試行錯誤をしてみます。


 どうもー。おはようございます。木元です。昨日『鬼討』を最終話まで公開して、やり切った感に満ちております。ちょっと燃え尽きたように、ぼけーっとしてしまっていましたが……。第4回カクヨムコンに向けて、このエッセイ上であれこれ試してみようかなと思いまして。


 読みやすさって何だろうかと思いつつ、語り口を柔らかめに変えて書いてみた、カクヨムコン用の一話目があるんですけれど……。ちょっとここに、丸ごと貼ってみますね。


 カクヨムコン用(タイトル未定)は以前書いていたように、『被検者番号3OE:夢か現の葬送行進曲ヒューネラルマーチ』を前日譚としながら、新たに独立した内容になっています。いきなりカクヨムコン用から読んでも、伝わるようになってます。



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 噂好きなんだな。皆。


 港に新しい人が来たとか、誰かが魔法を失敗したとか。誰が好きで、何が嫌い。明日の天気は何だろう。手紙の返事は、来るのかな。


 ぞっとする程、平和的。


 道行く人達の声を、耳に流しながら町を行く。


 バスも、電車も、止まったきり。こんな大雪の中じゃしょうがない。地面なんてとっくに見えなくなって、積もって積もって、積もった雪に、固く隠され黙ってる。その上をまだ、柔らかい雪が覆って、止まったきりの鉄達を、白く塗り潰そうと空を舞っていた。


 戦の後に降る、灰のよう。


 彼は私を、許してくれるだろうか。


「これは興味深い……。ここまで露わになっている遺跡を見るのは、初めてだ」


 変な人。


 確かに一両しかない電車なんて、よっぽどの田舎じゃないと見れないけれど。


 何とか埋もれずに、ぽつりと立っていた一両編成の車両の前で、言葉通りそれは興味深そうに、おじさんが立っていた。こちらには背を向けているので、顔は分からない。でも、本当に興味深そう。ただの電車なのに。隣にも、背格好から男の人がいる。揃って分厚いコートと帽子に身を包み、リュックを背負っているその様子は、探検家みたいだった。


 二人が身に付けているものは全て、ここじゃ見失ってしまいそうな、白色をしている。おじさんの隣の人は、ポケットが沢山ついたウエストポーチを提げていて、そのデザインがちょっとかっこいい。


 それまで風の無かった空が、急に不機嫌になったように風を纏う。


 ふらふらと、飢えた人の足取りのように舞っていた雪が、横から叩き付けるような吹雪に変わった。ただでさえ冷たかった空気が、鋭い刃物のように行き交い始める。


 これは辛い。何も無いと説明放棄してもいいぐらいがらんとした雪原だけれど、慌てて側で枯れ果てていた、太い針葉樹の影に隠れた。ちびな私ならその幹が、すっぽりと身体を隠してくれる。樹皮にはカビみたいに、丸裸な枝先までぴっちりと雪が貼り付いていて、白い木が立っているみたいだった。


「吹雪か……!」


 あっちも困っているらしい。


 ちょっと邪魔臭そうに漏らす、おじさんの声が聞こえる。一緒にいるもう一人の男の人は、何も言わない。向こうは吹雪を凌げるものが、電車ぐらいしか無いから、すぐにそちらへ向かうだろう。


 吹雪を凌ごうと、お世話になり始めたばかりの針葉樹がぐらりと揺れた。激しい吹雪に紛れて、変な衝撃が一筋走る。吹雪の流れに、従うように横へ真っ直ぐ。


 それはほんの一瞬の違和感だけれど、確かにその存在を、私が陰にしていた針葉樹の幹を、お腹の辺りから両断するという爪跡で世に残した。私は軽々と、幹と一緒に吹き飛ばされる。


「――田渕さんはそのまま隠れといて下さい。動いちゃ駄目ですよ」


 吹雪の奥、電車の辺りから、明るそうな男の子の声がした。子供っぽさは殆ど抜けて来てるから、私と同じ、十代後半ぐらいかな。


 すぐにへばりつくように、四つん這いで地面にしがみついた私の頭上を、電柱よりもずっと太かった針葉樹の幹が、荒々しく空を断ちながら飛んでいく。


「な、何だ? 動物か? 盗賊か?」


 少しさっきより遠い位置から、おじさんの声がした。電車の影に向かったのかな。でも声の通り方から、身体はこっちを向いている。


「はは。いやあ流石に動物相手にここまではしませんよ。盗賊相手ならまあありですけれど」


 吹雪が途切れたのは、木が切られた一瞬だけ。


 今もびゅうびゅうと吹き荒れて、視界は悪くてしょうがない。


 男の子は少しだけ真面目な調子になって、ほんのひとつまみの殺意が滲んだ声で言う。


「――多分あの、例の魔法使いです。死にたくなかったら、下がってて下さいね」


 それは君達が勝手に言ってるだけ。

 

 私は立つのがめんどくさくて、四つん這いのまま、両手両足で雪を蹴る。


 いい感じのスタートだった。前のめりに、軽く地面から浮く格好で飛び出すと、足で着地して走り出す。


 吹雪はまだやまない。


 走り出してすぐに目の前から、重そうな、鈍い銀色の塊が飛んで来た。頭の上から叩き割るように、太い縦の一閃となって落ちて来る。


 何で出来てるんだろう? 考えながら左に避けた。


 でも、その塊の重さまでは考えていなくて、表面の柔らかい雪は勿論、踏み締められて固くなった雪、その奥の積もって空気が抜けて、更に固くなって氷と化した層まで叩き割る勢いに、割られた雪と一緒に飛ばされる。


 今日はよく飛ぶな。


 まあそれも一瞬。


 すぐに飛ばされた先で着地して、地を叩き割り、突き刺さったそれを見た。


 銀色なのは、刃先だけ。そこよりもっと重そうな黒色をした、鉄の塊みたいな大きく分厚い剣だった。私より大きいし、あのおじさんよりもまだ大きい。二メートルぐらいあるのかも。幅も私の身体よりずっと広くて、後ろに回ったら隠れられる。剣先が四角くなっていて、大きなギロチンみたいだった。身は僅かに反りを持ち、刃は片方にだけ付いている。


「その闇色の外套に、黒い西洋甲冑……。随分と小柄ですし、洋服が混ざらない甲冑フル装備の方は初めて見ましたけれど、あなた、例の騎士さんですね」



 その重そうな大剣を片手で引き上げながら、男の子は言った。



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 どうですかねえ? 文字数は2,076文字でして、そこまで負担になる量ではないかなと思ってるんですが。地の文が多いでしょうか? やっぱり硬い? んん……。迷子になりそうです。アクションじゃなくて、もっと会話文の多い内容に書き換えるとか……。大事ですもんね。一話目って。私はアクションから入る流れが好きなんですけれど、やっぱり会話劇の方がとっつきやすい……? ――思い切ってプロットを大きく組み替えて、会話劇から始まる一話目も書いてみましょうか。


 ちょっとこれからやってみます。



 では今回は、この辺で!



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