第14話 魔界 1

痔の呼び出したゲートをくぐり

魔界に到着した凌、ハル、痔。


いかなる試練が待ち受けているのでしょうか。


「なぁボラギ・ノール。魔界に着いたはいいんだけど俺らは何を解決すればいいんだ?

そういえばまだ何も聞いてないんだけど。」

凌が問いかけます。


「そうでしたね。ではざっくりと説明させて頂きます。」


ゴクリ…

魔族の巣窟で一体どんな恐ろしい無理難題を押し付けられることやら。

凌は正直気が気ではありません。


ボラギ・ノールが重い口を開きます。

「実は…

魔族同士の対立が起きてしまい、それを解決して頂きたく思っております。」


はい!でたー!

有りがちな展開ですよ。

魔族同士の対立を解決とかベタな展開かよ!お決まりかよ!

だいたい人間に解決出来るわけないだろ痔め!


凌の心の声は形にならずに消えていきました。


「んで、対立してる魔族ってのはなんなんだ?詳しく教えてくれ。」


「はい。まず一方が、悪魔斎藤率いるハイパー・デス・デビル軍

そしてもう一方が、邪竜中山率いるシンガポール・シンドローム・トロピカル中山軍です。」


「チーム名だせーなおい。

てかそいつら確実に日本人だろ。」

堪らず凌がツッコミます。


「はい?人間界にもこのような名前の方がおられるのですか?」


「日本にたくさんいるわ。んで、対立してしまった原因はなんなんだ?」


ボラギ・ノールが更に深刻な顔つきになります。


そうか、ふざけたチーム名だったけど内容の方はさぞかし深刻なんだろうな…


ゴクリ…

再び凌が気を引き締めます。



「原因は…

先日魔界都市で行われた魔界競技です。」


「まっ、魔界競技…

それはコロシアム的な?

まさか…殺し合いじゃ…」


「いいえ、ウノ、ドス、チェケラ、3つの手の形で勝敗を決める戦いにございます。

競技中不正があったのではとのことで、今回の対立は疑いをかけた側、かけられた側での地域ぐるみでの争いとなりました。」



「地域ぐるみってなんだよ奉仕活動かよ。てか、その競技はあれだな。多分じゃんけんだな。

だいたい最後のチェケラってなんだ?チョキか?チョキなのか?」


話をまとめると

どうやら先日行われたチーム対向じゃんけん大会で不正があったという疑惑が浮上し、争いが始まったとのこと。


くっそしょうもないな。

凌は思いました。


解決のためにまずはどちらかに接触し、話を聞くのが妥当だろうと思った凌は

悪魔である斎藤に会いに行くことにしました。


何故斎藤を選んだのか…


理由は明白です。

邪竜とか危なそうだからです☆



さて、斎藤に会いに行くことになった一行は

斎藤の住む森へと向かっています。


「凌さん、なんだかいかにも冒険!という感じがしますね!

やはり道中、宝箱があったり敵に遭遇したりするのでしょうか!」


ハルがあからさまなフラグを立てます。


「いいかいハル。そういうのはフラグって言うんだぜ?」


そんな会話をしているうちに森の入り口までたどり着きました。


「うわー。なんか薄暗くて入りたくないなぁ。」

凌が言います。


森は予想通り、いかにもこの先危険ですよ!と言わんばかりのオーラを放っています。

しかしながら今さら引き返す訳にもいかないのでどんどん進みます。


「あれっ!あそこにあるの宝箱じゃないの!?

確実にレアアイテム入ってる雰囲気じゃん!」

宝箱らしきものを見つけた凌はテンションが上がっています。


箱に駆け寄った凌は勢い良く開けます。


さぁ!中身はなんでしょう!




虫除けスプレーでした!


「ご親切にどうも。」 


中身を見て一言呟いた凌のテンションはあからさまに下がっています。


それでもめげずに歩いていると

大きな湖にたどり着きました。


湖の中心部に向かって木の板で作られた橋が掛けられており

橋の先には小さな祠があるのが見えます。


「きた!あの祠に"しらべる"をすると今度こそレアな武器とか見つかるやつだ!」

そう言った凌は一直線に橋を駆け抜け祠の前へ。


"しらべる"をするとやはり出てきました!

今度こそ武器のようです!


「おーい!ボラギ・ノール!

武器があったからちょっと見に来ててくれ!

危ないからハルはそこで待ってな!」


祠の前までやって来た痔は驚いて言います。

「こっ…これは!竜王の剣(つるぎ)です!」


「竜王の剣!?超強いやつじゃん!

竜王の剣ってことは、持ったら呪いがかかるみたいなことはないよな?」


「はい。呪いの作用で攻撃力を上げるタイプの武器ではないはずです。」

痔に確認をとって安心した凌は剣を持ち上げます。


「おぉ‼……おぉ?

なんか…軽くね?なんか…思ったよりチープなんですが…」


疑惑の目で竜王の剣を見る凌に痔が言います。

「それは間違いなく竜王の剣でございます。しかしながら、今魔界は規制が厳しく、金属では危ないということで

現在武器はプラスチック制になっております。」


「んだよそれ。いちいちツッコミ待ちなとこあるよな魔界って。

まぁいいや。武器には違いないんだ。有り難くもらっていくか。」


そう言って凌は振り返り

ハルの待つ畔へ戻ります。



橋の中腹まで差し掛かった所で湖から勢いよく水しぶきがあがります!


「なっ、なんだ!?」

訳も分からず凌はその場に倒れ込みます。


水しぶきと共に現れたのは9つの頭を持つ巨大な蛇!

唖然として言葉も出てこない凌と痔。


少しの沈黙の後、巨大な蛇が喋り出します!




「…それ、わしのやねん。…」



凌「…………」

痔「…………」

ハル「………」


「えっ?」

と凌が一言。



「…せやから、それ、わしのやねん。…」



「えっ、そういう感じで喋るの?」

宝である武器を守っていた湖の主的なポジションであろうその蛇は

そんなに強くはなさそうな口調で喋ります。


これ、勝てるんじゃね?と思った凌は自身の中2病をフルに活かして

即興で必殺技を考えます。


竜王の剣…竜王の剣…

きた!


「我が剣に宿りし竜の魂。頂点に君臨せし竜王の力を以て、眼前に立ちはだかる全てを壊せ。

竜王の咆哮(ドラゴンズ・ロアー)!」



プシュッ。


剣の先からライター程の火がでました。


「って、こんなもんかいっ‼」

凌のツッコミの方が勢いがあります。



グワーーーーーー‼‼

(巨大な蛇消滅)



「いや、殺られるんかい‼

てか、火、届いてなかったよね?

どこ?今どこに当たったの?」



死人に口無しです。

消滅してしまった蛇にはもう聞けません。

しかし、クリーンヒットだったようです。


見事巨大な蛇を倒した凌は

無事竜王の剣を手にいれ、一行は湖を後にします。



「魔界…やはり恐ろしい場所ですね…

…」

ハルが言います。


「まぁある意味恐ろしいよ。ツッコミが絶えなくて。

んでボラギ・ノール。斎藤の家はまだなのか?」



「ええ、湖を越えたのでもうそろそろ着くと思うのですが。」


斎藤の家までの道のりは意外と楽勝だったな。

今となってはそんなことも言えちゃう凌です。


そんな凌の前に小さなゴブリンが現れました!


「おっと!また敵か!

ハハッ!ヤマタノオロチ的なヤツを倒した今の俺には小さなゴブリンなんぞ恐るるに足らんわ!

喰らえ‼竜王の咆哮(ドラゴンズ・ロアー)!」



プシュッ。



グワーーーーーー‼

(小ゴブリン消滅)


「うーん!爽快爽快!本当に当たってんのか怪しいが、やはり敵を一撃で葬るのは爽快だな!」




「今のが斎藤です。」

痔が言います。



「は?」

凌もすかさず聞き返します。



「ですから、今凌さんが倒したのが斎藤です。」



凌「…………」

ハル「………」

痔「…………」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る