第31話

 朝になってトラックになった俺の運転席にアキラが座る。俺は隊商が作った道を走りはじめる。と、言ってもこのまままっすぐ走ればいいのか分からない。

「おい、ちゃんとナビゲートしてくれよ」

「ナビゲートってなんだ?」

「……道を教えてくれ」

 アキラは、そのまままっすぐ走ればいいと、だけ言って後は運転席に身を沈めて眠りやがった。まだ、寝るのかよ!

 途中で例のミミズが地中から現れた。昼間には出ないなんて話しはいったいどうなってるんだ!?俺はアクセルを目一杯ふかしてぶっちぎる。

 ミミズの野郎は目が見えないが鼻は利くらしく俺の体から出る排気ガスにのたうち回って追い掛ける気力もないみたいだ。この調子なら道中は安全に進めそうだ。

 カーチェイスの間、ずっと爆睡していたアキラが起きた。それから彼の指示に従って道なりを進んでいく。

 やがて、地平の向こう側に目的の都市、ホースリアスが見えた。


 ホースリアスはドライオンよりも数十倍は巨大で開けた都市のようだ。土壁で積み上げた家屋よりも木材を使って建てられた屋敷が多い。ドライオンでは木材を使った家は領主の屋敷くらいしかなかった。

 砂漠の中の都市のはずなのに、これだけふんだんに木を切って使用することができるなんて。見たところ都市の周辺には伐採できるような森林はなかった。

 水も豊富なようでそれぞれの家ごとに井戸が完備されている。

 地下水がたっぷりあるのかと思ったが、アキラの話では地下に用水路を掘って南の巨大な湖から潤沢な水を確保しているらしい。

「だったらこの家に使っている木もそこから採ってきてるのか?」

「そういうことだね」

「どうしてこんなところに都市を作ったんだ?ドライオンみたいに湖の近くに町を作れば水も木も簡単に手に入るのに」

「それはこの先にあるものを見れば分かると思うよ」

「……その先ねえ。それよりも……」

「……?」

「この人たちはどうして俺の周りに集まってるんだ?」

 トラックの俺の周囲にたくさんの人だかりができている。老若男女様々な人が口々に珍しそうな顔をしている。

「そりゃトラックなんてはじめて見るんだから、珍しがって当然だよ。なんだったらロボットになったらもっとビックリするんじゃないか」

 アキラは運転席のドアを開けて外に出る。

 ……そうかな?まあ、この格好じゃ町中は動きにくいから二足歩行になるか。クラクションを一発鳴らして周囲の人を遠ざける。

 場所を空けてもらってから姿を変える。途端に周囲の人々がわあっとばかりに散っていく。しまった、ビビらせてしまったか。

「ほら、ビックリした」

 アキラが俺の足元で笑う。いや、人がいなくなったら困るだろう。

「俺たちが行く場所がどこにあるか知ってるのか?」

 俺が問うとアキラは「あっ!?」という顔をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る