流浪の民

 国を追われた民の一団がたどり着いた先、それは糞の海であった。


 賢者

「この海を越えれば新しい世界だ! 海を渡れるように我らが神に祈ろうぞ!」

 賢者が神に祈ると奇跡が起き、海は割れ、新大陸までの道筋ができた。

 

 だがその海底は糞が積もってヘドロとなっており、そればっかりは神の奇跡でもどうしようもなかった。


 愚者

「糞に足を取られて動けなくなるぐらいなら、俺は糞の海を泳いで渡るぜ!」

 愚者が糞の海に飛び込むと、賢者の制止も聞かず他の民も泳いで渡った。


 海を渡った流浪の民は

『これぐらいの苦労、あの糞の海を渡った時に比べれば!』

 と発奮し、新しい国を造り、その国は大いに栄えた。


 一方賢者は、糞に足を取られたくないのと、いつ、神の奇跡が切れるのかを心配し、糞の海の前で死ぬまで躊躇ちゅうちょしていた。



 

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