第8話 魔方陣
…チュンチュン…チュンチュン…
朝になった時のお決まりの効果音と共に凌は目を覚まします。
時計の針は午前10時50分を指しています。
目を覚ますと同時に、ハルが消えていないか確認すると
ベッドには当然のようにすやすや寝息を立てるハルの姿があります。
「良かった…」
消えてしまったところでもう一度召喚したらいいんじゃないの?
サタンみたいにさ。
と、思ったそこのあなた!
凌にはまたハルを呼び出せる確証がないのです。
サタンが連続で出現したのも偶然かもしれないし
ハルを召喚できたのも偶然かもしれない。
はたまた、これらの召喚は何かしらの法則の上に成り立っていて
同じ行為を行えばまた呼び出せるという可能性もある。
どちらにせよ召喚に対する知識がない凌にとっては
消えたら再び召喚をするという行為は最早賭け事以外の何物でもない。
だからこそ凌は、もしハルが消えてしまったら…と気が気ではないのです。
よって、今日の凌のミッションは
①公園と高台の魔方陣の確認
②ハルとのウキウキ買い物デートの後、happy new year
である。
ハルがまだ起きそうにないので
起きたら暖かいコーヒーでも飲ませてあげようかと思っている凌。
凌はコーヒーに強いこだわりを持っています。
さすがオシャレです☆
今にもコーヒー豆を焙煎し始めそうな勢いで
財布を手に玄関を飛び出します!
「ガコンッ、ガコンッ」
大きな音と共にしゃがんだ凌が手にしているもの。
そう、缶コーヒーです!☆
「やっぱり朝はワ○ダモーニングショットに限るな…」
赤いパッケージの缶コーヒーを自動販売機で購入した凌は少し誇らしげです。
部屋に戻ると、丁度ハルがベッドの上で眠そうな目を擦っているところでした。
「やあ☆おはようハル!コーヒーでも飲むかい?おっと、ハルはコーヒーを知らないんだったね。ま、言うなれば?大人の飲み物?かな(ドヤ)。」
アニメのわりとウザい立ち位置の登場人物さながらの口調で凌はハルに問いかけます。
「…あ、凌さん、おはようございます。朝から元気なのですね。」
いろいろな面でスルーされた凌。
しかし、それくらいの事では落ち込んだりしない凌はやはり大人です☆
二人はコーヒーを飲みながら今日の予定を話します。
「買い物に行く前に公園と神社の先の高台に行ってもいい?魔方陣を確かめたくてさ。」
ドヤ顔でコーヒーを飲む凌がハルに訪ねます。
「良いですよ!そう言えば今魔方陣はどうなってるんでしょうね…サタンさんの件の流れでいけば、魔方陣が消えると私も消えてしまいますが…」
少し苦そうな顔でコーヒーを飲むハルが答えます。
「魔方陣について少しは知っておかないと怖いね。
あとさ、昨日は深夜で人がいなかったから着物でも良かったけど、今日からはさすがに着物は着れないね。目立っちゃうし。
とりあえず今日は俺の服で過ごしなよ。」
「そうですね…それでは服をお借りします!」
コーヒーを飲みながら今日の予定を話した後、軽く朝ごはんを済ませた二人はまず公園に向かいます。
昨晩魔方陣を書いた場所を確認すると
魔方陣は遊ぶ子供達によってすでにア○パンマンの顔に書き換えられていました。
「プッ……サタン…ごめんな…
お前の魔方陣…こんな姿になっちまって…プッ…」
半笑いの凌の呟きは
子供達のはしゃぐ声に掻き消されていきました…
「サタンさん…消えてしまったのでしょうか…」
「そうかもしれないね。とにかくもう一方の魔方陣を確認してみよう。」
二人は神社の先の高台へ向かいます。
高台に着いた二人の目に入ってきた町の景色は、夜とはまた違った良さがあります。
凌は中2シーズンにしかここに立ち寄ることがないので
来るのは専ら夕方か夜です。
なぜなら、夕暮れ時と夜の景色が一番中2心をくすぐるからです。
初めて見る昼間の高台からの景色もなかなかの物だなと思っている凌でした。
それはさておき、肝心の魔方陣はどうなっているのでしょう…
「あれっ!?」
凌が驚いて声を上げます。
そう、桜の木の下にあった魔方陣はほとんど消えていたのです。
滅多に人が訪れる場所ではないので、人に消される心配はほとんどなかったのですが
高台なだけあって風が強く、砂の上に書いた魔方陣は夜のうちにほとんど消えてしまったようです。
しかしハルは消えていません。
足で雑に魔方陣を消しただけでサタンが消えたことから
恐らくは一部分が消えるだけで魔方陣として成立せず、よって召喚されたサタンも消えた。と仮定するのが妥当です。
つまり
魔方陣が完全には消えていない、ということがハルが消えなかった理由にはならないのです。
ではなぜ…
ハルが消えていないことは凌にとってとても喜ばしいことです。
しかし
魔方陣を消す=召喚された者も消える
という法則には例外もあるということが発覚した以上
ハルの夢を叶えた後の帰し方がわからないということと同義です。
あれ?これ思ってた以上に
っべー状況なんじゃないの?
と思っている凌。
っべーよ!という顔をしている凌にハルは気を使って言いました。
「だっ、大丈夫ですよ!凌さん!きっと他にも方法がありますから、そう焦らないでください!
それはゆくゆく考えるとして、行きましょう!お買い物!」
「そっ、そうだな。まだハルと一緒にいられるんだからひとまずは良かったよな。」
二人は高台を後にし、買い物へと向かいます。
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