第4話
生きるって何だろう
唐突に頭の中に投げかけられた疑問。
何故生まれてきたか、とか。
自らが何のための存在か、とか。
ただ息をして、何となく吐いて
僕の、或いはそれぞれの日常を何となく送って。
それは本当に僕の中のただの日常に過ぎなくて毎日は儚いけれど季節は行儀良く順を追って去来していく。
季節に不相応な僕の服装のように、
僕の不釣り合いな愛の形に君は一体どんな思いでいたのだろう。
あの日のキラキラは、
もう明日死んでもいいと思えるほどの幸せな日々は、
過去の奥の奥の方に
あの日の情熱は、
あの日の体温は、
あの日のお互いの温もりは、
あの日の安堵は、
あの日の
君と僕以外もうこの世に存在していないかのような甘く溶けてしまいそうな甘美な時間は、
君の髪の匂いと頬の匂いは、
幻だったかのように今は遠く遠く追憶の中のさざ波が鮮明な映像をぼやかせてしまった。
君の残像と君からの愛への残像と、
日々を重ねるごとに薄まって揺らいで
まるでそれは“最初から存在していないもの”に恋い焦がれている子供のように、“終わり”を知らない純真な心でいつかを待っている。
サヨナラの意味を理解していない子供のように
もう来るはずのない未来(あした)に想いを馳せて死んでしまった感情を今日も奮い立たせてる。
君は知らないだろ?
自分でも笑ってしまえるほどに。
今の僕は、君の中で生きてすらいないかもしれないのに
それでも尚そんな君は僕の中で鮮やかに明確に君の記憶だけが僕の日常に溶け込めてしまっている。
それは、
僕の君への感情が恋で
君の僕への感情が愛だったことを如実に記していた証だろう。
あの日、君に愛を与えられていなかったら
あの時、君に心を開いてなかったら
あの場所で、君に出逢っていなかったら
こんな気持ちすら知らずに、
街角ですれ違って終わってたのに。
君からの愛情をどう取り扱っていいのかわからないほどに、僕は子供だった。
君を傷つけてまで僕は、僕のプライドを守った。
もっと感情をストレートに発していれば、
捻れて縺れて摩擦をおこして擦り切れてほどけて消えたりはしなかっただろう。
僕だけがあの日に取り残されて、
僕だけがあの日の君に溺れてる。
虚無になる。
くだらない
虚無になる。
君の隣にいた時のあの僕の安心感と信頼感と情熱と全身を駆け巡るような血の滾る逆流は
今はもう目を開けると跡形もなく、
夢の中でだけ存在する。
いつまでそうやって、
君は僕の中に居座るつもりなんだろう。
幻影の君は、
夢の中でだけなら未だ僕と逢瀬をしてくれる。
君のその優しさが目覚めた後の僕をまた苦しめるのに。
いつまでも汚れなき純粋な夢の中の君に、
今日の寝覚めも枕が濡れていた。
繰り返し、
周りの誰にも言わない代わりに…
もう届くことのない
君へのラブレターとしてここに書いておこう。
掃いて捨てるほどの茫漠さ 静雅 葉琉 @milky-leo-loved0716
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