第40話

 ドライオンに帰る途中でアキラから停まってくれと言われた。

「なんだ?」

 停車した俺は何気に訊ねたが、彼からは

「……あのドワーフは死んだんじゃないよね?」

 と、訊ね返された。

「……」

 黙っている俺にさらに

「僕と同じで魂を異世界に転生させたんじゃないのかい?」

 たたみかけるように訊いてきた。

「……どうして、そう思うんだ」

 沈黙で返すことに耐えかねて逆に訊き返す。アキラはしばらく考えたあと、

「……うまく説明できないけど、あれには死体にあるような……モノみたいな感覚が感じられなかったんだ」

 語りはじめた。

「屋敷を潰したドワーフもそうだし、さっきの奴もそうだ。まったく動きはしなかったけど、死んでるっていう感じがしなかった。

「僕は……十年前にはじめて人を殺した。突然、訳も分からずに戦場に放り出されて、はじめて出会った見知らぬ人を手にかけた。……その時からもう死体っていうのがどういうものか分かってる。

「戦が終わってからも何人も殺した。ヴァルヴィオ様に命じられて暗殺をするようになったからね。……どうやら僕はその手の仕事が向いていたみたいだったんだ。だから、君が手がけたドワーフたちが死んでいないのは感覚としてだけど理解できてる。

「それはいったいどういうことかって考えた。……君は僕を轢き殺さずに、この世界に送りこんだ。そんな力を持ってるトラックだ。きっと奴らも僕と同じようにどこか別の世界に飛ばされたんじゃないか。

「……だから頼みがある。……リオンを異世界に転生してほしい」

「断る!」

 俺は即答した。


「僕がこの世界に飛ばされたときに気がついたことがある。僕は前の世界では喘息持ちだったんだ」

 そんな奴がサッカーなんかやってたのか。

「だけど、ここに来てからそんな不調はまったく現れなくなった。どうやら病気やケガなんていうのは一緒に転生したりしないものなんじゃないか。……だったらリオンが異世界に行けば彼女の病気は転生しないはずだ」

 アキラは走り続ける俺の体の中で独り言のように喋り続ける。本人は俺を説得しているつもりなんだろうが。

 だが、俺は彼の会話を聞き流してる。情に流されて言うことをきいたらどんなことになるか分かったもんじゃない。

 ……それに、リオン本人が反対するに決まってる。

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