第42話

 言った言葉が理解できなかった。やがて、

「やってみないと分からないが、……おそらく無理だと思う。俺には場所のコントロールができないから失敗したかどうかも確認できない」

 とだけ言えた。実際、あのミミズやドワーフたちが本当に異世界に飛ばされたのか確認していないのだから本当のところは分からない。なんとなくそう確信できるというだけだ。それでは心もとない。

 アキラは予想していたのか落胆した様子はなかった。

「リオンさんだって死ぬと決まったわけじゃないだろう。結構、元気そうだし」

 俺はつとめて明るく切り出す。だが、アキラは首を振る。

「元気なわけじゃない。彼女の体は日に日に病魔に蝕まれているんだ。今日、俺を叩くことができても明日はできないかもしれない。さっきだってニーナにつかまっていないと歩くことだってままならない。正直、ここまで悪くなってるなんて思ってなかった。ホースリアスに行って六日間も時間を無駄にするんじゃなかった」


 夕刻になって、領主の屋敷を出て湖の畔に座り込む。

 リオンの命も風前のともしびなのかもしれないが俺もそろそろヤバそうだ。時々、ガス欠特有のプスンプスンというエンジン音が聞こえてくる。このままでは明日の太陽を見る前にエンジンが止まってしまうだろう。

 ……だが、それでいいのかもしれない。アキラがリオンを異世界に送ろうなどと考えたのは俺がいるからだ。俺が動かなくなれば、そんな気も起きなくなるだろう。

 彼女の残りの命を家族と共に過ごすことに時間を使う。その方がリオンだけじゃなくアキラやヴァルヴィオ、そして二人の子どもたちにとって良い。

 できれば邪魔にならないところでガス欠になりたいもんだが、さてどこがいいか?

 鈍くなっている頭で考えていると、ニーナがトルマに乗って走りこんできた。

「ロボット!……タケルとトピを知らない!?」

 ニーナが開口一番叫ぶ。……またかよ。

「……アキラに言ってくれ、その無意味な嘘に付き合うのはもう御免だって」

 俺の嘆息した言葉に苛立つように

「今度は嘘じゃないのよ!本当にどこにもいないの。いつもだったらもう帰ってきてもいいはずなのに」

 怒鳴りつけてくる。

 俺は立ち上がった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る