作業の方法を変えて書いてみました。


 どうもこんばんは。木元です。


 私はいつも、料金が無料なのと、Wordみたいにいちいち上書き保存をしなくても自動で保存してくれるという理由から、Googleドキュメントで小説を書き、Googleドライブでデータ管理をしていまして、一気に一章分程書き溜めてから、各サイトに公開していくという方法を主に取っています。ストーリー展開を章ごとに捉えて書いているので、言い換えると一話ごとには考えて書いてないんですね。公開する際は、一話ごとの文字数を2,000文字ぐらいとして、いつも適当に切ってます。なん、です、が。


 web小説と言えば、一話ごとにきっちりと引きがある作品がやっぱり多いと感じまして、作業の方法を少し変えてみました。展開を章ごとに捉えるのではなくて、一話ごとに捉えて、大体2,000文字ごとに小さな引きを作って書くように。よくなったのか、悪くなったのか、別に何も変わってないのかはまるで分かりません。ので、ちょっとやり方を変えて書いてみた、第4回カクヨムコン用の小説の第2話(予定)を、まるごとぺたっと貼ってみます。文字数は2,064文字で、第1話は太刀川視点の、試行錯誤その三として読んでみて貰えれば。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あっはっは」


 静まり返った図書室に、少し大き過ぎた俺の笑い声が転がった。


 相川は目を丸くすると、不思議そうに俺を見る。


「――本当だったとしても、そんな理由の為に付き合う相川は誠実じゃないよ」


 軽く背を反らすように笑い終えた俺は、背凭れの上で頬杖を突くと、相川を見た。


「それでもし俺の誠実さが証明されたとして、相川はどうすんの?」

「チャラくなかったよって、美智みさとに報告する」

「何で美智ちゃん?」

太刀川たちかわ君に告白しようと思ってるって相談された日に、男の趣味が悪いよって言ったから、謝ろうと思って」

「あらら」


 遠回しでありながら、かなり強烈に貶されている。


 頬杖をついた右腕が、背凭れからずり落ちそうになった。


 相川は再び、本に視線を落としながら言う。


「確かに見方を変えれば、太刀川君に対しては不誠実だったね」

「美智ちゃんには誠実だからいいみたいな言い方だけど」

「友達には誠実であるべき」

「うわ俺友達じゃなかったんだー」

「何で友達だと思ってたの?」


 本から目を上げず、何の悪意も無く、それはさらりと尋ねられた。それはもう、「今日の時間割は何だっけ」ぐらいの気軽さで。


 無垢と凶器は紙一重。強烈な女子だぜ。


 流石にへこむ。


「今日は、郷土資料見ないの?」


 相川は相変わらず、本を読みながら言った。


「図書室に来る度、いつも見てるけど」


 ……話しかけてくるという事は、俺を嫌っている訳では無いらしい。さっきから声の調子がずっと平淡だし、本気で嫌っているならどこか、言葉の一つでも尖るだろう。それかはっきりと、近付くなとか話しかけるなとか言うだろうし。


 ……友達とは思っていないという事は、単なるクラスメートという意味なのだろうか?


 相川の掴めない言動に思いを巡らせていると、返事を求めるようについっと、相川の視線が本から俺に持ち上がる。ページを捲ろうとした手も止まった。


「――ああ。今日も見るつもりだぜ?」

「変わってるよね。転校生なのに、よく知らない町の歴史を知ろうとするなんて」


 相川は俺を見たまま、読み終えたページを捲る。


 俺は左耳の、シンプルなシルバーのイヤーカフを触った。


「知らないからこそだよ。いつか離れてしまうから、余計に自分がどういう土地に身を置いていたのか気になるのさ。――相川は、ずっとこの辺に住んでるんだっけ?」


 相川は再び、本を読み始めながら答える。


「今年度から越して来た太刀川君よりは、ずっと長く住んでるよ」

「へえ。じゃあ、この辺の歴史についても詳しいんだ」

「歴史って――」


 相川は、本へ下げたばかりの視線を、窓へ向けながら言った。頭を上げた拍子に長い白髪はくはつが揺れて、ふわっと紅茶の匂いがする。確かこの地域では、栽培されていない種の匂いだった。


「どこも、同じだと思うけれど」


 ページから離れた相川の左手が、すうっと窓の外を指した。


 ここは、四階建て校舎の三階。眼下には雪で真っ白に染まったグラウンドと町並みが、遠くで凍り付く海の向こうまで、見渡せるようになっている。


「太刀川君が来たのは、町の向こうのあの港から」


 航路を確保する為砕かれた氷が、岩のように突き出している海へ、その細い指を向けた相川は言う。


 昼頃には止んでいたのに、またちらちらと降り始めた粉雪の向こうを、じっと見据えていた。


「今日は七月十日。太刀川君がこの学校に編入して来たのは、四月の頭。その間も町は毎日この景色で、それは太刀川君がやって来ようと来まいと、変わらなかった。多分世界中、どこを巡っても、皆こんな景色」

「そうだったなあ」


 俺は、それまで転々として来た地域に思いを馳せながら、窓の外を眺める。


 飽きるぐらいに、どこもかしこも真っ白だった。毎日降り止まない雪に埋もれて、全てが冷たく黙り込んでいく。


「でもこの地域は、農業が盛んだよな。ナスにトマトに、ほうれん草。トウモロコシにスイカで、白菜キャベツ。畑を持ってる人が沢山いる。雪の中なのに栽培出来るだなんて、ちょっと不思議な気分だけれど」


 僅かに相川の肩が、ぴくりと揺れた気がした。


 窓の向こうへ向けていた指を下ろすと、「どうして?」と言いたげに、無表情にだけれど首を傾げてくる。


 拍子にまたさらりと白髪が揺れて、やっぱり紅茶の匂いがした。


 俺は薄い笑みを浮かべると、相川の顔を覗き込む。


「――昔は野菜や果物って、毎年ある期間ごとにしか作れなかったらしいぜ? 特殊な技術があれば今みたいに、年中好きなものを育てられたらしいけれど。戦争で一度、この世界の歴史が、白紙に戻される以前の頃なら」

「……郷土資料を漁ってるのって、もしかしてその為?」


 本当に薄くだが、初めて相川に表情が滲んだ。


 ほんの少しだけ眉間に皺を寄せ、単なる呆れなのか、不快感なのか、憎悪とも怒りとも取れるそれは曖昧な負の感情を、微かに孕んだ目で俺を見下ろす。丁度馬車にね殺された、猫か狸でも見るように。


 そして、気付いているのか、とっくに読むのをやめていた本のページを、まだ摘まんだままに続けた。



「本当にあったと思ってるの? この世界は『魔鉄まてつ戦争』とやらで大昔に、一度滅んでるなんて」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ……てーな感じになりましたが……。どうですかね。いつも通りかなあ。正直まだ、軽量化した書き方に慣れていませんで、そっちに気を取られている様が嫌なぐらいに滲んでいると作者としては見えますが……。どうなんでしょ。


 1話目も大事ですけれど、2話3話と続けて読んで貰うには、やっぱり全話に引きが必要だよなあと思いやってみました。まあまずは、硬くなっていなければ満足ですね。


 3話目(予定)も実は書けてるんですけれど、2,400文字オーバーしても引きが作れなかったので、削りつつ調整をしようと思ってます。



 では今回は、この辺で!



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