第24話

 暗闇の中を灯りを点けてなおも歩き続けることにした。砂に足を取られながら懸命に歩いているとアキラが俺に頼んだことは難しいんじゃないかと思えてきた。彼は俺がトラックに戻って医者や設備をドライオンの町まで運んでほしいと言っていたが、それは無理だろう。

 どれくらいの荷物になるか分からないが積載量の半分だとしても、この砂の上を走るとなるとタイヤが沈んでしまって走れないだろう。時折、固い地面が見つかることもあるが、そんなところをいちいち探して走っていられない。つくづく車輪に優しくない世界だ。発明されなかった理由もなんとなく分かる気がする。

 そんなことを考えながら歩いていると、ふいに足元が動く。足を取られて背中に向けて倒れる。

 なにが起こったのかとっさに分からなかったが、どうやら砂の下になにかがいるようだ。そいつが動いたために俺はすっ転んだらしい。

 いったいなんだ?俺は灯りを消して四つん這いになって耳を澄ませる。ゴゴゴゴゴゴッ……という音が地面の下から断続的に聞こえてくる。俺の足元を抜けていくかと思いきやまた俺の下に戻ったりを繰り返している。……狙いは俺か?

 音が少しずつ近づいてくる。この感覚はドワーフが地面を動いていたときに似ている。また別のドワーフがやってきたのか?

 砂の地面が隆起し、そのなにかが飛び出してくる。俺は立ちあがり、その飛び出してくるなにかを避ける。数メートル離れて、また灯りを点ける。俺のヘッドライトの灯りに照らし出されたそれは巨大なミミズだった。

 正確にはミミズのようなものだ。俺は実物は見たことないがミミズというのはこんな頭とおぼしき場所にこんなでかい口がついているものじゃなかったはずだ。その口は閉じることなく尖った歯をむき出しにしてこちらにその頭を向けてくる。目のようなものは見えないからこちらの姿は見えていないかもしれない。

 奴はその大口を開けたまま俺に向かって突っ込んでくる。俺は間一髪、巨大ミミズのかたわらをすり抜ける。ミミズは砂の地面に倒れ込んだかと思うとすぐにこちらにその大口だけの頭を向ける。

 ヘッドライトを照らして奴の細長い体をじっくり観察する。乾いた砂漠に似合わないくらいのヌメヌメとした皮膚に一メートルくらいの感覚で節がついている。尻尾の先はまだ地面の下に埋もれているから全長がどれくらいか分からないが十メートルなんてものじゃないだろう。

 また俺に向かって突っ込む。そんな尖った歯でも俺の体を噛み切ることはできないだろうが、それでも食われる姿を想像するのは気分のいいもんじゃない。

 それにしても目がついていないのに正確に俺の位置を捉えているのはどういうことだ?

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