第2話

 その日、俺はもう何十人目かの新しいドライバーと一緒に山道を走っていた。俺を中古車として購入してくれた会社は加工食品の卸売会社で都内から山を超えて隣県の本社に帰る途中だった。この会社に入ってからは新たな異世界差遣の仕事は行っていない。このまま無難にトラックとしての配送の仕事をまっとうできたらいいなと漠然と考えていた。


 俺が送った人々はいまごろどうしているのだろう?彼らは同じ異世界に送られたのかそれぞれまったく違う世界に送られているのか分からない。異世界とやらがどれくらいの数、存在しているのかも知らない。神様(悪魔かもしれない)は何も教えてくれない。


 そして、異変に気づいた。

 なにかが俺の身に降りかかろうとしている。また新たな異世界差遣の仕事がはじまったわけではなさそうだ。その時の感覚とはぜんぜん違う。いったい何が起ころうとしているのか?

 前方から俺の倍近いサイズの四トントラックがやってきた。こんな狭い山道を走る大きさじゃないだろう。こういうのが時折いる。自分の体の大きさも考えずにただ近道だからと狭い抜け道を選んで走る。まあ、俺も人の事は言えない。この道は二トンくらいなら十分な広さを取れている道だが、ここよりも遥かに狭い道を猛スピードで抜けていくこともしばしばだ。そしてそんな時ほど事故は起こしていない。俺が事故を起こす時は「送る」時だけだ。その意味では守られているのかもしれない。


 俺のドライバーも奴に気がついたようだ。俺のスピードをゆるめて左脇ギリギリに寄せる。だが、俺はそのコントロールを無視して加速させる。ああ、こうやって彼らも異世界に「差遣」されていったのか……。自分の意思とは別の力が働いてまるで死に向かっていくように。俺も異世界に送られることになったのか。……それともこのドライバーなのか?わからないまま、俺はドライバーを乗せて前方の四トントラックに突っ込んでいった。


 ……目が覚めると青空が見えた。ちらほらと白い雲が散らばっている。そういえばこんな風に空を見たことなんかなかったな。そう思いながら手を地面にかけて起き上がろうとする。


 ……!?手?

 トラックの俺に手がある?どういうことだ?見るとたしかに俺に金属の腕がついていた。それだけじゃなく脚もある。手を使って体を触ってみると頭や胴体もある。まるで人間のようだ。しかし、人間と違うのは全身が金属でできているということだった。

 いや、正確には金属だけじゃなくゴムやプラスチックの部分もある。もしかしたらこの体はトラックの体を利用して作られた体なのか?いったい何のために?

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