知るとはある種地獄的。


 最終選考で落選しました。応募作品数は確か七百ちょっと。その中の凡そ十作に選ばれるというだけでそりゃ凄いと思うんですけれど、残念ながら特別賞とかにも引っ掛からず。いや、凄いんですけどね。自分では凄いって思ってます。まさか自分が、プロの一歩手前まで来れたなんて。中間発表に残れた時点で、夢みたいだって思いました。

 「負けたのか」って結果を確認した瞬間は、何とも言えない脱力感に襲われましたけれど、でも実感していく内に、いやこれは、何かとんでもない事を成し遂げたのではないかと、思ったものです。超嬉しかったですしね。悔しさより喜びの方が、それは大きかったです。「初挑戦で最終選考落ちってやばくね!?」って、内心はしゃいだものでした。応募したその作品はコンテスト直後に、カクヨムさんでいう所の特集にも取り上げられ、ホームでの知名度は、ガーンと上がったものでした。それも夢みたいでしたねえ……。あの超有名ユーザーさんみたいに、私の小説が紹介されてるって。

 もっと書こうって、思いました。少なくとも私、小説書く事には向いてるみたいし、ちょっとは面白いものも作れるみたいだからって。大きな自信に、なったんですかね。去年の六月の事でした。


 それでですね、今後も何か、参加出来そうなコンテストがあったら、やってみたいなあって思うようになったんです。その六月の最終選考が、まぐれじゃないと思いたいのもあるんですが。

 で、ホームでのコンテストをマメにチェックするようになるんですけれど、募集されるジャンルによっては、自分が参加するのは厳しいかなってコンテストってあるじゃないですか。自分が書いてるジャンルと全く噛み合わないとか、好きじゃないジャンルとか。

 私が向いてるのは、張り詰めた空気感でのバトルファンタジーかなと思ってまして。書いてるタイトルを見てみると、意図せずそういう内容ばかり作ってたものですから。

 好きじゃない、向いてないのは、日常の中で起きる恋愛とかヒューマンドラマ、あと軽すぎて読み応えが無いのと、主なターゲットが十代二十代前半を想定されているという意味で、生々しい人生の苦難を全くと言っていい程感じない甘さが苦手なライトノベル。江戸川乱歩読んでで昭和っぽい硬い文章書いてる奴ですから、まあラノベと相性悪いのは当然かなって思ってるんですけれど。最近読むようになってきたんですけどね。恋愛ものとかヒューマンドラマも。勉強したいし。つかラノベって、読者に夢を与えたり、作品の中で読者の願望を叶えさせるジャンルですから、人生の辛さとか暗いリアルなんか、書いちゃ駄目だと思うんですけどね。それはラノベと言うか、エンタメ小説に入るんだと思います。薄給だし生活の為に嫌々やってただけで、本当は子供なんて嫌いって、ミッキーが退職して逃げたなんて話を、子供の前でしちゃいけないように。そういう事はそういうジャンルでしなさい! これも一体どんな例えか……。誰にも明かされてないのに物心ついた時から、サンタさんを信じていなかった私には、ちょっと夢溢れ過ぎて苦手です。「家の人じゃないのに勝手に家に入って来るなんて変」って。――嫌なガキ!!


 とまあそんな風にですね、自分でも参加出来るジャンルのコンテストだけを見てみると、かなり限定される事に気付いたんです。でもそんなの、待ってられないなとなって。小説を投稿出来るサイトって、他にもあるって聞いた事あるし、覗いてみようかなとネットの海に漕ぎ出しました。それまで好きに書いていただけの小説なんですけれど、こうして挑戦してみるのも楽しいんだなと、知ってしまって。

 何でそうネガティブな表現すんのって、やっぱり六月のあれはまぐれなんじゃないだろうかと今もどこかで思ってるのと、私超負けず嫌いなんですね。もう配慮しないで書いてしまうと、好きでやってる事に誰にも負けたくないんですよ。自分より上手な人がどれだけいようと。そんなの、勝つまで腕を磨けばいい話ですし。まだ大して長くない人生でありますが、結局そうやって一番になって来た人生でありまして……。

 音楽の成績も、美術も成績も、クラスじゃ一番。美術なんて毎年と言っていい程市の絵画コンクールに展示される作品に選出され、選ばれるのが普通だと思っていたぐらいでした。嫌な小学生ですね。部活、委員会ではまず部長、委員長やってましたし、中学生は趣味変わって特にどこにも属さないのんびりした生活を送っていましたが、高校生になると友人に誘われ軽音部。あの頃はもう本当に色々ありましたが……。バンドマンだった父の影響で、楽器のセンスあったんですかね。技術力のある生意気な後輩として、三年生で部長になるまで上の奴とは喧嘩しっ放しの、「文句あんなら私より上手く弾いてみて下さいよ」のデスマッチ状態で、まあ波乱。下手なくせに先輩だからか偉ッそうなんすよね……。まあ上手くとも後輩なんだからそれなりの態度しなさいって話でもあったんですけれど、学生の間に尖れるだけ尖っとこうと思いまして。敬語使ってんのに無礼って、よく言われたものでした。……でも本当、何で先に始めといてあんな簡単な曲も弾けな


 そんな奴がですよ? 書籍化賭けてコンテストって。いや絶対楽しいけれど、絶対疲れそう……って、思ったんです。

 大学の部活って、大抵お遊びのままごとサークルじゃないですか(私の通ってた大学での話です)。飲み会とか合コンが目的の(これも私が知る限りでの話です)。だから大学じゃ、大好きだったバンド、やらなくて。やれなくてが、気持ちとしては近いですかね。ぬるいんすよどいつもこいつも。上級生の音聴いても高校生のウザかった上級生達の方がよっぽど魂籠った音鳴らしてたのに、何だこいつら気合いの足りねえ。腑抜けばっかりに見えて、大学でも続けようと思って入ったんですけれど、馬鹿馬鹿しくて辞めたんです。ここじゃあ、焼けるような音が聞こえないと。メンバー探そうにも、揃いも揃ってなよなよしてて。


 そんな風にですね。暫く生き甲斐を失ってた所に偶然、ほんの気紛れで登録してみた小説投稿サイトで、何かプロ一歩手前まで来れて。「ふーんそうなんだ」で、放っておく訳が無いとは分かっていました。随分場所は変わったが、やっと面白そうなステージが見つかったじゃねえかと、エレキベースからパソコンに持ち替えた訳です。アンプもマイクも、シールドも片付けて。足元は多分、高校三年生の文化祭でライブをやった体育館の舞台から、きっと変わってないと思うんですけれど。


 色んな投稿サイトを探して、書きやすさとかコンテストとかの、機能や特徴などを見て回った内に、ここにしようと、カクヨムさんに決めました。





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