第15話 合宿1

 現在俺達は、昨晩アカリがメールで送ってきた、『夏合宿』の内容について話し合っていた。


「という訳で、夏休みは私達と、美月ちゃんも混ぜて合宿しようと思います!」


 アカリがハイテンションでそう言う、しかし合宿何ていきなりどうしたのだろう?


「てか合宿って普通部活内とかでやるもんじゃないのか?」

「何言ってるんですか風音君! 合宿というものは青春を楽しむ男女なら誰でもやっていいと言う神様が与えた風習ですよ!」

「……風習とまで言うか」


 何かアカリのキャラが壮大にブレている気がする、周りの三人も同様にアカリのテンションについていけてない様子だ。


「まぁ、合宿ってのはいいけどさ、なんでそんないきなり合宿なのアカリン?」


 首を傾げてそう問いかける南部にアカリは、


「突然したくなったんです」

「えぇ!? 合宿ってそんな突然したくなったからってするもんだっけ?」

「そう言うもんです!」


 なんだかやけに強情だな今日のアカリ、何か合宿に深い思い入れがあるのだろうか?


「真奈も合宿したいよね!」

「んー、……そんなに?」

「えぇ!!」


 真奈さんは相変わらず思った事を惜しげも無く口に出すお方のようだ。

 その横で我らが誠は、


「俺は合宿に賛成! 理由は美月ちゃんが来るから! 他に理由はない!」


 相も変わらず誠は美月の信者のようだ、良かったなクイーン、お前の知らない所で狂信者が生まれたぞ。


「じゃあ、誠は抜きで五人で行くか?」


 少し悪戯心が芽生えて俺は誠をいじる。


「酷くね風音!? なんか最近お前俺に冷たくね?」

「気のせいだ、多分」

「そこは言い切ってくれ!!」


 そんな俺と誠のやり取りに女子三人がクスクスと笑う、うんうん、俺のお笑いセンスは順調に磨かれている。

 リア充レベルがワンランク上がる音がした。


「んで、合宿って言っても一体何処でやるつもりなわけ?」


 そう、合宿をするにあたって一番大切なことは、場所である、それさえ決まっていなければいくらスケジュールを合わせたところで意味が無い。


「大丈夫! 私の親戚の別荘が借りれる見たいだから!」

「……さいですか」


 めちゃくちゃ用意がいいな、


「さっすがアカリン! やるね!」

「私は行くか分かんないけどねー」


 今気づいたんだけど俺達五人って統制感の欠片も無いよね、何か一人一人が特殊って言うか、味が濃いって言うか、

 自分で言うのも何だけど、一番マトモなのは俺な気がする。


「もー! 真奈は強制だからね! あ、風音君はこの事美月ちゃんに教えて置いてね!」

「了解です、日にちは決まってる感じ?」

「それはグルチャで話し合い!」


 やっぱり今日のアカリはテンション高いな、この暑さのせいもあって尚更アカリのテンションにもついていけないぜ。


「それじゃあ皆、解散!!」

「「「おー」」」


 やけにやる気のない『おー』だった。


 因みに誠はまだショックを受けているようで、俺の机に覆いかぶさったまま動かなかった。

 冗談だから、連れていくから。



 ××××××××



「……ってな理由で、急遽合宿が開催されることになった」

「それは風音も行くんだよね?」

「まぁ、そうなるな?」

「じゃあ行く」

「はや!?」


 家に帰るなり即クイーンに合宿の事を伝えると秒で返事が返ってきた、何となくコイツは行きたがらないっぽいと思っていたので、とても意外だった。


「……風音がまたアカリを襲わないように監視する」

「襲うまで行ってないだろ!」

「これ、」


 クイーンはそう言うと、何やらスマホの画面を俺に見せてきた、それはなにかの写真のようで、その内容は寝ている美少女を男が襲っているように見える写真……


「って、いつの間に撮ったんだこれ!」

「七島風音、寝ている美少女にイタズラをした所を激写する事に成功」

「そんなスクープ記事みたいなこと言うな!」


 不倫現場を激写! 的な感じで言われると何だかドキッとしてしまう。


「とにかく、風音が襲う襲わないに関わらず、私がいない所でアカリに接触するのは危険だから」

「……やっぱりアカリは暗殺者なのか?」


 やはり、俺はまだアカリが暗殺者なのだと信じきれずにいる、現に今日のアカリだってテンションは少し高めだがいつもとあまり変わらないし、あんな女の子が人を殺せるなんて思えないのだ。


 まぁ、暗殺者ってのは見た目とかで判断出来るものでは無いと、目の前のコイツが証明しているのだが。


「多分暗殺者なのは間違いない、けど、

 ……もしかしたら暗殺童貞かも?」

「暗殺者なのに暗殺童貞なのか?」


 それは暗殺者と名乗ってはいけない気がするのだが……。


 と言うか、クイーンの口から童貞、と言う言葉が出るとは普通に驚いた。まぁ今回のセリフにそんな邪な意味は含まれていないことは百も承知なのだが。


 恐らく邪なのは俺の脳みそなのでしょう、寝ている美少女を襲ってしまう程だし。


「まぁいいけどさ、……因みにメンバーはお前も入れて六人だ」

「六人?」


 何故そこで疑問符を浮かべる。


「私、風音、アカリ、光、真奈、……後は」

「お前本気で言ってんのか……」


 しかしクイーンの表情は冗談で言っている様子は見られない、これは普通に覚えていないのだ、哀れ誠、


「あ、笠松だ」

「誰だそれ!」


 惜しいけど違う!!


「んー、……いっか、それより」


 いやいいのかよ、全然良くないだろ、このままだと誠が可哀想過ぎるだろ。

 俺は明日誠にジュースを奢ってやると決めた。


「……合宿中は背後に気を付けるように」

「え、何その忠告、すっごい怖い」


 後から刺されるとかそう言うフラグ? だとしたら俺は当日は全力で引きこもらせて貰うよ?


「女の勘ってやつ」

「ぷっ、」


 吹き出した途端にどこからともなく取り出したスリッパで頭を思い切り殴られた。




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