第16話

「とにかくアキラたちを探そう。まさか誰にも見つからずに屋敷からでられるはずはないんだから」

 そう思ったが実際はそうではなかった。ニーナが周囲にいた女性たちに話を聞いても屋敷の中に引っ込んだヴァルヴィオたちが再び表に出たのを見た人はいなかった。

「普通に考えたら、まだ屋敷の中にいるか……どこか秘密の抜け穴みたいなところから脱出したか……」

「そんなもの見たことないわよ!生まれた時からこの屋敷の中で遊んだけど、そんなの見つけてたら恰好の遊び場になってたわ」

 ニーナの言葉には説得力があると思う。でも、だとしたらどうやって忽然と姿を消すことができるんだ?俺が異世界に人々を送ったときだって送れたのはその人たちの魂だけだった。肉体は元の世界に残った。どうやれば体ごと消えてなくなるんだ?

 その時、ニーナが連れていた家畜が突然、いななき出した。そう思ったすぐ後に地面から唸るような音が聞こえてきた。

「なに?なんの音!?」

 地震か?かすかに地面が揺れてる感じがする。周囲の女性たちもにわかに騒ぎはじめてる。揺れが大きくなってくる。

 突然、屋敷が破壊された。俺はニーナの前に立ちふさがり屋敷から飛んでくる廃材から彼女を守る。なにが起こったんだ?

 屋敷のあった場所を見るとなにかが突っ立っている。大きさは俺と変わらないくらい。頭は禿げ上がり、両腕をダラリと下げて猫背の……人間ではないのか?まさかまた別の世界からやってきたのか?

「ドワーフ……」

 俺の背後でニーナがつぶやく。たしか悪戯好きの妖精とか言っていたか。俺のイメージしていた妖精とはかなり違う。なんでそのドワーフがこんなところに現れたんだ?

「……男……の気配がない……」

 ドワーフはそう小声で言いながら周囲を見回す。どうやら言葉を話すことができるようだ。

「……君は誰だ?」

 俺はドワーフに向かって話しかけてみる。すると奴は俺のことにはじめて気がついたようにこちらを見た。

「……なんだ?……お前?」

「俺はロボットだ」

 そんなことを言っても奴にしてみたら訳が分からないだろうが。

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