第48話
……あれ?
まだ、意識があるぞ。どういうことだ?ガス欠でエンジンが止まったんだから、意識があるのはおかしい。前の世界ではエンジンを切ったら、次にエンジンがかかるまで意識はなくなっていた。
……ってことは、エンジンがかかったってことか?まだ軽油は無くなっていなかったのか?
だが、なにか様子がおかしい。人の声がする。それも一人や二人じゃない。かなりの数だ。アキラたちじゃないのか?なにを言ってるんだろう?
視界が良好になってきだした。しかし、さっきと情景が変わってる。暗い砂地ばかりだったはずなのに、なぜか屋内にいる。周囲は板壁で囲まれている。屋根もある木造の小屋の中のようだ。
それだけじゃなくなにか機械があちこちにいっぱいある。パルブのついたパイプラインが縦横に走っている。何本かは壁を突っ切って外に向かっている。
その機械の手前でたくさんの人が拍手をしている。いったいなにがあったんだ?
そのたくさんの男の手前に二人の老年といったほうがいい男女が俺をジッと見つめている。……どこかで見た気がするが、ドライオンの街中だっただろうか?
「ロボット……久しぶり」
その男性が俺に向かって声をかける。かたわらに従っている女性もうなずいてる。
「あんた、誰だい?」
トラック姿の俺は男性に向かって問いかける。見て分からないから訊いたほうが手っ取り早い。
「もう、忘れたか。この世界に来た時はすぐに分かったみたいだったのにな。……さすがに五十年も経つと、ずいぶん変わってるかもしれないな」
そばの女性に向かって笑いかける。女性もニッコリとしながら
「あなたは変わったでしょうけど、わたしは昔と変わってないわよ。ねえ、ロボット」
俺に語りかけてきた。いや、この人も全然分からんのだが。
「父上、大丈夫ですか?ロボットの調子が悪いようですが」
俺の背後にも人がいた。壮年の男が油まみれの汚い恰好で二人のそばに近づく。
「大丈夫だ。戸惑っているだけだろ」
うん、戸惑っているのは間違いない。まったく見知らぬ小屋の中でまったく見知らぬ人たちが周囲を固めているのだから。
どこか別の世界に飛ばされたのかと思ったが、俺のことを「ロボット」と呼んでいるところを見ても、どうもそうではなさそうだ。それに……この老人は「五十年」と言ったよな。
「改めて……久しぶりだな、ロボット。私は『アキラ』だ」
そう、老人は挨拶をした。……アキラ?俺の知っているアキラはこんな老人じゃなかったはずだ。……それにそうだとしたら、隣の婦人は?
「やっぱり、戸惑っているわね。……わたしは分かるでしょう。ニーナよ」
……ニーナ!?……ええっと、申し訳ないけど、アキラよりもまったく面影が感じられない。あの美しい白い肌で長い黒髪を束ねた女性だった人だと言われても……。肌の白さは置いといても白髪を束ねて、かなりの皺がみえる。ずいぶん変わってる。
「いったい何がどうなってるんだ?事情を説明してくれないか」
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