二股ユーザーになった訳。


 やめとけって思ったんです。強烈に。


 その作家さんは、カクヨムさんで言う所の特集作品に、何度も何作品も選ばれているような超有名ユーザーで、ホームでは誰しも一度は目にした事があるんじゃないかってぐらい、それはもうビッグネームなんです。そのジャンルではその作家さんが、不動の王座に君臨し続けていると言ってもいい。そのジャンルで面白いって言ったらもうこの人だなって、カクヨムさんで言う所のフォローユーザーからも絶対視されてるぐらい、凄い人なんです。その人が書いたものを読めば、圧倒されます。少なくとも自分とは、全く違うセンスを持って生きてる人だと思い知りました。書いてるジャンルがそもそも懸け離れているからというのも大いにあると思うんですけれど、いやでも、プロの作家が書いた本を読んでも、ここまでの衝撃を受けた人はいなかったなって、心の底から思ったものです。ホームで初めて、フォローをしたユーザーさんでもありました。


 その方が偶然、あるコンテストに参加しているのを知ったんです。本当に偶然。その方のページで、たまたまそういう内容のコメントを読んだからだと思います。自分は参加する気なんて全く無ければ他人事ひとごとだと思っていましたから、そのコンテストの参加作品をチェックするという事はしていませんでした。コンテストに参加するなんて凄いなあと、漠然と参加者さん達へ思っていたのが精々でしたね。いつも通りに好きな話を、好きなペースで書いていました。

 でも何でその時そう思ったのか、今でもよく分からないんですけれど、自分もやってみようかなと思ったんです。


 書いてる内容のレベルが全く違うやろうがぁ……!! って、そりゃあ思ったんですよその直後に。何考えとんねんお前て。またプルーンかお前この野郎って。いやもうそんなん、無理に決まってんやんて。マジで頭が高いわこの馬鹿たれがって、そりゃあもう思ったんですよ。

 だってそんなん、賞なんて、本当に上手い人にしか獲れる訳無いじゃんって、思いました。そのユーザーさんでさえ、落ちてるようなものなのに。

 その方以前から賞に挑戦していまして、多分狙っているのは書籍化なんですかね。出版はされないけれど賞金と、プロからの講評が貰えるよって短編を対象とした賞なら、獲ってるんですよ。でも、書籍化の賞にはまだ、届いてなくて。そんな凄い人が何度もやってるのに叶えられてないようなものに、自分が挑んでどうにかなる訳が無いだろうって。

 でもマイページに戻って、悩んでる自分がいたんですよ。どうしようかなって。何でか分からないんですけれど、参加させるタイトル選ぼうとしてて。通る訳無いだろうって思ってるくせにですよ? でも、落選したからってそのタイトルが削除される訳でも無いし、きっと落ち込むだろうけれど、誰が困る訳でもないじゃん。落ちるだけで。誰が挑戦してもいいし、誰が落ちても、誰も困りはしないんだから。誰でも何度でも、やっていいんだし。

 って、気付いたら応募してしました。


 うわあぁああ送っちゃったああって、すぐにパニックになるんですけどね。アホかてめえは。

 もう気が気じゃないんですよ。ホームは編集部の審査のみで読者選考はありませんから、結果が出るまでパソコンに貼り付いていなきゃいけない訳では無いんです。無いんですけれど中間発表ですら二ヶ月ぐらい先なのにもうどうしようって慌ててて。その不安を誤魔化す為に、一心不乱に他の小説書いてました。書いてると忘れられるので。……書いてないと忘れられないんですけどね。気分転換っつって他の事したら、余計に気になってしまうそれは小心者というか神経質なんですよ。昼寝しても音楽聴いても、もう全然寝付けないわ何も耳に入って来ないわ。そんなに不安になるなら参加取り消せばいいのに、一度決めた事を曲げるのは嫌だって、昔っからの意地が働いて。

 それで、何が驚いたって、震える指でパソコン操作して中間発表の画面開いてみたら、私の小説のタイトルがあったんです。その、有名なユーザーさんは、落ちていました。

 声が出ませんでしたよその時は……。何が起きてるのかもちゃんと分かってたか怪しくて、多分夢かと思ったんでしょうね。何を撮りたいのかよく分からない大量のスクリーンショットが、今もファイルに残ってます。余りに連写したのかウザかったので、本当に的外れなものは消しましたが。何でデスクトップのキレーな風景撮ってんだか。

 まあ下手に残ってしまった分不安は加速して、最終選考まで情緒不安定な日々を過ごす事となったんですけどね。また誤魔化す為に、沢山小説書いて。とんでもなく捗るし、好きな事をやってるから、それ自体は苦痛でも何でもありませんでしたし、楽しかったです。ただやめてしまうと、恐ろしいだけで。


 今ここでこうして、素人の立場で小説を書いている時点で、その結果は明白なんですけれど。

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