どうしよう?



「……あ、良いこと思い付いた!」

 突然、雪ちゃんが手をポンッと叩いた。

 そして、いたずらっ子のような笑みを顔に浮かべた。

 あ、あれ?なんか、嫌な予感がひしひしと・・・近づいてるような。

「ゆ、雪ちゃん?何を、思い付いたんですか……?」

 なるべくそれを悟られないように、私は恐る恐るたずねる。

 雪ちゃんは一度笑みを引っ込め―――とんでもない、満面の笑みを浮かべた。

 そして―――爆弾発言を、その場に落としたんだ。





「なら、桃香がすればいいじゃん!うん、そうしよ~~!」

 ・・・と。

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