試行錯誤その四(多分ラスト)。


 コンテスト前に、あんまりネタバレするのもどうかなーと。こんばんは。木元です。


 前回、2,400文字をオーバーしても、引きが作れなかったと書いていた第3話(予定)ですが、さっき書き上がったので丸ごと貼り付けてみます。文字数は2,052文字で、結構絞れた気分ですね。多分まるごと1話分を貼るのはー。――今回がラスト。全話貼っていく訳にもいきませんしね。続きが気になった方は……。私の12月からの活動を、お楽しみにィ(露骨な宣伝ですね)! 多分冒頭の3話は、ここで公開したままの内容で行きますので。


 では、貼ってみまーす。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 相川の疑問に、俺は答える。


「だって実際に、調査されてるじゃん。『灰越かいえつの調査団』に」


 灰越かいえつの調査団とは、この世界の成り立ちを探っている組織の名だ。年中雪が降り止まないこの世界は、どのように生まれたのかという謎を、各地を飛び回って調査している。


「寄付金を無駄遣いしてる人達でしょ」


 相川は僅かに眉間に皺を寄せたまま、少し尖った声で言った。


 灰越かいえつの調査団の活動費は、主に一般市民からの寄付金だ。寄付に義務などは無く自由だが、調査団の支部がある大都市では、毎月莫大な寄付金を得ている。大きな町程世界の歴史に興味があるようで、団への協力も熱心だ。


 団の支部が無いこの町は、正直言って僻地である。海路も、陸路の馬車も、一日にごく限られた本数しか出ておらず、町という形を保つ為、最低限の生産しか行われていない。


 俺は覗き込んだまま、相川に尋ねる。


「嫌いなの? 灰越かいえつの調査団」

「お金の無駄」


 相川は目を伏せると、摘まんだままだったページを離した。眉間に皺を寄せるのを堪えようとしているが、ぐっと力んだその表情は、余計に難しい顔に見える。


 相川は、一際眉間に皺を寄せると、ぱっと力を抜き、いつもの読めない無表情に戻ると目を開けた。


「――そんな事に使う余裕があるなら、周りの小さな町に配ればいいのに。生活の水準に差があるのは、不平等だと思う」

「ええつまりお金下さいってぇ?」

「この町は、自給自足出来てるからいい。もっと小さい所」

「ああ成る程ね?」


 俺は納得すると、腕を組む。


 可愛い顔して、めちゃくちゃ図々しい事言うなと思ったら。


 相川は、開きっ放しの本の手前で、手を組むと言う。


「その、灰越の調査団だって、おとぎ話がきっかけで始まったって言うじゃない。どこの地域でも、共通して語られるお話があるから、その理由は何だろうって調べ始めたのが始まりだって」

「よく知ってるじゃん」

灰越かいえつの調査団ぐらいだもん。こんなに夢見がちなの」

「あー……」


 苦笑を返した。


 俺は腕を解くと、再び背凭れに頬杖をつきながら身を乗り出す。


「――でも、もしこの世界にかつて、別の顔があったとしたらさ、ワクワクしねえ?」

「しない」

「……じゃ、じゃあ、不思議だと思わねえ? どこに行っても同じおとぎ話が、語られてるなんて」

「“白いお姫様と黒い騎士様”のお話の事?」


 相川は、平淡に答える。


 もう表情は完全に無で、いつものミステリアスな美人さんに戻っており、淡々とそのおとぎ話を語り出した。


「……“かつてこの世界には、白いお姫様と、黒い騎士様が暮らしていました。毎日幸せでしたがある日、白いお姫様と黒い騎士様が暮らしていた国は、隣の国と、戦いになってしまいます。白いお姫様と黒い騎士様は、戦いを終わらせる話し合いの為に戦地へ向かいましたが、隣の国の人々は、聞き入れてくれませんでした。やがて戦いは、誰にも止められない程の大きな渦となり、世界を壊しそうになってしまいます。破滅に向かう世界を憂いた白いお姫様は、最早この戦いは、世界の歴史ごと終わらせなければ解決が出来ないと、自分の命と引き換えに、世界に雪の魔法をかけました。だからこの世界は、常に厚い雪雲に覆われ、真っ白い雪と、硬い氷に閉ざされるようになったのです。二度と世界に、争いが満ちないように”……。こんなお話のどこに、現実味があるの?」

「おー。そらんじれるとはブラボー」


 周りの迷惑にならないよう、ぱちばちと控え目な拍手を送る。周りも何も、さっきから図書室には司書さん以外に、俺と相川しかいないんだけれど。


「これぐらい、誰でも言えるよ」

「美人の口上が聞けるのは嬉しいもんさ」

「ふうん」

「でさあ、何でこんなおとぎ話が、世界のどこに行っても聞けるんだろうって気にならねえ?」

「ならない」

「何で? 不思議じゃね?」

「どこに行っても毎日雪だから、後付けで誰かが作ったんじゃないの。太刀川たちかわ君みたいな、知りたがりな子供を黙らせる為に」

「…………」


 取り付く島も無い様子に、思わず笑顔が引きる。


 俺は肩を落とすと、思わず心から口にした。


「……夢が無えなあ。相川あ」

「毎日平和に暮らせれば、それで満足だから」

「…………」


 無欲と言うか、日々の暮らしへの感謝を忘れない、よく出来た女の子と言うべきなのか。


「お前って真面目ー……」

「ありがとう」

「いや、喜んで貰えたなら嬉しいけどさ……」


 ぶっちゃけなくても誉めていないし、そんなに素直にお礼を言われると戸惑う。


「あっ、そうだ」


 下がってきたテンションを上げるように、思い出した俺は声を上げる。


 その間に読書を再開していた相川へ、前のめりになると続けた。


「お前に用があったんだよ」


 相川は右手で髪を耳にかけながら、尋ねるような一瞥を俺へ投げる。


 やっぱりピアスでゴテゴテになっている右耳が気になるが、また後で訊いてみよう。実はピアスのデザインが、結構好みで気になっている。


 まあそんな事はいいとして。


「期末テストも終わった事だし、ちょっとデートしようぜ」


 また文字を追い始めていた相川は、顔を上げると俺を見た。



「んっ――えっ?」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 軽量化はもう慣れですね。書いていて思いました。ただ数をこなして、覚えていくのみ。まだまだぎこちなく感じている部分はありますが……。5パターン+2話も書いてみれば、ちょっとはましになってきた気がします。疲れた。


 まだ第4回カクヨムコンまで時間はありますが、こんな感じに書き始めようと思います。『迷妄終末ロックンロール』も書きたいのですがー……。暫く不定期更新という事で。ある程度書いてから、纏めて更新する形になると思います。多分。



 では今回は、この辺で!




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