第19話

 ………ゴトッ。

 中から微かに音が聞こえた気がした。ニーナにも聞こえたようだ。彼女は俺を見上げてうなずくと、扉をコンコンとノックした。すると、同じようにコンコンと返ってきた。

「……誰かいる!?」

 俺とニーナは顔を見合わせてうなずきあった。彼女が絨毯を引っぺがしながら地下の扉から遠くに離れる。俺は彼女が離れたのを確認すると立ち上がり、右膝を大きく上に上げた。このまま扉を踏み抜いてこじ開ける。

 ……ガチャ。

 また扉から妙な音が聞こえたかと思うと、今度は地下の扉がガクンと持ち上がった。

 俺は上げた右足を引いて後ろに下がる。扉が微かに開いて、いったん止まる。

「………大丈夫、ドワーフじゃない」

 小さな声が聞こえると同時に扉がめいっぱい持ち上がり、後ろにドンッと音を立てて開いた。

 扉を持ち上げた男が小さな男の子を抱え上げて外に出してきた。

 ニーナが駆け寄り、その男の子を受け取って抱きしめる。

「ニーナ!僕、暗いところでも泣かなかったよ」

 男の子はニーナに抱きつきながら、ニコニコと笑顔を向けてそう言った。

 次いで、アキラが地下室から出てきた。そして、出てきた地下室に向けて手を伸ばして、別の男の子を受け取った。その男の子は最初の男の子と顔はそっくりだが、今も泣きべそをかいている。

「トピは泣き虫だな」

 ニーナに抱かれた男の子は泣いてる子を笑う。

「うるさいっ!タケルのバカッ」

 トピと呼ばれた男の子は泣きながら、タケルに向かって悪態をつく。

 地下室からさらにリオンが現れ、アキラに抱きかかえられながら地上に出てきた。白い顔がなお一層、青白くなった感じだ。

 そして、ヴァルヴィオが地下室から出てきた。

「うむっ、一時はどうなることかと思ったが、どうやらうまくいったようだな」

 ヴァルヴィオはドワーフの体を見つめる。

「このドワーフは君が殺ったんだろ?どうやって倒したんだ?」

 リオンを抱きしめてるアキラが俺に向かって問いかける。俺はそれに答えられない。……いや、答えたくないというのが本音か。

 もう使うことはないと思っていた異世界へ「送る」力。それが使えるだけじゃなくおそらく自由に使えるようになっている。俺にこの力を与えた何者かは……なにをさせるために、この力を残したのか。

「どうしたんだ?なんで黙ってるんだ?」

 アキラがさらに訊いてくる。

「……俺は君の出した試験に合格したのか?」

 彼の問いかけを無視して訊ね返す。正直、腹が立ってる。どうしてこんなことをしたのかさっぱり解らない。

「ああ、合格だ。君が僕らの味方になってくれることも、そして頼りになる力を持っていることも」

 アキラはこちらの気持ちを考慮することなくにこやかに答えた。

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