佐竹
直感だった。
佐竹はアンジュミニョンでいつものようにケーキを買い、羽衣子の笑顔を見て店を出た。
通りを隔てた電柱の陰に潜む男に気付いたのはたまたま視線がそこに向いただけだったが、佐竹にはすぐわかった。
あの男は羽衣子を見ていると。
ねっとりとした視線はもう一人の店員に向けられているという可能性もあるが、佐竹は自分の直感を信じた。
頭の中で火花が散り大爆発が起きる。羽衣子を汚すこの男を今すぐ殺したい。以前なら即行動に移しただろうが、羽衣子に贈り物を捧げ続けたい今は用心を重ねなければならない。
視線に気付いたのか男はその場を離れた。すぐ戻ってくる素振りを見せたが、後ろにいた佐竹に気付くと慌てて立ち去った。
佐竹は後を追い、決して目を離さなかった。
しばらくうろうろしていた男だったが、佐竹が気配を消すと安心した表情で電柱の陰に戻ってきた。
閉店時間が過ぎ、店の入り口にはロールカーテンが下りている。店内に点いていた照明が消えると男の挙動が明らかにおかしくなった。
こいつは彼女に何かするつもりだ。
佐竹はそう確信した。
十数分後、店横の路地から羽衣子が出て来てバス停に向かった。
いやらしい笑みを張り付かせた男が電柱の陰から一歩踏み出す。佐竹はその前に立ちはだかった。
まったく予想してなかったのだろう。
驚愕に目を剥いた男の顔はすぐ恐怖へと変化し、羽衣子の乗るバス停と反対の方向へ逃げ出した。
頭の中で今までにない大爆発が起こる。
佐竹は男の後を追いかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます