第3話
「なぁ、どうせまだ腹に空きあるだろ?たまには家で飯食ってけよ。うちの親父ともご無沙汰だろ?」
幼馴染みでもあるエルの誘いにリコの目は輝きはしゃいだ。
「いいのか!?ラーゴのおっちゃん相変わらずなんだろうなぁ。会いたい!むしろ泊まらせてくれ!!」
先ほどまで命の取り合いをしていた者だと誰が気づくであろう。側からは細身の可愛い女の子が彼氏に甘えているように見てとれる。
「…お前…遂に宿まで追われたんか…。」
呆れ顔のエルを他所目にリコの表情は明るかった。
2人がいるのはKATZE側の領域であり、危険区域の13区からは直線距離で100km程手前に位置する11地区。オリジナルが住む居住区だが、貧困層が多い地域でもあり、中央都市のような華やいだ雰囲気はなく、建物も古めかしい所がある。異種らは買い物にでも出かけるかのごとく入り込んで来る。
行方不明者が出たとこらで気にかけれる人の方が少ないのがこの地区だ。
身の軽いリコは父同様に対KATZEとの戦術に長けていた為、ナイン入隊当初からこの辺りの担当を任されている。
「日の沈む前に店をでよう。それにしてもお前はよく食うな。そのうち俺の親父みたいに横に伸びても俺のせいだけにはするなよ。」
そう言うとエルは伝票を素早く手にとり、リコの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ご馳走様でした!」大きな声で一礼した後、リコは舌を出した顔をエルの方に向け近づけた。
店をあとにすると日は隠れ、シトシトと雨が降り始めていた。二人は足早に駅へと急ぐ。理由は明らかである。闇は目が効く異種の動きが活発になるからだ。彼らは闇夜を選ばず日中狩を行うことが多い。遊び感覚なのか、彼らの間で仕事として成り立っているからなのかはオリジナルの立場からは考え辛い。ただ、異種による狩は無作為に行なわれているわけではない。オリジナルは異種にとって食料である前に、自らの延命に繋げる為の研究材料なのである。オリジナルの極端な数の減少など、どの種族も望んではいないのだ。長い間地区が無用に犯されないのは、彼らの目的でもあり念願でもある延命の研究が実を結んでいないことを示していた。
交戦能力の高いナインではあるが、夜は政府とは別にレディが構成した組織
彼らナインは選ばれると同時に、心臓に近いところにGPSを埋め込まれる。非人道的な行いなようにも思えるが、手足や頭は切り取られる恐れがある為、苦肉の作なのである。行動範囲は政府の管理下に置かれるが、武器弾薬が好きなだけ手に入り多額の給料が発生する分、政府の犬は悪い条件ではない。
政府にとっても大事な戦力であるがゆえ手厚い労働条件を提示しているのであった。拒んだところで秀でた才が異種に狙われることに変わりない為、ナインは必然的に構成されていた。
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