第14話

「知っているはずはない。それを知っているのは、ここにいる私とアキラ、それに……」

 ヴァルヴィオが視線を向けたのは彼の娘のリオンだった。彼女はアキラの代わりに領主の仕事をやっている。だから知っているのか。

「多分、アインサの奴らの仕業と思わせたいんだと思う」

「どうして?」

 俺の疑問にアキラは

「カレルヴォが死んだのは戦場に着く前にアインサの手のものに殺されたからということになってる。カレルヴォがアインサとの戦で手柄を立ててくることを望んでいたタルモにしてみれば不意打ちで息子が死んだことが耐えられなかったんだと思う。……推測でしかないけど」

 ため息交じりに答えた。

「子どもたちを誘拐したのがタルモだとして、どこにいるのか分かっているのか?」

 アキラは首を振り、ヴァルヴィオは無言で嘆息する。

 ふとリオンに視線を移すと顔色が悪い。

「リオンさん、大丈夫ですか?」

 彼女に声をかける。リオンは疲れ切った笑顔を黙って向けてきた。

 無理もない。昨夜、屋敷に戻ってみれば子どもたちがいなくなっていたのだ。おそらく一睡もできてないだろう。俺は疲れることをを知らないから眠らなくても大丈夫だが、人間はそうはいかない。ましてや、体の弱いリオンにとってはこの数時間は心身ともに辛いに違いない。

「それで……ロボットにお願いがあるんだ」


 俺は当てもなく町の中を歩き回る。俺のでかい図体を町の女性たちが避けて歩く。邪魔だろうな。

 もちろん、俺もアキラたちの子どもを探しているわけだが、他の男たちと同じように見当違いと思われる場所をうろうろしている。俺は目立つから、その間にアキラたちはタルモが行きそうな場所を探し出すことになっている。

 ……こんなことをして、本当に大丈夫なのだろうか?

 どう考えても人数を集めてタルモの潜伏先を探し出すほうが効率がいい気がする。人質の身が心配なら最初から集める必要がない。アキラたち数人だけで探し出せばいいのだ。なぜこんな無意味というか無駄なことをやっているのだろう?

 ………もしかしたら、俺はとんでもない間違いを犯してるんじゃないか!?

 俺は踵を返して屋敷に駆け戻る。


 ……屋敷には人気ひとけがなかった。しまった!もっと早く気がつけばよかった。いったいアキラたちはどこに行ったのか?建物の中に入れれば手がかりがなにかあるかもしれないが、この体じゃ門を超えることもできない。

 考えろ!アキラたちはどうして男たちを町から出さなくちゃいけなかったのか?

 俺を屋敷から離す必要があったのは分かる。そうしないと彼らが行動できないからだ。俺が他の男達と行動をともにできるかどうか未知数だから俺だけは別行動をとらせたのだろう。俺も邪魔者だったのだ。

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