第12話

 そんなこんなで数分経った頃。

「そろそろ来る頃かな~、アイツ。」

 雪ちゃんがストローでコップの中の氷を、コロコロと動かしながら呟いた。

 ちなみに、テーブルの上には私の宿題が散らばっている。どれもこれも苦手教科ばかり。

 さっきまで雪ちゃんに教えてもらってたからね~。

「来るって……幼馴染みさん?」

 宿題をする手を止めて、私は尋ねた。

 ちなみに、今やってるのは化学。化学式を覚えている真っ最中です。

 覚えること自体はそんなに苦ではないんだよ。ただ、化学式を覚えるのは苦手なんだ。

 日本史とか世界史とかの単語は覚えられるんだけどなぁ~・・・。

「うん。アイツ、野球部の主将キャプテンなんだよね。だからさ、部活のことを一番に考えなきゃいけなくてさ……。」

 雪ちゃんが苦笑した。

「普通なら、恋愛とか考えてる暇なんてないんだよ。まぁアイツは生粋の野球バカだから……あんまり心配はないの。バカだし?」

 ゆ、雪ちゃん・・・。

「バカバカ言い過ぎだよ~。

「いいのいいの。ほんとにアイツはバカなんだから。」

「あはは……。」

 私は苦笑した。

「なのに、なーんでアイツモテんのかな。告白してくる人、多いんだよね~。」

「幼馴染みさん、モテモテですね~。雪ちゃんから見ても、その人格好いい?」

「格好いいのはいいんだけど、イケメンは兄弟たちで充分。」

 あらま。

 まぁ雪ちゃんのお兄さんたちや弟君たちはかっこよかった。

 何回か会ったことあるけど、ほんとかっこよかった記憶がある。

「なるほどね。」

「告白するのはほんとどうでもいいんだよ。ただ、部活の時間の邪魔をしてまでするのはやめてほしいんだよね。」

「邪魔、ってどういう―――。」

「練習してるアイツを呼び出しては告白してんの。いちいちグラウンドまで来るんだよ?」

「ほうほう。」

 カバンからメモ帳を出した。カリカリ、と雪ちゃんの話を書いていく。

「それってさぁ、放課後だよね?」

「うん。」

「見学の申請は?それ以前に、顧問の先生には言ったの?」

「顧問には言ってる。けど、今は様子見だって言われた。」

 ふむ。

「様子見、か~……。」

 私たちの学校には、ある校則がある。

 それは部活について。『放課後、部活動中の生徒以外は早々に帰宅すること』というものだ。

 理由として、『活動中の生徒の妨げにならないように』ということらしい。

 例外もある。それは、『入部目的の見学をする場合は、その部活の顧問に申請すること』というもの。ようするに、申請すれば見学可能になる、という訳。


「してる。いつも顧問の先生のところに行ってるみたい。」

「そっか……。」

「他のマネージャーとも話はしてるの。けど、全然解決策がなくて。」

 雪ちゃん曰く、他に二人のマネージャーがいるらしい。一人は一年生で、一人は同じ学年の子。

 大変なんだな。何か、出来ることが有ればいいんだけど。なかなか解決策が出てこない。

 情けないなぁ・・・。

「とりあえずは先生に話をし続けるしかないと思う。今はそれしか、私も思い付かないや。」

「……そっか。」

「うん。ごめんね?役にたてなくて。」

「ううん、ありがとう。話聞いてくれて。助かったよ~。」

「いえいえ。」

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