第11話 新年

サタンをバイトに向かわせたまま安易な気持ちで


「まぁうまくやってるっしょ!

仮に魔方陣の効果がなくなって魔界に帰ってたら結構っべーけど、バイトは1日くらいなんとかなるか!」


位にしかぶっちゃけ思っていなかった凌。




そんな可愛そうな立ち位置だったけど

なんだか魔方陣について知っていそうなサタンに思わぬ場所で出くわした凌。


とりあえず買ったものを袋に詰めて

3人…2人と1体はスーパーの外へ。



無論質問攻めといきましょう!



Q「あれからどうしてたの?」



A「はい、あのまま凌様のバイト先に行きまして

佐久間さんと一緒に初勤務をこなしました。」




Q「その後は?てか何でエプロン姿なの?」



A「バイトが終わり佐久間さんからのお誘いで、佐久間さんのお宅にて一緒に年を越すことになりました。


ということで、佐久間さんはお部屋の片付けを、わたくしは夕飯の買い出しをという流れです。


こちらの世界では買い出しはエプロン姿がお決まり。ということを佐久間さんから伺いまして

わたくしもエプロンを装備し、スーパーへ参りました。」




Q「なんかやたらと丁寧な口調じゃない?」



A「魔界では自分よりも力のある者に対して最大の敬意を持って接するのが常識ですので。


召喚時のご無礼、お許しください。」




自分よりも力のある者…

ばっちり不意討ちだったけどね☆



それはさておき、なるほどなるほど。

別れてからのサタンのいきさつはだいたいわかりました。


次は凌の一番知りたかった魔方陣についての質問です。


まずはサタンにこちらのいきさつを伝えなければなりません。



しかし

これまでの経緯をサタンの為に一からここに記すのもやはり作者が大変になってくるので

ここは前回同様省略といきましょう。



「凌様!不思議なことに凌様のこれまでの経緯が頭の中に流れ込んでまいりました!


なるほど、それで魔方陣の事を知りたがっていらしたのですか。


召喚には慣れていらしたのでてっきりその道のお方かと…」



誉められたと思った凌はすかさず得意げに答えます。


「言っておくがサタン、俺が魔方陣の扱いに慣れているのではない。


魔方陣の方が俺に馴れ馴れしくしてきたのだ。


才能とは時に恐ろしい物よな。」




意味不明です☆

しかしすぐにこういう言い回しが思い浮かぶのはやはりさすが中2病といったところです。



凌が何言ってるかわからないので

今のセリフをスルーしてサタンが冷静に続けます。


「では、魔方陣の効果持続についてお話します。


凌様の推察通り、一辺でも欠けると魔方陣の効力は無くなり召喚された者は消える。という部分は正解です。


しかし元より魔方陣の効果持続は最長でも約20分間。


20分経てば魔方陣としての効力は損なわれます。


この場合、効力喪失と同時に召喚された者が消えるわけではありません。


この状態は言わば召喚完全成立の状態です。


わたくしとハル様の魔方陣は、召喚完全成立したのちに消えた、もしくは消されたということです。



完全に成立した召喚は、召喚時同様、退去には退去の儀式が必要となります。


つまりは、今のわたくしやハル様は儀式なくして退去は起こり得ないということです。」



取り扱い説明書の如く事細かく説明してくれたサタン。




「じゃあ夢を叶えてあげた後、儀式をすればハルはまた安らかに眠れる訳だよね?」


一応確認の為サタンにまた質問をします。



「そうなりますね。

しかし、召喚されるのが魔族であったり過去の人間であったりと種類があるように

退去の儀式にもいろいろとあります。


なにも魔方陣や詠唱などといったような形式ばった儀式ばかりではなく、精神的なものであったりと様々です。


儀式と一言で言えど、一概には言えないということは覚えておいてください。


わたくしのような魔族でしたらあらかた儀式の方法は把握しておりますが

ハル様のような人間の退去法は詳しく承知しておりません。


故に根本的な解決にはなっておりませんが

またお力になれることがあればわたくしサタン、協力させて頂きます。」



「ありがとうサタン!」


サタンの言う通り全てが解決した訳ではありませんが

かなりの収穫です。



一通りの話をした後、サタンは佐久間君の家へ

凌とハルはたくさんの荷物を抱えて家路につきます。




凌はふと思いました。

「あれ、サタンてまだ魔界に帰んなくていいのか?

てか、連絡先もなしにどうやってまた会えばいいんだ?

まぁいっか!」



ということでサタンのことはとりあえず置いておいて

年越しを楽しもう!と思った凌でした。



家に着いて、重たい荷物を下ろした二人は早速夕飯の準備を始めます。


二人と言っても料理ができない凌はほぼほぼ待機です。



見事な手際で食材たちを料理に変えていくハル。


「ハルって料理得意なんだね!」



「い…いえ!人並みですよ人並み!

それより、側で料理する姿を見られているというのもなんだか緊張しますね…」


少し照れながらハルが答えます。


どうやらまた一品完成したようですね。


「栗きんとんが出来たので、少し味見して頂けますか?ちょっと甘くし過ぎたかもしれません…

ではお口を開けてください!

はい、あーん。」



あーんしてくれるとか最高です!

なんなら、このために近くで待機してた凌です!



「あーん。

……うん!美味しい!味付けもちょうどいいよ!

あっ、ちょっと待って。

もう一口もらっていいかな。」



「えっ?もしかしてダメでしたか?

はい、あーん。」



「あーん。

……うん!やはりうまいね!」



「あっ!!凌さん、さてはもっと食べたかっただけですね!?」


「ハハッ☆」


もっと食べたかっただけだとハルは思っていますが

正解は、もっとあーんして欲しかった。です。




料理の準備が終わり

ハルの美味しい手料理を食べながら年末の特番を見て過ごす二人。


気付けば今年もあと20分程で終わります。


思えばここ二日間で本当にいろんなことがありました。


思い付きで召喚の真似事をしたらサタンを召喚してしまったり

サタンを召喚してしまったり

それに、サタンを召喚してしまったり…


まぁ意外といいやつでしたが。



そしてハルに出会ったこと。


来年はハルの言っていた

各地を巡って鮮やかな景色に触れる、つまり旅行に一緒に行きたいな

なんて思っています。


また一緒に星空を眺めたり…


そんなことを考えているうちに

あっと言う間にカウントダウン。


賑やかなテレビからは恒例の掛け声が聞こえています。


「3!2!1!

明けましておめでとうございます!」




新年を迎えると同時にハルが言います。

「凌さん、去年は…と言っても2日間でしたが、お世話になりました。

今年もよろしくお願いしますね!

私、今とても幸せですよ!

ありがとうございます。」



とても幸せだとハルが言った。

それだけでこんなに満たされてしまうとは…


凌は答えます。


「うん!今年もよろしくね!」


新しい年の始まりです。

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