第1章 第10話 白昼夢
ここはどこだろう?
おぼろげな意識のまま辺りを見渡すと、そこはどこまでも真っ白な風景の続く場所だった。
そこは今まで見たどの夢とも違う場所だった。
夢をみているのかな?
漠然とそう感じると、その現実離れした風景にも納得がいった。
いままで見てきた夢は、どれも凄惨で救いの無いものばかりだった。
辛くて苦しくて、どうして夢の中でも自分はこんなに救いがないのだろうと嘆いた物だった。
でも、ここはそんな夢とは違う気がした。
白くて、何もない、荒涼とした世界だが、そんな気がした。
もしかしたらここは自分にとって…とても…
そう思ったとき、ふと疑問が生まれた。
自分は一体誰なんだろうと…
何も思い出せなかった。
悲惨な夢の記憶があるが、自分の事については何も思い浮かばなった。
家族、友達、恋人、好きな物、嫌いな物…
自分について思い出そうと、関連する事柄を思い浮かべるが
まるで汚れ一つない真っ白なノートのように、空白でまったく何も無かった。
唯一おぼろげな記憶のある夢についても
それを見たのは本当に自分なんだろうか疑問に思った。
だが、少女はあっさりと疑問解く事をあきらめた。
自分が誰なのかは分からなかったが、そんな事はささいな事だと思った。
そう、自分が何者なのかなんて事は大した事ではない…。 では何が大事な事なんだろう?何が大事なんだろう?
そんなはっきりしない思いのまま、真っ白な風景の中をあてもなく、だが心地よい気分で彷徨った。
ああ、そうだ自分が誰だか分からないのなら、何も恐れる事は無い。
ただ、自分の望む事を見つけるために進めばいい。
今が何も失う物が無い「ゼロ」だとしたら、先に待つのは全て「プラス」な事だけだ。
そう気が付いた少女は白い世界を進んだ、先に待ち受けるであろう希望に心躍らせながら…
どこまでもどもまでも…
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