第13話

 ……えっ?

「タルモさんの息子さんって何歳なんですか?」

「ニーナの二つ上だから、死んだのが十一歳だったよ」

 アキラの答えに俺はおかしいと思った。

「あなたたちの文化では十一歳から大人として認められているのですか?リオンさんから聞いた話では子どもで戦に行ったのはアキラだけだったと聞いています」

 その時リオンは十二歳ではまだ子どもだという俺たちの世界を珍しがっていた。アキラもリオンと結婚したのが十二歳だったはずだから大人になるのは十二歳だと思っていたのだが……。

「タルモの子は戦場で命を落としたのではない。……処刑したのだ」


 ……処刑?一体どうして?

「戦が続く中で私はアインサの領主と話し合いを続けていた。そして、戦を終えるための和解の意思表示として、この戦をはじめてしまった戦犯を差し出すことになった。……それがタルモの息子、カレルヴォなのだ。

「彼がアインサの町で女を襲ったのが発端だということになった。私はそんなことはあるはずがないと主張し、アインサの方にこそ戦をはじめた責任があると主張した。交渉は決裂して戦はこのまま続くかと思われたのだが……」

「……僕が、カレルヴォを殺したんだ」

 ヴァルヴィオの話をアキラが遮る。そしてヴァルヴィオがまた話しはじめる。

「……彼は決して褒められた行状の少年ではなかった。実際、ドライオンだけでなくアインサやツヴァルフに出向いて徒党を組んで悪さを働くこともしばしばだった。そこを付け込まれたのだ。だからといって、まだ子どものカレルヴォを差し出すことなどできるわけがない。私が悩んでいることを知ったアキラは私にカレルヴォとともに戦に行かせてほしいと提案してきた」

 「カレルヴォは戦場で武器を持って戦うことを喜んでいた。まさか背後から僕に一突きにされるなんて思ってなかったと思う。信じられないという顔をしている彼の首を剣ではねて……アインサの領主の元に届けた」

 二人から聞く話がにわかに信じられない。前の世界で殺すなどということと無縁だった少年がどうしてそんなことができるんだ?俺は今まで夢など見たことなかったが、これははじめて見る悪夢なんじゃないかと思った。

「アキラの働きでアインサの領主から和解の意思を示された。あとはあれよあれよという間に和平がなった。ツヴァルフが再び間に入ってそれぞれの代表が集まって議会を開くことを提案された。それで今がある」

「……それはタルモさんは知っていたんですか?」

「血で受けた怨嗟」と手紙には書かれていた。息子の復讐だったのか。

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