試行錯誤その二。


 どうもこんにちは。木元です。カクヨムコン用の小説、早速別バージョンの一話目を作ってみました。主人公は前回と同じ人物で、視点は一人称から三人称になってます。丸ごと貼ってみますね。


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 みりっと、少女の眉間に小さく皺が寄った。


 彼女の正面に立つ、紺のカーディガンに黒のブレザーを着込んだ女子生徒は、拝むように両手を合わせると頭を下げる。拍子にさらっと、鎖骨辺りまで伸ばした赤毛が肩から落ちた。


「お願い真冬まふゆ! 今日の委員会の仕事代わって!」

「…………」

「今日はどぉーしても外せない用があるんだ! 要領のいい真冬なら、図書委員の仕事なんて余裕でしょ!?」

「…………」

「えっ、つかさっきから無言なんだけれど、話聞い――」


 真冬と呼ばれた少女は、無言のまま右手を上げると、親指で女子生徒のつむじをぎゅっと押し込む。


「あだだだだだだだ!?」

「やだ。じゃあね」


 女子生徒と同じ制服を纏った真冬は右手を下ろすと、短いスカートを揺らしながら背を向けた。


 つむじを押し込まれた女子生徒は頭を抱えると、立ち去る少女の足音にはっとして顔を上げる。視線が廊下の床から持ち上がった事により、見えなくなっていた真冬の姿が映った。へそ辺りまで伸ばした味の無い白髪はくはつが、黒いスカートと揺れて去って行く。


「だー待って待って待って待って!」


 女子生徒は咄嗟に踏み込むと、真冬の左腕を掴んだ。


 ぴしりと左腕を伸ばされた真冬は、立ち止まると振り返る。透けるような肌と灰色の瞳が特徴的な、儚い印象の整った顔立ちだった。嫌そうに少し眉を曲げ、女子生徒を見下ろしている。表情が乏しい性分なのか、余り感情が読み取りやすいとは言えない。艶の無い白髪と、色素が少ないという身体的特徴も相俟あいまって、周囲からは掴み所の無い美人だと、高嶺の花のように距離を置かれていた。


 だが女子生徒は慣れているのか、めげずに真冬へ訴える。


「ジュース奢るから! 紙パックとかのケチなやつじゃなくて! 160円のペットボトルで紅茶! どうよ!」

「……高が160円で人を買収しようとはいい度胸だ……」


 真冬は言いながら前を向くと、女子生徒を振り払おうと左腕に力を込める。


 だが女子生徒は負けるものかと、両腕で真冬の左腕を掴んだ。


「ぐっ……! なら、パンも付けよう! 町の中心の、パン屋さん……! あんドーナツ、好きでしょ!?」

「甘いものを食べると、しょっぱいものが欲しくなるよね」


 ぐいぐいと女子生徒を引きりながら、さらりと厚かましい事を言う真冬。


「ぬっ……! じゃあ、総菜パンも付けようじゃないか!」


 女子生徒は何とか真冬を引き止めようと、更なる提案を示しながら力んだ。だが相変わらず、散歩に行きたくない犬のように引き摺られる様は変わらない。


 何という馬鹿力。そう女子生徒が思った時だった。真冬は振り返ると真意の読めない、無に近い表情で彼女に尋ねる。


「……ていうか、サボって何しに行こうとしてるの? 摩耶まや

高雄たかおとデートぉおおお!」


 昼休みで賑わう廊下に、摩耶まやと呼ばれた女子生徒の声が響いた。


 途端に、行き交う同級生達は摩耶に目を向ける。一部の女子生徒はにやにやと立ち止まると摩耶を見ながら、「相変わらずラブラブね」。「外の雪が溶けちゃいそうだわ」などと、高速で冷やかしの言葉を並べ始めた。叫んでから周囲の目に気付いた摩耶は「んがっ」と声を上げると、耳まで真っ赤になる。


 そしていつの間にか、引き摺るのをやめていた真冬と目が合った。ふっと、それは馬鹿にしたような――。薄い嘲笑を投げられる。


「貴様ァ!」


 はかったなと赤いリボンタイをぐしゃぐしゃする勢いで、摩耶は真冬の胸倉むなぐらを引っ掴んだ。


 暴力に訴えられるのは御免だと、真冬はすぐに無表情になると、降参するように両手を上げる。その無表情が今は、異様に腹立たしく映ると摩耶は睨んだ。


「……そういうのはもうちょっと、早めに言って貰わないと。暇人ひまじんにも予定がある」

「暇人に予定は無いでしょ! つかそれだけ要求しといて空いてないの今日!?」

「空いてるよ」

「空いてるんかい!」

「もうがばがばに空きまくってて、一人放課後で、フライング天体観測会を催そうとしてた所だった」

「寂しいっていうか突っ込み所が多いな! ていうか、仮に夜に行った所で……」


 摩耶は真冬から両手を離すと、窓の外を見た。


 彼女達がいるのは校舎の三階で、眼下には積もった雪で真っ白になった、グランドが広がっている。グラウンドの脇に植えられた木々も、門の向こうに広がる町並みも、全てがこんもりとした白に染まっていて、空では重たそうな雪雲が厚く垂れ込み、ちらちらと粉雪を零していた。


 こんな景色が少なくとも、彼女達が生まれた頃から、毎日続いているらしい。


「……こんな空じゃ、何にも見えないよ」


 摩耶は窓の外を見たまま、ぽつりと言った。


「雲は見えるよ」


 ぐしゃぐしゃにされたリボンタイを整えながら、真冬は言う。


 摩耶は真冬に視線を戻すと、眉を曲げた。


「でもその『天体観測テンタイカンソク』って、ホシ……とか、ツキ? っていうのを、見る為の行為なんでしょ? 雲の向こうにあるらしい、夜になるとぴかぴか光るっていう。ていうかそんなの、本当にあるのかな? 太陽タイヨウっていうのもあるらしいけれど、誰も見た事無いし」

「……少なくとも、大人達は誰も知らないって」

「だっておとぎ話の世界じゃん! 蝋燭ろうそくがある訳でも無いのに、空が光るなんて!」


 そう摩耶は悪意無く、からからと笑う。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 こっちは2,103文字になりました。量としては、苦にならない筈。こっちの方がいいのかどうかは、さっぱり分からん。


 作者としては、どっちでもいいです。やっぱりいきなりシリアスな感じより、緩い感じの方が読みやすいんでしょうかねえ? んなもん好みやんけーと言われたら、まあそうなんですけれど。うーん……。


 プロットの大枠は変わってないんです。一人称視点を三人称視点にしたぐらいで、登場人物の数や性格はそのまんまですし、どういう始まり方をするかの違いであって、シリアスなアクションものという中身もおんなじです。もう一パターン、書いて、みる、とか……? どれも真剣に書いてますから、どれで始まってもいいんですけれど。


 まあこんな感じになりました。もうちょっと考えてみます。



 では今回は、この辺で!



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