第43話
屋敷の敷地内にあるタルモの小屋が今のアキラたちの仮の住処だ。
今までだったら夕方になったらタケルもトピもちゃんと帰ってきていた。ところが今日に限って帰ってきていない。
彼らと普段、遊んでいる子どもたちはすでにそれぞれの家に帰っているそうだ。アキラとタルモが確認に行ったが、どの子もタケルやトピとは今日は会っていないと言っていたらしい。
屋敷の門のあった場所で俺とニーナがアキラと落ちあう。
「今日、タケルたちと会った人はいないのか?」
俺の問いかけに戻ってきたアキラは首を振る。
「僕が君と帰ってきた時には、もう外に遊びに出ていった後だったから、僕もあいつらとは会ってない」
ニーナの話しによると彼らは朝早くに、食事をとってすぐに出かけたらしい。
「……ただ、あの子たち気になることを言ったの。『お父様はお医者様を連れて帰ってくるの?』って」
「どうして?あいつら今までそんなこと言ったことないじゃないか」
アキラはニーナに食ってかかる。
「あの子たちだってリオンのことが心配なのよ」
「……そんなことより、君はなんて答えたんだ、ニーナ」
俺は二人の言い争いに割って入る。
「……『たぶん、無理だと思う』」
「なんでそんなこと言うんだよ!」
「実際、無理だったじゃない!」
もう二人の争いを無視して考える。
もし、タケルとトピが俺たちが帰ってくるのをどこかで見かけたとしたら。
「やっぱりお父様はお医者様を連れて帰ってこれなかったんだ」
と思ったら……。
「あの子たちはホースリアスの場所がどこか知ってるのか?」
まだ言いあってる二人に向かって問いかける。
「……砂漠の向こう側の国だってことくらいは。……ちょっと、まさか!?」
俺はためらいなくトラックに戻る。
「乗れ!追いかける!!」
「……『乗れ』って、なにこれ?なんなの!?」
この姿をはじめて見たニーナが驚きの声をあげる。見慣れているアキラが彼女を放って乗り込もうとすると、
「私も……行きます!」
ニーナの背後からリオンが姿を見せた。
「リオン!?」
リオンはニーナを無視して俺に乗り込もうとするアキラに向かって
「そこに乗ればいいのですね。……乗せていただけますか?」
手を伸ばした。車高のあるトラックの運転席に乗るのははじめてだから、アキラに引いてもらわないといけない。
「リオン、やめなさいよ!そんな訳わからないものに乗り込むなんて。それにあなた今まで眠っていたじゃない」
ニーナが心配の声をあげるが言われたリオンもアキラも彼女の声を聞いてない。リオンの真剣な目を見つめているアキラはやがて
「来い!」
とだけ言って手を伸ばす。その手をとってリオンが俺の運転席に乗り込む。
「……もう!わたしも行くから詰めなさいよ」
そう言ってニーナも強引に乗り込んできた。
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