佐竹
白目を剥いて絶命した女の顔を見て佐竹はいつものように声を出さず笑った。
この女からも禍々しい臭いがぷんぷんしている。死んでもまだ消えない。
佐竹はサバイバルナイフを取り出すと肩に掛けていたバッグを外し、脱いだジャケットとともにベンチに置いた。
再び美恵に馬乗りになり、躊躇することなく二つの乳房を削ぎ取って投げ捨てた。一つは植え込みの木に引っかかり、もう一つは花壇に咲く黄色い花の上に落ちた。
二つの丸い切り口から見える脂肪の粒が血に濡れて光っている。生臭いにおいがしんとした夜の空気中に漂った。
佐竹は女の腹にナイフを突き立て、股の付け根までただ淡々と、抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返し、肉と脂肪と内臓をミンチにした。
気が済むと首の付け根にナイフを押し当て肉を切り、頸椎が繋がるだけの頭部を両手でつかんで力任せに捩じ切った。手の上でボールのように二、三度バウンドさせ、高く遠く放り投げる。
美恵の生首は闇の中に吸い込まれるように消えていった。
佐竹は声のない大笑いの後、脇腹あたりに少しだけ残したきれいな皮膚に印をつけ作業を終了した。辺りに散らばる美恵のバッグの中身から財布だけ拾うと自分の荷物を持ち、女の残骸をそのままにして悠々と公園を立ち去った。
*
早朝の公園を散歩するのが老人の日課だった。
両手を上げて深呼吸し、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。
「ん? なんだ?」
いつもの匂いではない微かな異臭をかぎ取り、老人は手を下ろしてゆっくりと植え込みに囲まれる道を進んだ。
ベンチのそばにある街灯の下で何かが倒れている。人のようだが、人には見えない。
もっと近付いて老人は腰を抜かした。
首のない、胸から下がミンチのように切り刻まれた遺体だとわかったからだ。
震えながらも携帯電話で通報し、すぐパトカーが駆けつけた。
公園内は騒然となり、規制線が張られ立ち入り禁止となったが、数メートル離れた桜の枝に引っかかる生首に気付いているものはまだおらず、発見されるのはもう少し後になる。
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