第18話
彼女が何を言ってるのか分からなかった。「屋敷の中に隠れてた?」だってさっき誰もいないと言ったばかりじゃないか?
「わたしが中に入ったら、アキラたちがいたの。何をしてるのか訊いたら『協力してほしい。この屋敷の中には誰もいないことにしてほしいんだ』って言われたの」
ニーナは瓦礫を掘る作業を止めずに話し続ける。
「『どういうことよ?』って訊いたら『あのロボットが僕らの味方か知りたいんだ』って……」
「味方って?」
「知らないわよ!ぼうっとしてないで手伝いなさいよ。知りたかったらアキラに聞けばいいじゃない!」
そう言われてハッとした。俺は屋敷の門を力任せに叩き壊す。屋敷が壊れたんだからこれくらい破壊したってたいした違いはない。敷地内に入って瓦礫を掘り起こしはじめる。
それにしても、そんなことのためにこんな大掛かりなことをするのか?誘拐騒ぎをおこしてこの町の男たちを外に追い出して、屋敷をドワーフに壊されて……。あまつさえ建物の下敷きだ。
「いったいどのあたりにアキラたちはいたんだ?」
埒があかないと思った俺は当たりを付けるためにニーナに訊いてみた。彼女はそこに思い至らなかったようでハッとして俺に言った。
「みんなヴァルヴィオ様の私室に集まってたわ。アキラだけはわたしが入ってくるのが分かってたみたいで、わたしをそこに連れて今言ったことを言われたの」
「ヴァルヴィオの私室って?」
「一階の奥」
彼女が指さした場所に向かう。領主の私室と言ってももう他の場所と区別がつかない。とにかくここにいる可能性が高いはずだ。倒れている柱を持ち上げる。ニーナも俺の近くで彼女に持てる廃材を掻き分ける。
どれくらい時間が経っただろうか。私室と思しき場所の絨毯が見えるくらいまで掘り下げたが、そこには生きてる人間も死体も見当たらない。
「……そ……そんな………」
ニーナがその場でへたり込む。その白い指は細かいささくれが刺さって、あちこち傷がついて血がにじんでる。
それにしてもここに少なくとも五人の人間がいたはずなのに、まったく見当たらないのはどういうわけだ?意気消沈してるニーナを見てると嘘をついているようには思えない。
ニーナが屋敷から出てきて、ほとんど間があかないうちにドワーフが地下から現れた。そんな短時間に誰にも見つからずに逃げ出すことができるだろうか?
ふと何気なく絨毯をみると半分ほどめくれ上がっていた。さっきの破壊のときにそうなったのだろうか。それにしてはなんだか不自然だ。俺はその絨毯の端をつまんでさらにめくる。すると木の床に四角い枠で囲まれた小さな扉のようなものが見えた。
ニーナを呼んで訊ねる。
「知らないわ。この部屋にはほとんど入ったことがないし……」
地下室の入口ならここに入った可能性がある。絨毯がめくれていたのは元に戻す余裕がなかったということだろう。
問題は地下室自体が地下からやってきたドワーフの影響を受けている可能性が高いということだ。中に入っても無事でいてくれているとは限らない。だが、とにかく開けてみるべきだ。でも、扉を開ける取っ手が見当たらない。
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