別に悪い事はしてないんだよなあ。私。
最近、知らない間に近所に引っ越して来ていた高校時代の同級生が、偶然お客さんとして職場にやって来たんです。
これがたまたま、私がその同級生の対応をしまして。確か先に私がいらっしゃいませなり何なり声をかけ、それで相手が私だと気付いた同級生が驚いた顔で、「え、宗やん」。みたいな。それに対する私の態度ですか。こんな具合です。
「…………」
職務放棄かってぐらいの硬直をしました。
その同級生とは、不仲という訳では無いんです。クラスは離れていましたが友達ですし。高校卒業以来、一度も会っていなかったので驚いた、というのも大いにあったんですが、んーこれがー……。恥ずかしかったんですよ。
高校時代の友達に言わせれば当時の私とは、めちゃくちゃ怖い人だったそうです。口は重く、にこりともしない、何か校則なり個人間の約束なりを破り常識に反すると、理詰めの言葉で淡々と追い詰めて来るやばい人。だそうで。当の本人は遅刻も欠席もしない上に勉強が出来るので責める場所が無く、私に説教されるのは先生より怖かったそうです。私の口数等人付き合いにおいての態度については、時間と共に変わっていきましたけどね。真面目な所は今も変わっていないのでしょうが。
現在は接客がある仕事をしているので、お客さんの対応中はまーあよく喋ります。いつの間にか営業スマイルも覚え、意味不明なクレーマーにはそいつを向けつつ心の中で中指を立てられますし、常連様とも軽快に世間話が出来るようになりました。
これは学生時代から考えると、有り得ない事です。大学時代は友達に、コンビニでバイトをしていると話すと、「えぇ!? 宗が接客すんの!?」と、定期券を落とした時並みに動揺した表情を貰いましたし(ぶっ飛ばしてやろうか)、高校時代に至っては、「宗は接客なんて絶対出来ないよ」と、マクドナルドでバイトをしていた友達に言われました。その友達はカウンターで接客をする係だったのですが、お客さんに「スマイル下さい」と言われ、一ミリも笑わずシカトした事があり、そんな奴にまで無理だと言われるのは、正直に言って癪でした。
とまあ、このような印象を友達から抱かれているような人間が接客などと、越して来た同級生も思ったのでしょう。びっくりしていました。私は、弱みでも握られたような気分になりました。ここ数年で最大の羞恥心を観測しました。”何故他人事っぽく書くのですか”? そうでもしないとやってられないからです。
あの、木元 宗が愛想笑い。それもニッコニコで。もう私がどれだけ笑わない人だったかって、私が笑っている写真の画像が、友達の間で激レアアイテムとして扱われていたぐらいだったんです。まるでツチノコ。そんな人間が久し振りに再会すればあら不思議。別人のような笑みを浮かべているではないですか。あの、冷めてる、怖い、怒らせたら殺される等、さんざ鬼のようなイメージを撒き散らしていた木元 宗が(全て実際に言われた言葉です)!
これはもう当時を知る者からすれば、イジらないと気が済まないでしょう。私も死を覚悟しました。「あら~、丸くなったねぇ宗ちゃ~ん!」と、私を嘲笑する
然し、今はそんな事を喚いている場合ではありません。同級生に現在の私の姿を見られました。幸いにもその同級生はクラスが離れていたのでまだマシですが、お互い文化部に所属していた関係で何かと縁があったので、私の人間性は知られています。
既に誤魔化せるようなタイミングも逃しており、固まった私の顔には、「まずい」の文字がでかでかと書かれています。もう真っ青になっていたのでは。
でも仕事は成し遂げなければと、簡単な挨拶を交えつつ、最後まで対応しましたけどね。その同級生も余り人をからかう性格ではなかったので、「また来るわ」と残して去って行きました。でも本当は、相当驚いてたんでしょうね。向こうも私の接客態度に、ぎこちなくなってました。鬼も笑えるという事実に打ちのめされていたのでしょう。
何とか乗り切れたと安心出来るかと思いきや、その私と同級生の遣り取りを見ていた上司に、「木元さん、珍しくタメ口だったけれどさっきの人誰?」とイジられました。屈辱です。職場の人とは同期が相手でも敬語になってしまう癖が裏目に出ました。ただでさえ学生時代の友達と会うと、どうしても態度が当時に戻りますしね。その上、私と上司は出身地域が違うので方言が異なり、私の態度の砕け方が、それは新鮮に映ったようでした。勘弁して下さい。
とまあそんな感じで、こんなご時世の中、久々に友人と会えました。と括っておけば、まあいい話。
応募用に書いてる長編は、もう少し書き溜めてから公開しまーす。
では今回は、この辺で。
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