暗殺者のいる日常
第6話 七島風音と愉快な仲間たち1
最近色んなことがあって忘れかけていたが、七島風音こと俺は、リアルをリアルタイムで充実しているリア充、即ちリア王だ。
何言ってんのお前? とか言わないで欲しい。
まぁ、何はともあれ、久々に今日という日は暗殺者と言う言葉すら忘れて友達と遊びまくろう。
……まぁ、目の前の厄介事を片付けてからだけど
「……その前に、」
友達が待っている教室へと向かう前に、現在俺の後ろでのほほんと突っ立っている女に事情を聞こうでは無いか。
さぁ、息を吸って、
「……なんでいる!?」
学校内の人気のない廊下で、俺は最近ではすっかり見慣れた銀髪の少女こと、クイーンに盛大なツッコミを入れる。
そんな俺のツッコミなどものともせずにクイーンは淡々と、
「私もここの生徒なので」
「嘘をつくならもっとマシな嘘をつけい!」
証拠に、クイーンの着ている服はどこからどう見ても私服だし、まず普通の高校生が銀髪何てありえない。
「まぁ、正確に言うとここの高校の通信制に在籍してる」
「バカな!?」
いや、確かに俺の通う高校、紅葉ヶ丘高校には通信課程と言うものが存在する、しかし対した戸籍などを持たないコイツが真っ当な高校に入れるはずが……
「ホントに組織って有能ね」
あ、そ。
俺を育ててくれた組織、有能すぎて怖い。
「ま、まぁ、お前がここの生徒なのは認めようじゃないか、しかしだな。何故俺に付きまとう?」
「……何となく?」
「なんだその『理由を考えようとしたけど途中でめんどくさくなってとりあえず何となくと言っておけばなんとかなるでしょ』みたいな顔は!」
「凄い、私の考えていることが分かるの?」
はぁ、
「と、に、か、く! お前はさっさと帰れ! 俺はこれから友達と遊びに行くの!」
そう、今日は放課後クラスの友達皆と遊びに行く約束をしている、因みに人数は五人、女子三人に俺を入れて男二人だ。
まさに恋愛映画の中のような五人組である。
「私も行っちゃダメなの?」
「……付いてくる意味が無い」
「風音のボディーガード」
「自分の身は自分で守れます!」
それに、今では普通の日常を暮らしている俺に、そんな非日常見たいなことが起こるわけが無いのだ。
あったとしてもそれは恐らく組織の手回しだろう。
「あ! 風音君! みーっけ!」
そんな明るい声と共に颯爽と廊下の曲がり角から現れたのは、俺のクラスメイトの五月雨アカリ、長い金髪と青色の瞳、そして整った顔つきにバランスのいいスタイル。
正しく俺の高校生活と言う物語のヒロインに相応しい女の子である、
いや別にヒロインと決まった訳では無いんだけど。
「ごめんごめんアカリ、ちょっと知り合いに捕まってさ!」
俺は手を合わせてアカリに愛想良くそう言う、このスキルもつい最近習得したものだ。リア充になる為には努力を惜しまないのがこの俺、七島風音である。
「あれ? 隣の可愛い女の子は風音の彼女さん?」
「ばっか、違うっての! コイツは幼馴染の……」
その後の言葉が出てこなかった、それもそのはずで、クイーンには名乗るべき名前が無いのだ。
しかし、
「八島美月、よろしく」
「……そ、そうそう! コイツこの学校の通信に通っててさ、たまに見かけたらよろしくな!」
危ない、何とか乗り切れたか。
と言うかよくよく考えてみれば通信に通えるなら名前もあるのが普通なのだ、しかしコイツは俺にそんな事一度も……
「うん、よろしくね! 美月ちゃん! あ、そうだ! これからみんなで遊びに行くんだけど美月ちゃんもくる?」
「うん、行こうかな? 風音も行くんだよね?」
「……ん? あぁ、ってお前!!」
何しれっとついて行く流れ作ってくれちゃってんの!
「あれ、風音君は美月ちゃんと一緒じゃいや?」
アカリが上目遣いで俺を見つめる、何て可愛いんだ、隣のコイツにもアカリの様な愛想があれば。
「あー、うん、大丈夫だよ! んじゃ皆と合流しようか。……行くぞ美月」
何故かわからんが、今日の放課後リア充イベントに暗殺者が交じることになった。
まぁ、別にそんな悪い事なんて起きるわけが無いし、いいか。
********
とか思っていた時が俺にもありました、
何て下手な展開は起こらずに、現在俺とクイーン、もとい八島美月を合わせた六人のリア充グループは和気藹々とボーリングに勤しんでいた。
半分に分かれて隣り合ったレーンでボーリング、うん。正しくリア充そのものだろう。
「……おい風音、あの銀髪の可愛子ちゃんはナニモンだよ!」
そんな風に問いかけてくるのは俺の所属するグループの二人目の男、傘月誠だ、コイツは言うなれば盛り上げ役、グループのムードメーカーだ。
コイツ一人がいるいないではグループの元気度がだいぶ変わる。
そして俺の数少ない親友だ、
しかして、今現在俺はそんな親友を嫌いになりそうだった。
「……俺に黙ってあんな可愛い彼女作るなんて、見損なったぞ風音!」
「いやだからあいつはそんなんじゃ無いって、ただの幼馴染みたいなもんだよ」
因みに俺のレーンのメンバーは誠と、美月、そして俺の三人だ。今は美月が投げる番の筈だが、美月は未だ投げるボール選びで苦戦していた。
「ハァ、俺も風音みたいな美形に生まれたっかたぜ」
「何がだよ、お前だって顔はいいだろ? 顔は」
「それ以外は!?」
言わずもがな、それは自分で考えなさい。
何はともあれ、こうなる展開が予想出来たからこそクイーンを連れて来たくなかったのだ、本人の前では絶対に言わないがクイーンは普通に美人さんなのだから。
そんな美人さんが気にならない奴は、余程人生に疲れた奴か、暗殺者に今現在命を狙われている奴か、それかホモだけだ。
隣では誠がとほほと肩を落としている、俺の言葉がそんなに聞いたのだろうか?
「風音、投げ方教えて?」
ようやく決まったのかクイーンは六と刻まれたボールを両手で抱えながら俺に教えをこう、その純粋な表情は俺を、弟子を指導する師匠の気分にさせた。
いやそんな経験無いんだけどね?
「というか俺ボーリングそんな得意なわけじゃ無いから、俺に教わるよりだったら誠の方が良いぞ?」
俺は項垂れる誠を慰めるために、美少女にボーリングをレクチャーする、というシチュエーションを誠にプレゼントした。
すると誠は元気を取り戻し、俺に『ありがとう友よ!』みたいな表情をした。
全く大げさな奴である。
「……誠って、だれ?」
しかし、誠に残念ながら美月は誠の事を覚えていなかった、誠だけに。
因みにこの後結局俺がレクチャーし、美月は暗殺業で鍛えた身体能力で見事初球からストライクをかました、その後も美月は高得点ばかりだし、俺たちのレーンでは美月が一位だった。
因みに俺は最下位。
……泣きたい。
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